走ったり、階段を昇ったりすると、息がハーハーし、同時に心臓の鼓動も速くなります。
このような経験は誰にでもあると思います。
運動した時は、静かにしている時よりも、からだは多くの酸素を必要とします。
そこで、心臓というポンプを速く動かして大量の血液を肺に送り込み、肺は吸ったりはいたりを数多く繰り返して酸素を多く取り込もうとします。
この一連の反応は、私たちが脳で考えなくても、無意識に自律神経が働いてやってくれます。
これが、運動したときにおこるドキドキ・ハーハーの仕組みです。
ドキドキ・ハーハーする運動の程度には、人によって差があります。
普段、田舎で車移動に慣れている私は、たまに都会に行くと、駅の長い階段で息切れがしてしまいますが、都内在住の友人は慣れたもので、涼しい顔して昇っています。
今朝、外来採血室の前でご案内係をしていた際、ある患者さんに目が留まりました。
病院というところは体調が万全ではない人のほうが多いわけですが、その患者さんの様子が少し気になったので、声をかけました。
「ずいぶん息切れしていらっしゃるようですが、いつもどおりですか?」
「いつもはそうじゃないんだけど・・・風邪ひいたせいかしら」
肩で息をしており、いかにも苦しそうで、顔色もあまりよくありません。
パルスオキシメーターを装着させていただくと、78%でした。
通院している科は呼吸器系ではなく、喘息持ちでもなく、連休前に風邪のような症状があってからということですから、すぐに対処すべき低酸素状態と判断し、主治医に連絡しました。
運動不足ではなく、肺や心臓の病気、それから貧血などが原因でハーハー・ドキドキする場合があります。
病的な息切れかどうかの判断は、案外難しいものです。
年のせいだとか、疲れのせい・・・と片づけて放置していると、大変なことになる場合があります。
病的かどうか見分ける重要なチェックポイントを一つあげるとすれば、「経過」でしょうか。
「いつもと違う」という感覚や経過は、鋭敏かつ重要なチェックポイントです。
私が今日初めてお会いし、病歴も何も知らない患者さんに、「いつもどおりですか?」とまず尋ねたのは、そういう理由からです。
コロナ感染で自宅やホテル療養中の方にも、このポイントをしっかりとおさえていただきたいと思います。
トイレ歩行などの際に、「これまでと違って」息切れや動悸がすると感じたら、安静時の酸素飽和度がたとえ低くなくても、要注意です。
ウィルス性肺炎の場合、「労作時の酸素飽和度低下」が初期に現れる特徴だからです。
この場合、静かにしていると、すぐに酸素飽和度はもとに戻ったりします。
安静時の酸素飽和度が低下している時は、すでに肺炎が拡がった状態を疑うべきです。
パルスオキシメーターの測定は、安静時と労作時の両方を測定し、その経過がわかるように記録して、医療管理者に報告することをお勧めします。
からだの仕組みを知ることは、私たちの命を助けることにつながります。