許されない労働基準法の解体
過労死を生む異常な長時間労働が広がり、労働時間の短縮が切望されるなか、それに真っ向から反する方向が打ち出されました。厚労省の有識者研究会「労働基準関係法制研究会」(労基研)が11月、労働基準法(労基法)改定に向けて公表した「議論のたたき台」です。
労基法は労働時間など労働条件の最低限を定め、罰則付きで使用者に守らせる法律(強行法規)です。
「たたき台」は、労働基準法制を「経済社会の構造変化」「多様化する働き方」に応じて見直すよう求め、「良質な労使コミュニケーション」によって、企業などの実情に合わせて最低基準の適用除外ができるよう求めました。
■「労使合意」の名で
労基法は労働時間について、1日8時間週40時間を超えてはならないと定めています。しかし、労使が協定(36協定)を結べば超えてもよいとされ、形骸化されてきました。さらに、財界の求めで裁量労働制、高度プロフェッショナル制度(残業代ゼロ制度)などが導入され、長時間労働が野放しにされてきました。
「たたき台」は、最低基準をこれらの制度で例外的に適用除外するという現行制度からさらにすすんで、労使が合意したとされれば最低基準の適用除外を広く認める方向を示しました。労使交渉の労働者側の担い手として、過半数代表者の役割強化も強調しています。
現在、労働者保護の最低基準を外す労使協定を結べるのは、労働者の過半数で組織する労働組合か、労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)です。
■弱い立場の代表者
しかし、過半数代表者は労働組合とは違い労働三権(団結権・団体交渉権・団体行動権)、とりわけストライキ権をもたず、使用者側と対等に交渉することが圧倒的に困難です。事業所全体の43%が労組ではなく過半数代表者です。(労働政策研究・研修機構、2018年調査)
労組に比べ弱い立場の過半数代表者と「合意した」として、労働時間の規制外しが広く強行される恐れがあります。
複数事業場での労使合意の一括手続きなど、現場労働者の実情を無視した、使用者に有利な労使合意の仕組みも提起されています。
これまでの適用除外制度には労組などの抵抗でさまざまな歯止めが設けられてきました。これを一挙に取り払い、当事者の意思にかかわらず強制的に最低基準を守らせる労基法をさらに形骸化し、解体する危険な方向です。
働き方・キャリア形成の多様化の下、「労働時間を柔軟にしてほしい」という希望に対処するとされますが、労働者が求めるのは、労働時間の短縮による多様な働き方、自由に使える時間の拡大です。
労基研による危険な動きは、まだほとんど知られていません。労基法を解体し、憲法の勤労条件法定主義を形骸化するねらいを広く知らせ、この動きをストップさせましょう。
日本共産党は、労働時間の厳格な規制とともに、1日7時間週35時間労働制をめざす政策を提案しています。長時間労働是正と自由な時間の拡大をめざし職場での働かせ方と政治を変える闘いをすすめましょう。
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