ちょっと言わせてほしい・・。
松本市、若い時から認知症予防 ポイントためると特典(10月15日(木) 信濃毎日新聞)
松本市は本年度から、若年層からの認知症予防対策に力を入れている。8月に健康福祉部内に市職員による専門部会を設け、本年度は啓発活動を進めるほか、来年度は認知症やその一因となる生活習慣病の予防に効果がある運動や食品などを認定する事業を始める。市民は認定された催しに参加したり、食品を購入したりすることでポイントをためる。市はポイントと交換できる特典を用意して予防の取り組みを促す。県内自治体による同様の取り組みについて、県長寿福祉課は「聞いたことがない」としている。
運動や食品などの認定は申請に基づいて審査会で審査する。対象は市がメタボリック症候群対策で実施する健康診断やウオーキング大会、特定の野菜や果物、加工食品、スポーツ施設などを想定。市民はこれらを受診、参加、購入、利用することでポイントを得られる。ポイントに応じて市から特典を受けられる。特典の内容は未定だが、市健康づくり課は「予防に相乗効果があり、市民のやる気を促すものにしたい」としている。
予防啓発のための講演会は健康づくり推進員や一般市民らを対象に、来年2月に予定。リーフレット5千部を作成中で、各機関に配る。
事業はすでに認知症を発症した人への対策だけでなく、30~40代から予防を意識することで将来の患者数抑制を目指す。専門部会は啓発と予防事業の2部会からなり、来年度以降も継続して活動を進める。市が掲げる「健康寿命延伸都市・松本」の実現に向けて、介護を必要とせず、心身が健康な状態で過ごせる期間を示す「健康寿命」を延ばすことにもつながると期待している。
市健康づくり課などによると、脳梗(こう)塞(そく)などが原因の脳血管性認知症を防ぐには、動脈硬化の原因となる生活習慣病の予防が大切。認知症の一つ、アルツハイマー病の予防や症状緩和には、運動や人との触れ合い、社会活動への参加が有効だとする学説もある。
厚生労働省が3月に発表した調査結果によると、65歳未満で発症する若年性認知症者は全国で推計3万7800人。何らかの認知症の症状がある高齢者は2005年が169万人、10年は208万人と推計されている。
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松本市はいいことを考えたと大得意なのかもしれないが、なんというしょうもない企画なのだろうと思う。
日々の診療で認知症とともに生きている方に接しているものとして怒りすら覚える。
しかし、どこかで聞いたことのあるような発想だ。
そう、肥満者をつかまえていじめる特定健診のメタボリックシンドロームへの指導や、高齢者に筋トレを強いる介護保険での介護予防事業が思い出される。
健康でないもの、不健康につながるものをスクリーニングし強制的な介入を行う。
これぞ、まさにヘルスファシズムであるといえよう。
認知症になりたくないとがんばる高齢者。
認知症をすすめないようにとリハビリでドリルをさせる家族。
気持ちはわからなくもないが何かがおかしい。
年をとれば誰でもそれだけ頭や体が不自由にはなる。
できればなりたくはないが、なってしまうときにはなってしまうのが病気なのだ。
80歳まで生きれば15%、85歳まで生きれば30%の人が認知症を抱えて暮らすことになる。
「認知症だと悪いんかい!」と思う。
病や死や老いを忌むべきものとして遠ざけ恐れられてきた結果、皆、アンチエイジングに精を出す。
人間ドックは病院の稼ぎ頭だし、サプリメントや健康食品が大流行りで一大産業だ。
エビデンス(有効だと言う証拠)も乏しい高い健康食品や健康器具に大枚をはたく。
今回の認知症予防のポイント制もその延長にある。
予防のための科学的知識を性格に伝えること(ヘルスプロモーション)はもちろん必要だが、それをポイントをつかって特典でつってまで奨励するのはやり過ぎだろう。
そのうち予防活動に協力をしないものは罰則だとなりかねない。
元気でいられること以上になんの特典が必要があるのだろう。
こんなことをしても病人や老人、認知症を抱える高齢者の差別を助長し、悪徳ビジネスが栄えるだけだ。
(メタボリックシンドロームを対象とした特定健診・特定保健指導では受診率、指導率などで保険者にペナルティがある。)
感染症などはともかくとして、健康ほど個人的なものはない。
健康を強制されるほどバカなことはない。
これでは健康帝国ナチスドイツや、軍国主義時代の日本に舞戻りである。
老いや病、死を恐れ、若くて健康であることこそがすばらしいと皆が思う時代。
人と人とのつながりが断ち切られ、人が大切にされない時代。
高齢者も孤独だ。
認知症とともに生きる自分が受け入れられない葛藤で、抑うつや家族への妄想がででてくることも多い。
アルツハイマー病を抱えての葛藤。イライラ。余裕のなくなった家族との修羅場。
若い人にも余裕がなくなっている。
高齢者の自傷行為や自殺、セルフネグレクトなどもまれではない。
社会に余裕がなくなり「すねうつ」のような高齢者もますます増えている。
やっぱり何かがおかしい。
老いても惚けても、病気になっても、障害があっても地域のみんなで支え、安心して生き抜ける地域づくりこそめざすべきもののはずなのに・・・。
参考エントリー
マッチョ老人のひとり介護予防
松本市、若い時から認知症予防 ポイントためると特典(10月15日(木) 信濃毎日新聞)
松本市は本年度から、若年層からの認知症予防対策に力を入れている。8月に健康福祉部内に市職員による専門部会を設け、本年度は啓発活動を進めるほか、来年度は認知症やその一因となる生活習慣病の予防に効果がある運動や食品などを認定する事業を始める。市民は認定された催しに参加したり、食品を購入したりすることでポイントをためる。市はポイントと交換できる特典を用意して予防の取り組みを促す。県内自治体による同様の取り組みについて、県長寿福祉課は「聞いたことがない」としている。
運動や食品などの認定は申請に基づいて審査会で審査する。対象は市がメタボリック症候群対策で実施する健康診断やウオーキング大会、特定の野菜や果物、加工食品、スポーツ施設などを想定。市民はこれらを受診、参加、購入、利用することでポイントを得られる。ポイントに応じて市から特典を受けられる。特典の内容は未定だが、市健康づくり課は「予防に相乗効果があり、市民のやる気を促すものにしたい」としている。
予防啓発のための講演会は健康づくり推進員や一般市民らを対象に、来年2月に予定。リーフレット5千部を作成中で、各機関に配る。
事業はすでに認知症を発症した人への対策だけでなく、30~40代から予防を意識することで将来の患者数抑制を目指す。専門部会は啓発と予防事業の2部会からなり、来年度以降も継続して活動を進める。市が掲げる「健康寿命延伸都市・松本」の実現に向けて、介護を必要とせず、心身が健康な状態で過ごせる期間を示す「健康寿命」を延ばすことにもつながると期待している。
市健康づくり課などによると、脳梗(こう)塞(そく)などが原因の脳血管性認知症を防ぐには、動脈硬化の原因となる生活習慣病の予防が大切。認知症の一つ、アルツハイマー病の予防や症状緩和には、運動や人との触れ合い、社会活動への参加が有効だとする学説もある。
厚生労働省が3月に発表した調査結果によると、65歳未満で発症する若年性認知症者は全国で推計3万7800人。何らかの認知症の症状がある高齢者は2005年が169万人、10年は208万人と推計されている。
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松本市はいいことを考えたと大得意なのかもしれないが、なんというしょうもない企画なのだろうと思う。
日々の診療で認知症とともに生きている方に接しているものとして怒りすら覚える。
しかし、どこかで聞いたことのあるような発想だ。
そう、肥満者をつかまえていじめる特定健診のメタボリックシンドロームへの指導や、高齢者に筋トレを強いる介護保険での介護予防事業が思い出される。
健康でないもの、不健康につながるものをスクリーニングし強制的な介入を行う。
これぞ、まさにヘルスファシズムであるといえよう。
認知症になりたくないとがんばる高齢者。
認知症をすすめないようにとリハビリでドリルをさせる家族。
気持ちはわからなくもないが何かがおかしい。
年をとれば誰でもそれだけ頭や体が不自由にはなる。
できればなりたくはないが、なってしまうときにはなってしまうのが病気なのだ。
80歳まで生きれば15%、85歳まで生きれば30%の人が認知症を抱えて暮らすことになる。
「認知症だと悪いんかい!」と思う。
病や死や老いを忌むべきものとして遠ざけ恐れられてきた結果、皆、アンチエイジングに精を出す。
人間ドックは病院の稼ぎ頭だし、サプリメントや健康食品が大流行りで一大産業だ。
エビデンス(有効だと言う証拠)も乏しい高い健康食品や健康器具に大枚をはたく。
今回の認知症予防のポイント制もその延長にある。
予防のための科学的知識を性格に伝えること(ヘルスプロモーション)はもちろん必要だが、それをポイントをつかって特典でつってまで奨励するのはやり過ぎだろう。
そのうち予防活動に協力をしないものは罰則だとなりかねない。
元気でいられること以上になんの特典が必要があるのだろう。
こんなことをしても病人や老人、認知症を抱える高齢者の差別を助長し、悪徳ビジネスが栄えるだけだ。
(メタボリックシンドロームを対象とした特定健診・特定保健指導では受診率、指導率などで保険者にペナルティがある。)
感染症などはともかくとして、健康ほど個人的なものはない。
健康を強制されるほどバカなことはない。
これでは健康帝国ナチスドイツや、軍国主義時代の日本に舞戻りである。
老いや病、死を恐れ、若くて健康であることこそがすばらしいと皆が思う時代。
人と人とのつながりが断ち切られ、人が大切にされない時代。
高齢者も孤独だ。
認知症とともに生きる自分が受け入れられない葛藤で、抑うつや家族への妄想がででてくることも多い。
アルツハイマー病を抱えての葛藤。イライラ。余裕のなくなった家族との修羅場。
若い人にも余裕がなくなっている。
高齢者の自傷行為や自殺、セルフネグレクトなどもまれではない。
社会に余裕がなくなり「すねうつ」のような高齢者もますます増えている。
やっぱり何かがおかしい。
老いても惚けても、病気になっても、障害があっても地域のみんなで支え、安心して生き抜ける地域づくりこそめざすべきもののはずなのに・・・。
参考エントリー
マッチョ老人のひとり介護予防