真価が問われる“平和の祭典”
戦争が暗い影を落とす中、どんなメッセージを世界に発信できるのか―。“平和の祭典”のあり方が深く問われる五輪となります。
ロシアによるウクライナ侵略、イスラエルによるガザ攻撃が長期化するもとで26日(日本時間27日未明)、100年ぶり3度目のパリ五輪が約200カ国・地域、1万人を超える選手を集めて開幕します。
■「中立個人」の是非
開催にあたり懸案だったのは、ロシアとそれを支援するベラルーシの選手への対応でした。
国際オリンピック委員会(IOC)は、選手の参加を認めました。当初は各種の大会から除外していたものの、転換した形です。国の代表ではなく「中立の個人資格の選手」とし、戦争を支持しない、軍に関与していないことを条件としています。審査を経て、両国の32選手が登録しました。
これは国籍で人を差別しないという五輪憲章の原則に沿ってはいます。しかし、戦争をする国の選手の参加には、いまだ異論が渦巻いています。ドイツのフェンシングの代表選手は、除外継続を求める約300人の選手の署名をIOCに提出し、世界陸連のように大会からの除外を堅持している競技団体もあります。
IOCの対応で最も大きな問題は、同じ戦争をするイスラエルには一切、制約がないことです。二重基準との批判が上がるのは当然で、IOCの考える平和の基準が厳しく問われています。
パリは近代オリンピックの創始者、ピエール・ド・クーベルタン生誕の地です。「スポーツを通して心身を向上させ、文化・国籍などさまざまな差異を超え、友情、連帯感、フェアプレーの精神をもって理解し合うことで、平和でよりよい世界の実現に貢献する」。クーベルタンが提唱した五輪精神を担う主役は、選手にほかなりません。
大会にはウクライナから約140人が参加し、パレスチナは8選手が出場する予定です。選手村で平和の実現を願う「五輪休戦の壁」が設置された22日、ウクライナの体操選手は、「家や子ども、父や母を失った人も多く、とても厳しい状況。誰もが平和を望んでいる」と静かに訴えました。戦火にさらされ、身近な人を失った選手の声は、戦争を告発し、平和を願う貴重なメッセージとなります。
同時に、200を超える国・地域の人々が一堂に会することは、それ自体が平和を体現しています。国境を超えて人々をつなぎ、競技を通じ互いの理解を広げる―。そこで育まれる友情や心の交流が、世界に希望を届けることになるはずです。
■多岐にわたる課題
五輪が抱える課題は依然、多岐にわたります。パリは95%の既存施設や仮設を利用する一方、競技数はほぼ変わらず運営経費も東京大会並みに膨らんでいます。テレビマネーにより真夏の開催が維持されるなど商業主義の克服も道半ばです。テロの危険により警備経費も膨らむなど世界の紛争がこの点でも影を落としています。
IOCの改革や五輪の理念と現実との乖離(かいり)を埋める努力が引き続き重要です。ここでも五輪の真価が鋭く問われる大会となります。
戦争が暗い影を落とす中、どんなメッセージを世界に発信できるのか―。“平和の祭典”のあり方が深く問われる五輪となります。
ロシアによるウクライナ侵略、イスラエルによるガザ攻撃が長期化するもとで26日(日本時間27日未明)、100年ぶり3度目のパリ五輪が約200カ国・地域、1万人を超える選手を集めて開幕します。
■「中立個人」の是非
開催にあたり懸案だったのは、ロシアとそれを支援するベラルーシの選手への対応でした。
国際オリンピック委員会(IOC)は、選手の参加を認めました。当初は各種の大会から除外していたものの、転換した形です。国の代表ではなく「中立の個人資格の選手」とし、戦争を支持しない、軍に関与していないことを条件としています。審査を経て、両国の32選手が登録しました。
これは国籍で人を差別しないという五輪憲章の原則に沿ってはいます。しかし、戦争をする国の選手の参加には、いまだ異論が渦巻いています。ドイツのフェンシングの代表選手は、除外継続を求める約300人の選手の署名をIOCに提出し、世界陸連のように大会からの除外を堅持している競技団体もあります。
IOCの対応で最も大きな問題は、同じ戦争をするイスラエルには一切、制約がないことです。二重基準との批判が上がるのは当然で、IOCの考える平和の基準が厳しく問われています。
パリは近代オリンピックの創始者、ピエール・ド・クーベルタン生誕の地です。「スポーツを通して心身を向上させ、文化・国籍などさまざまな差異を超え、友情、連帯感、フェアプレーの精神をもって理解し合うことで、平和でよりよい世界の実現に貢献する」。クーベルタンが提唱した五輪精神を担う主役は、選手にほかなりません。
大会にはウクライナから約140人が参加し、パレスチナは8選手が出場する予定です。選手村で平和の実現を願う「五輪休戦の壁」が設置された22日、ウクライナの体操選手は、「家や子ども、父や母を失った人も多く、とても厳しい状況。誰もが平和を望んでいる」と静かに訴えました。戦火にさらされ、身近な人を失った選手の声は、戦争を告発し、平和を願う貴重なメッセージとなります。
同時に、200を超える国・地域の人々が一堂に会することは、それ自体が平和を体現しています。国境を超えて人々をつなぎ、競技を通じ互いの理解を広げる―。そこで育まれる友情や心の交流が、世界に希望を届けることになるはずです。
■多岐にわたる課題
五輪が抱える課題は依然、多岐にわたります。パリは95%の既存施設や仮設を利用する一方、競技数はほぼ変わらず運営経費も東京大会並みに膨らんでいます。テレビマネーにより真夏の開催が維持されるなど商業主義の克服も道半ばです。テロの危険により警備経費も膨らむなど世界の紛争がこの点でも影を落としています。
IOCの改革や五輪の理念と現実との乖離(かいり)を埋める努力が引き続き重要です。ここでも五輪の真価が鋭く問われる大会となります。
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