冷たい風が肌を刺す冬の日の午後、路地に足を踏み入れた瞬間から、それは始まりました。
「ビールケースを逆さにして、鉢の台にしてますね」「ブロックが壊れたところに、どんどん葉を広げて勢力拡大ですね」「シャコバサボテンの支柱が菜箸ですよ!」…。路上園芸観察家の村田あやこさん。数歩前に進むたびに、道ばたの植栽に歓声をあげました。
アスファルトの割れ目に沿って生えた「緑の導火線」。カーブミラーとツタが一体化した「ミラーマン」。植木鉢や花壇から逃げ出して広がる「緑の雲海」。“脳内一人大喜利”から生まれた秀逸なキャッチコピーからは、植物の卓越した生命力も感じさせられます。
ボロボロのプランターにふと目を止めたのが、観察のきっかけでした。コーヒーカップや鍋を鉢代わりにしていたり、水やり用に焼酎ボトルが置かれていたり。「街中の草花だからこそ、その家や店の暮らしが見えてくる」と。共生の道を探ろうとする優しさも伝わってきます。
「寒いですねえ」とその日の天気が立ち話の入り口になるように、人と人とをつなげるツールにもなると言います。“人見知り”という村田さんが、持ち主に自然に声をかけることができるのも、路上園芸がそこにあるから。無機質に見えた都会の街が、血の通った生き生きとした風景に変わっていきました。
敷地内に囲い込まないで、路上にはみ出させることで道行く人も楽しめるように。路上園芸は、小さな幸せのおすそ分けなのかもしれません。
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