「暮らせる年金」を一日も早く
2025年度も、年金給付が大きく目減りしようとしています。
厚生労働省が24日に正式発表した25年度の公的年金の改定率はプラス1・9%です。しかし、同日発表された昨年1年間の消費者物価上昇率は、生鮮食料品を含めた総合指数で前年比2・7%、物価の伸びを差し引いた実質では年金は0・8%のマイナスです。
もともと年金額は、前年の物価の伸びに合わせて改定するのがルールで、それに従えば2・7%の改定率とすべきところです。しかし厚労省は、過去の賃金の平均の伸び率が2・3%と物価上昇を下回ったため、年金も賃金の伸び率に合わせて2・3%としたうえで、さらに「マクロ経済スライド」により0・4%を差し引いたため1・9%の改定率となりました。
マクロ経済スライドは、将来の年金財政の安定を口実に年金改定率を抑える仕組みです。
24年度も、3・2%の物価上昇に対し年金改定率は2・7%で、実質ではマイナス0・5%の目減り改定でした。来年度はさらにマイナスが大きくなります。
■低年金ほど目減り
物価高騰の中での相次ぐ年金目減りは高齢者の生活を脅かしています。重大なのは、年金の実質マイナス改定が低年金者ほど長く続くことです。公的年金の「財政検証」(昨年7月)によれば、厚生年金の2階部分である報酬比例年金のマクロ経済スライドによる調整は今後2年以内に終了します。一方、基礎年金(国民年金)では最悪の場合、33年続く見通しです。
基礎年金だけしか受給していない低所得者の場合、最大で実質3割も目減りする計算になります。現在月額6・8万円の基礎年金が、実質4・8万円程度まで減ることになり、とても生活できません。
低年金者ほど年金額が目減りする点について、マクロ経済スライドを進めてきた厚労省自身「問題がある」と認めざるを得ず、巨額な積み立てのある厚生年金の財源を一部活用することで、基礎年金の目減りを早期に終了することを年金審議会に提案しました。
■財界と自民が抵抗
厚労省は当初、この案を通常国会に提出する年金法案に盛り込む予定でした。
ところが厚労省案に対し、財界は「企業が払った保険料を国民年金加入者に使うのは問題だ」、自民党議員らは「現行より国庫負担が増える」と抵抗を示しました。このため、厚労省の提案は5年後の「財政検証」まで先送りされる可能性が強いと報じられています。
国民年金の加入者には非正規労働者など、本来、厚生年金に加入すべき人が含まれています。これらの人への責任を逃れてきた企業が一定の負担をするのは当然です。国庫負担もすぐに増えるわけではなく徐々に増えていくもので、税財政を全体として見直せば財源確保は十分に可能です。
厚労省案には、報酬比例部分の目減りが今より大きくなるという問題があります。高所得者の保険料上限引き上げなどにより改善すべきです。
基礎年金の目減りをこれ以上放置することは許されません。「一日も早く、暮らせる年金を」という声にこたえるべきです。
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