『ノルウェイの森』
"Norwegian Wood"
監督、脚本:トラン・アン・ユン
2010年・日
あなたが迷い込んだのは、そう、エロウェイの森。
中学生が初デートとかで観にいって、アタフタしやがれ!
まあさぁ、87年に小説読んだ時、ヒロインの直子は・・・
直子は、もうちょっと薄口の顔を想像してましたけど。(菊地凛子)
直子の繊細さの表現形態が、まさかのウィスパー・ボイスとはッ。
カヒミ・カリィですか。
でも、すごく丁寧に、真剣に撮ってる。
こないだ、同じく村上作品の映画化である 『トニー滝谷』 の事を書いたけど、皆、真剣に仕事してるなぁ。
村上作品に挑む監督たちは。
もう一人のヒロイン、小林緑は、
あっちの世界に踏み込んだ主人公・ワタナベ(松山ケンイチ)を、すんでのところで現世へ呼び戻す、重要な役どころ。
そんな、大事な役に、トラン・アン・ユン監督は、演技初挑戦の元『セブンティーン』モデル、ダニエル紀子を抜擢!
あの口の端が上がってる常時笑いは、俺の中の小林緑像 (←そんなものを何年も抱えていたのか) に合致しとります、監督。
ん? しかし、こういう顔、どっかで・・・
あ、ユン監督デビュー作 『青いパパイヤの香り』(1993) のトラン・ヌー・イエン・ケーちゃん!
(その後、監督と結婚)
さっき、真剣だって褒めたけど・・・
あんた、完全に己の趣味で選んだだろ、緑役!
緑ちゃんは、大学の学食でワタナベに話しかる登場シーンでは、聞くに堪えない棒読みで、観客の聴覚を鷲掴み。
しかし、その後は、本人が上達したのか、聴いてるこっちが慣れたのか、さして気にならなくなる。
第三の女性、レイコさんについては、小さい頃に原作を読んだ時から、そのキャラクターが、もう苦手で苦手で。
だから、今回誰がレイコさん役でも構わなかったんだけど、綺麗な方で。
そのせいか、最後にレイコさんがワタナベと過ごす一夜が、ちょっと腑に落ちた。
あれ、真面目な思春期ボーイだった俺としては、原作読んだとき、ほんまに理解に苦しんだ箇所で。
え、何これ? なんでこのオバちゃんとナベワタが?(ワタナベでしょ)
うわ~、アグレッシブ・・・。
気持ち悪ぅ・・・。
ってのが、トゥー・シャイ・シャイ・ボーイだった当時の俺の感想だったのさ。
しかし、レイコさんが精神を病んだ原因となった、過去のエピソードを省略したのは、脚本の妙だね。
あれを映画で描いちゃったら、話がそうとう発散したと思う。
映画館を出たとき、たぶん、皆そこだけ覚えてるという(笑)
賢明だったね、あそこを省いたのは。
映画全体については・・・
異界に踏み込んで帰ってくるってのは、村上作品の重要なテーマ。
村上さん自身が、インタビューでも再三語っているとおり。
そういう意味で、最後に、ワタナベが緑に電話するシーンは、とても上手く表現されてる。
見慣れたアパートの玄関が、正体不明な場所に思えてくるあの描写。
下手に真っ暗闇とかにせずに、その手前で止めたところは、監督のセンスを感じる。
話題作だけに賛否ありそうだけど、充分楽しんだよ、俺は。
だいぶ、長くなったね。
まぁ、つまり俺がこの映画を観て、言いたかったのは・・・
徹頭徹尾、ブレてないのは永沢先輩だけっス。
俺、ついて行くっス。