佐々木さんが提唱する「仕事術」の中から印象に残るものをいくつかを紹介しましょう。
■残された時間の7割は使えない
会社であればスケジュールは“OutLook”で管理していて、例えば1ヶ月分の予定を一覧できます。佐々木さんは「一ヶ月分の予定を毎日見ることによって、残された時間や必要なアクションを体感することで仕事の段取りができる」と言います。さらに「2ヶ月分見ることが経験上望ましい」とも主張、そして仕事の期限までの時間の7割は突然の来客、上司からの呼び出し、部下からの相談、社内外からの電話によって「飛んでしまう」ものだと言うのです。自分の時間の確保に抜群の効果をもたらすのがテレワーク(在宅勤務)、飛んでしまう7割のロスがない、というのが佐々木さんお勧めの理由です。
■「口頭」より「文章」の方が早い
「文章で伝えるより、口頭で伝えた方が早い」というのは勘違い、仕事上のコミュニケーションでは誤解や思いこみがないよう、文章で確実に伝えることが早道だ、という主張です。文章のメリットの第一は、文章を書くことによって問題の整理整頓、問題の掘り下げができること。第二のメリットは「言った言わない」がないこと。第三のメリット同じ情報を共有すべきメンバーにも同じレベルの情報が伝わること、上司に承認を得て同僚と部下に指示するような場合にも有効です。この「文章」は「メール」と解釈しても良いと思います。
■2割の仕事をすることで8割の仕事を達成する
仕事にも「パレートの法則(2割の裕福な人が国の富の8割を保有する など)」があり、重要な仕事2割をこなすことで、その人が抱える仕事の8割は達成できることが会社では多い、自分でやる仕事と人に任せる仕事、後でやる仕事、捨ててしまう仕事に分類することが重要、というアドバイスです。多少危険な話ですが、不要な会議には出ない、会わなくていい人には会わない、読まなくてもいい書類は読まない、という判断ができるかどうかで会社での時間増大が図れるというもの。社内のメールでもやたらに“CC”が入っている連絡だとか、一言も発言しなくても済んでしまう会議など、佐々木さんの言う「不要」な範疇なのかどうかを見極める必要があるのかも知れません。
■上位者の視点に立つ
これはよく言われることですが、会社である案件の課題が浮上したときに、自分の立場で考えられる解決策だけではなくて、一つ高い視点で考えるとどうなるか、自分が上司ならどう思うか常に頭に入れる、という考え方です。佐々木さんはこれを「2段上の上司とうまくつきあい、その視点で考える」というアドバイスにしています。さらに30代までは研修も役立つが、40代以降はこのアドバイスの実行が最大の自己研鑽だった、とご自分の経験を語っています。
■記録は記憶
「人に話すことで自分の頭に入れる」という先輩がいましたが、佐々木さんは「記録することで記憶に残る」といいます。確かに「人に話すことで頭に入る」かも知れませんが、聞かされる方は良い迷惑。書くのは一人でもできて、メモは後々役に立つ、ということをご自身の出張や家族の入院などでの経験を著書では披露しています。
■わらしべ長者理論
サラリーマンには転勤や異動など、逆らいきれない運命がある。それならば、目の前にある仕事を頑張ること、人より少しだけ良い仕事をするささやかなイノベーションを実践することで道は開ける、というもの。これは勝間和代さんから聞いた話、とのことで佐々木さんもサラリーマンとしての経験より共感した話と紹介しています。
■サラリーマンは健康が一番、早寝早起き朝ご飯
ある時無理をして、仕事をこなしたとしても人生必ずツケはくる、家族を持てばなおのこと、自分が体をこわせば家族が迷惑する、ということ。毎日の生活で規則正しく食事をして睡眠が取れるよう、積極的に計画を立て、強い意志で実行することが重要だということです。また、長時間労働することを努力したと勘違いしないことだ、会社への貢献を長期視点で見ると、健康を維持して長く勤められることが正しい道であり、効率的な働き方だ、というアドバイスです。日本企業の弱点は、管理職が部下の努力と成果を正しく評価できないため、長時間の残業を努力と成果として評価してしまっていること、という指摘です。部下への評価を正しくできる上司の存在が、無駄な長時間労働をなくす、という主張なのです。
他にも、独断と偏見のアドバイス、ということで
◆礼儀正しさに勝る攻撃力はない
◆出勤時走る者は仕事ができない
◆批判精神なき「多読家」に仕事ができる人は少ない
◆出世は「人間性」「能力」「努力」のバロメータ
◆友人は大事、しかし友情には手入れが必要
などなど、示唆に富んだアドバイスが満載です。
部下を定時に帰す仕事術 ~「最短距離」で「成果」を出すリーダーの知恵~
ビッグツリー 私は仕事も家族も決してあきらめない
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