ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー

2019年02月02日 | ネタバレなし批評篇

ジョージ・ルーカス自身の父親との確執がシナリオ(EP1~6)の裏側に練り込まれているというのは有名なおはなし。そのルーカスが手放しJ.J.エイブラムスが後を引き継いだ新シリーズでは、ジェダイの血統とはあきらかに異なる、ごくごく一般家庭に生まれた女戦士の物語が新たに展開されている。その意味で、スピンオフものとして製作された本作は、新旧シリーズの橋渡し役として実にふさわしい内容の1本に仕上がっている。

帝国に追われとある惑星に隠れ住んでいたデス・スター設計者ゲイレン・アーソ(マッツ・ミケルセン)には一人娘ジン(フェリシティ・ジョーンズ)がいた。帝国軍に父を連れ去られた後、過激なレジスタンス、ソウ・ゲレラ(フォレスト・ウィテカー)に拾われるが、迫る帝国軍の魔の手の前にまたしても離れ離れに。ソウの元に届いた父親からのホログラム・メッセージを見せられたジンは大量破壊兵器デス・スターの弱点を知り、その設計図を奪取すべく帝国軍資料保管庫があるスカリフへ潜入するのだが…

そんなジンと行動を供にするのは、(主要軍隊がことごとく離脱表明するなか)反乱軍のためにさんざん手を汚してきたローグ・ワンことならず者たちである。キャシアン役のディエゴ・ルナをはじめ、元ジェダイを演じたアジア系の2人もまた、今までずっと脇役に徹してきた名もなき俳優さんたち。ジンの想いに応えるため、はたまた今までの悪行の御祓をはたすため、死に場所を求めて帝国軍の圧倒的な猛攻の前にはなばなしく散っていく姿は、『七人の侍』のスーサイド・スクワッドを彷彿とさせる。

「街が帝国の旗に埋め尽くされたらどうする」「そんなの見なきゃいい、私には関係ないわ」と言い切っていたジンだったが、幼少期に離ればなれになった父との再会をはたしたと思ったら、帝国軍のせいでまたもや離別。今生の別れ際父の遺言をゆっくりと聞く間もなく戦地に赴いたジンにとって、“希望”とはつまり父ゲイレンの遺志を引き継ぐことだったのではないか。デス・スターが放ったビームにより発生した大津波。もはや逃れる術のないジンがキャシアンの体に必死にしがみつく怯えきった表情が、今まで誰にも見せたことのない父親にしがみつく少女のそれに見えたのは、私の単なる勘違いだろうか。

全滅したローグ・ワンにとっての“希望”とは、本当にデス・スターの設計図をレイアに渡すことだったのだろうか。ある者は最愛の父を、ある者は大義名分という名の免罪符を、ある者は古来より伝わるフォースの智恵と法を。それら守るべきものを失い、死に場所を求めてさまよっていた名もなき兵士たちが作り出した一種の共同幻想だったのではないか。「希望があるから戦えるの」このジンの台詞が、どこか残酷な余韻を伴って私たちの胸に響くのである。

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー
監督 ギャレス・エドワーズ(2016年)
[オススメ度 ]
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