『夜間飛行』

また靴を履いて出かけるのは何故だろう
未開の地なんて、もう何処にもないのに

別れの3月

2019-03-30 | Life(日常):書いとかないと、忘れちゃう

■Sさん


金曜日の夕方。

年度末でざわつくオフィスに、Sさんが挨拶に来てくれた。


「どこに異動になったの?」

「ドイツ支店です」

「え? 今、金曜の夕方にここ(東京本社)にいて・・・」

「はい、月曜の朝7:30にはドイツ支店に初出勤です・・・(笑)」

「え~(笑) 」


働くなぁ、日本のサラリーマン・・・。

それじゃ土日はほとんど移動で、着いたら寝ないで出社だね。


Sさんは今は本社に居るけど、俺がイスタンブールに住んでいたころは、イタリア支店に居て。

遊びに行くと、現地でホテルも手配してくれるし、美味しいピッツェリアやトラットリアに沢山連れていってくれた。


10コくらい後輩だけど、仕事もできるナイスガイなので、義理の弟とかになってくれたら嬉しいと秘かに思ってたんだけど。

半年前にできた彼女と急遽結婚し、奥様もイタリアに連れてくそうで。

さすが、出来る男はいざとなったらやる。


再びヨーロッパへ。

今頃はドイツに向けて雲の上を夜間飛行しているだろう。

無事なフライトを。



■Hくん

Hくんは、去年できたばかりの同い年の友達。

仲間は沢山いるけど、本当の友達に出会えることは少ない。

お互い、呑み助ということで意気投合したけど、人間の中身は正反対。


Hくんの専門は数字(経理と財務)。

俺の専門は言葉。


Hくんはいつも控えめだけど、言うべき時には相手が誰であっても言える意思の強い男。

俺は日ごろ大言壮語して、必要な時には何もできずに手をこまねいている男。


Hくんは水泳と自転車の名手で、休日には数々の大会に挑むタフな男。

俺は年々膨らんでいく己がお腹をさすりながら「双子かしら?うふふ・・・」と嘯くだらしない男。


Hくんは歴史書を当たるとき、後年の研究書じゃなくて必ず原本にあたる男。

俺はさっき読んだWEB上の駄文でも、100年前から知ってたかのように語る男。



今の組織に入ったとき、Hくんの知識や謙虚さに完全にノックアウトされてたんだけど、

ある仕事を納期に迫られて「えいッ」と例によって適当にこなした時、Hくんが

「夜間飛行くんはスゴイ・・・!!」

と言ってくれて、今思えば新入りの俺を意図的にチア・アップしてくれてたのかもしれないけど、あれは助けられた。


Hくんは4月から名古屋に移り、40人を率いるリーダーにご昇進。

飲み仲間は沢山いるけど、さしで飲みにいくのは夜間飛行くんくらいしか居ないんだ。

そう言ってもらい、あの時、秘かに嬉しかった。


■Sくん


一緒のチームで仕事したSくんは俺が持っていない分析力を持っている男。

データを集めるのも早く、それを分析してまとめるのもスーパー早い。

毎朝、各国の情報を拾わなきゃいけないくて、ソースは英語中心で、たまにフランス語やドイツ語もまじるけど、なんなく資料を作ってくれる。


モノゴトを一瞬とて覚えていられない俺が

「あれ? えーっとあの会社って北欧のファンドに買われたの何年前やっけ?」

とか聞くと、たいていコンピュータのごとく即答してくれる。


そのかわり。

と言う訳ではないけど、Sくんはまともな社会人としての人付き合いができない。

社交辞令が言えない。

会議や宴会がつまらなければ、その場ですぐに内職を初めてしまう。


しかし、それらは全部、俺が持っている能力で補える(笑)

つまり我々は良いコンビだったんではないかな。

ついこないだも一緒にラスベガス行ったばかりだしね。


4月から法務のセクションに。

幸運を。

また飲みに行こう。


++++

異動するみなさん、お元気で。

また会う時はとびきり美味い酒を飲もうぜ。


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