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hiroです。

ヒトでなし

2019-01-12 23:51:05 | reading
[ヒトでなし : 京極夏彦 新潮社]

終盤ではあるけれど、まだ途中なのです。

読み進めるのが辛い。
ゾワゾワと胸の奥が蠢く。
徹底的な破壊の後に圧倒的なキッパリサッパリとした再構築がある他の著作を信じて読み進める。
第7話 毒 あたりから、二三行読んでは立ってみたり何かしてみたりと落ち着かない。

ヒトでなしである主人公に、引き寄せられるように出てくるヒトである人たちを、『あの人に似ている』と思いながら読み、実は私自身のヒトである醜さであると思う。
量子論的思考や禅の考えが、見えないダークエネルギーのようにヒトを包み込むような、浮いているような落ち着いているような心地で、さて、続きに向かうのであります。


ただのお話

2015-08-03 23:22:53 | reading
胸から見えない血を流し
慟哭と過呼吸で手足がねじ曲がる程の苦しみで
あったとしても
言葉にして他人に伝えた瞬間に
それはただのお話になってしまう

その絶対の孤独という深淵
覗き込んで映るのは自分の顔




というような事を考え、同意というか
同化して引きずられてあちこちが痛い感じなのです。





黒田三郎 「ただのお話」



モモ:ミヒャエル・エンデ

2014-06-19 22:52:23 | reading
モモ:ミヒャエル・エンデ作 大島かおり訳
   岩波少年文庫

小学生の時に日曜学校の先生が、この本を貸して下さいました。
読み終えて返した時に、「忙しいとは心を亡くすと書きます」と、教えて下さいました。
日曜学校を欠席しがちになっていた私は、それらしい言い訳をしたのかもしれません。


自分の物として届いた本を読み終えたのです。

星の歌を聴くこと。
豊さは便利さではないということ。
時間は人であり、人の命は心に住んでいるということ。

これらの言葉や表現は忘れていましたが、これらの感覚は私の中心に植えられていました。
ファンタジーやメルヘンの偉大さに平伏す思いです。

思いの真ん中に届く思い。
伝える仕方とその力量 。

廃墟となった円形劇場のほこりっぽさ。
硬質な近代的な建物の気取り。
まるいつっぱった帽子の質感。

目の前に広がるどころか、臨場している感じです。

やっぱりいいなぁ。ファンタジーいいなぁ。
物語が大好きです。
ちゃんと現実を生きていないと言われるけれど。
そう言う人には、私が大冒険の末に、隣の銀河との軌道を整えたことは教えてあげないのです。

しばてん:田島征三 偕成社

2014-05-04 09:27:16 | reading


ひとは恐れるものを遠ざけようとする。
自分を害さないようにという、それは自然な反応。

ただ、
その恐れの原因が自分自身にある場合は、遠ざけようにも仕方がないから、言い訳というお呪いを自分にかけてみる。
そのお呪いは、自分ではわからない所の呪いとなって、ひとの不安を増していく。

差別の発生と、差別の両側への禍を端的に物語り、力いっぱいの色と形と自由さで、ひとの心の軛を描いている絵。

一人に対して大勢のひとが行う悪いこと。
一人の囁きに同調して大勢になることに注意をしなくてはいけないのです。

自分一人でも、それを言いますか?
それをやりますか?
どうですか?私。




 しばてんのあとがき






人にあらずという大きくて広くて深い存在

2014-04-10 01:25:24 | reading
狐笛のかなた:上橋菜穂子 理論社


匂いと光の中で、感情がぐいぐいと引き伸ばされるような時間でした。


野火。
序章で彼に見つめられてから、
その金色の瞳を見つめ続けています。

木蔦の甘える艶めかしさとかわいらしさ。
木縄坊の応えかた。
焦がれる美しい景色。


自分でこの命を抱えるということ。
「為」を思わないことの晴れやかさ。
小夜をとても愛おしく思います。

そして、驚くことに、
自分をもそう思ったのです。

伊坂幸太郎を語りたいわけ?

2014-03-13 23:27:35 | reading
敬称無しは抵抗があるけれど、有名人には敬称は付けないらしいので。


伊坂さんの作品で一番好きなのは「オーデュポンの祈り」。

あ。
タイトルは敬称無しで本文はさん付けです。
この感じは、分かる気になって頂けると思うのではないかと。

で、オーデュポンの祈り。
自力で万有引力を発見した人とか案山子とか。
切ない出来事があるけれど、全体として爽快。


「重力ピエロ」
この作品は、春の格好良さが土台であり芯だと思うのです。
ハルの絵を想像してワクワクします。


「陽気なギャングが地球を回す」と「オー!ファーザー」は似ているけど、ほのぼのして楽しいです。


「・・・なわけ?」という語尾は方言なのかなぁ。

箱のはなし:明川哲也

2013-12-15 22:26:24 | reading

ファンタジーは、子どもたちをワクワクさせるためだけのものじゃない。

哲学を始め科学と想像力と、それらをまとめた上で、読者をこの世からさらうだけの物語として書き上げる力が必要だと思うのです。

盛っていくとか脚色じゃなくて、物事を削って削って本質を剥き出しにして、そこから全く別な素材で"にく"を付けて、前とは違う色を混ぜ込んでいくのかなぁ?


別物のように出来上がったものは、でも、やっぱり核は元のものだから、それが放つものは伝わって来る。
というか、受け取れるように書いてくれる浩さ。



「箱のはなし」:明川哲也


なついたから、別れることは人を悲しませ苦しめる。
でも、遠く届かないと思っていたのに実は。
何もなく、虚しいと思っていたのに実は。

この物語の壮大な美しさに気が付いた時、星が一つ生まれると思います。
ぽつんとこぼれた涙は、その星を映していると思います。


ろうそくの炎がささやく言葉 :勁草書房

それでも三月は、また:講談社

サーカス物語 ミヒャエル・エンデ

2013-11-17 00:19:50 | reading

サーカス物語 ミヒャエル・エンデ 岩波書店


黒姫童話館のHPにある、ミヒャエル・エンデのメッセージに引かれて購入しました。

キスを待つお姫様のそれではなく
フィリアとアガペーを含んだ弾力のある愛の物語。

お金では買えない大切なもの。
目の前の「利益」と思えるものより大切なこと。

二つの箱の中にある、お互いの鍵。



思い出して。
ずっと前から知っていたこと。
本当は知っていること。


ニンゲンは酷いことをしてしまうけれど、
他を思うことも出来るんだから。
笑うこと、労ること、イメージするということ。

「一緒に」という魔法の言葉を持っているんだから。