以下の緊急アピールは、人権団体、ジャーナリスト、弁護士の賛同を募ったうえ、来週早々にも発表する予定です。
人権擁護委員の国籍条項の導入などに反対する緊急アピール
1 私たちの基本的立場
私たちは、人権救済のために政府から独立した人権救済機関(国内人権機関)が速やかに設立されるべきであるという立場に立って、政府の提案する人権擁護法案について、少なくとも
1)人権救済機関を内閣府の外局とするなどして、政府からの独立性を担保すること、
2)表現の自由に対する重大な制約をもたらすメディア規制(取材・報道を特別調査の対象とすること)に関わる条項を削除すべきであること
を求めてきた。
ところが、政府は、この機関を法務省の外局としたままで、メディア規制についても削除するのではなく凍結するにとどめた法案を提案するための準備をすすめている。
2 自民党の法務部会と人権問題等調査会の合同会議における議論
しかし、驚くべきことに、3月10日の自民党の法務部会と人権問題等調査会の合同会議で、政府案に対して、城内実、古川禎久両議員らが、次のように主張して法案の了承を拒否したため、結論は3月15日に開催される次の法務部会に持ち越されたと報道されている。
1)人権擁護委員(委員会を構成する人権委員とは異なる)の選考過程が不透明で、外国人も選任されるのは問題である。
2)特定の団体の影響力が強まり、法の理想どおりに運用できないおそれがある。
3)法案の定義する人権侵害、とりわけ差別の定義が明確でない。
4)委員会に与えられた出頭要請や立ち入り調査などの権限が濫用されれば、新たな人権侵害につながるおそれがある。
このような意見に対し、与謝野自民党政調会長は、党内の懸念が払拭されるまで、法案を提出しないと表明したとしている。
3 一部自民党議員の見解について
しかし、このような意見の大半は、これまでの人権擁護法案の策定の経緯に照らして、的はずれであり、有効な人権救済機関を設けることに反対しているかのようですらある。
1)人権委員会の行う特別調査は人権委員と委員会事務局の職員のみが行う権能である(44条2項)。人権擁護委員は、従来の相談業務に加えて、一般調査に関わることは認められているが(39条2項)、特別調査の権限は認められていない。人権擁護委員の業務は、いずれも権力的な業務とは言えない。したがって、人権擁護委員の一部に外国人が選任され、相談業務などに関与することに問題はないし、むしろ話し合いをスムーズにすることに寄与するであろう。
人権擁護委員は全国で2万人以内とされるほど、多人数選任されるのであり、人権擁護委員から、外国人を閉め出そうとする自民党の一部議員の主張は国際化の流れにも沿わない、差別的で排外的なものと言わざるを得ない。
2)人権擁護委員は市町村長が推薦した候補者の中から人権委員会が委嘱することとされている。しかも、人権委員会は候補者が適当でないと認めたときには候補者リストを再提出するよう求めることができる。したがって、特定の団体に偏った委員の選任などはあり得ない。
3)法案の定義する差別の定義があいまいであるという意見も誤解である。3条2項の「不当な差別的取り扱いをすることを助長し、又は誘発する」という文言が無限定であるとする意見があるようであるが、3条2項は「不当な差別的取り扱いをすることを助長し、又は誘発する目的で」「当該不特定多数の者が当該属性を有することを容易に識別することを可能とする文書の頒布、掲示その他これらに類する方法で公然と摘示する行為」を人権侵害としているのであり、これに該当する行為は地名総鑑の出版など極めて限定された行為を対象としていることは文言上も明らかである。
客観的行為を特定した上で、それに差別目的があったことを加重要件として挿入された文言を、あたかも、行為の特定のための文言であるかのように取り上げて議論していること自体が誤りである。
4)委員会に与えられた出頭要請や立ち入り調査などの権限が濫用されてはならないことは言うまでもないが、濫用がなされないことの担保は、委員会を内閣府の外局とするなど政府からの独立性を保障することなどによってなされるべきである。
4 結論
以上のとおり、私たちは、よりよい人権救済制度の創設を求める立場から、一部自民党議員の意見に基づいて法案が修正されることに強く反対する。
私たちは、政府の原案については改善すべき点を冒頭に掲げたところであり、これらが修正されない限り、法案の再提出にも反対である。しかし、今回、自民党の前記会議で出された意見に基づいて人権救済機関の性格を更にゆがめるように法案を修正することには強く反対する。
人権擁護委員の国籍条項の導入などに反対する緊急アピール
1 私たちの基本的立場
私たちは、人権救済のために政府から独立した人権救済機関(国内人権機関)が速やかに設立されるべきであるという立場に立って、政府の提案する人権擁護法案について、少なくとも
1)人権救済機関を内閣府の外局とするなどして、政府からの独立性を担保すること、
2)表現の自由に対する重大な制約をもたらすメディア規制(取材・報道を特別調査の対象とすること)に関わる条項を削除すべきであること
を求めてきた。
ところが、政府は、この機関を法務省の外局としたままで、メディア規制についても削除するのではなく凍結するにとどめた法案を提案するための準備をすすめている。
2 自民党の法務部会と人権問題等調査会の合同会議における議論
しかし、驚くべきことに、3月10日の自民党の法務部会と人権問題等調査会の合同会議で、政府案に対して、城内実、古川禎久両議員らが、次のように主張して法案の了承を拒否したため、結論は3月15日に開催される次の法務部会に持ち越されたと報道されている。
1)人権擁護委員(委員会を構成する人権委員とは異なる)の選考過程が不透明で、外国人も選任されるのは問題である。
2)特定の団体の影響力が強まり、法の理想どおりに運用できないおそれがある。
3)法案の定義する人権侵害、とりわけ差別の定義が明確でない。
4)委員会に与えられた出頭要請や立ち入り調査などの権限が濫用されれば、新たな人権侵害につながるおそれがある。
このような意見に対し、与謝野自民党政調会長は、党内の懸念が払拭されるまで、法案を提出しないと表明したとしている。
3 一部自民党議員の見解について
しかし、このような意見の大半は、これまでの人権擁護法案の策定の経緯に照らして、的はずれであり、有効な人権救済機関を設けることに反対しているかのようですらある。
1)人権委員会の行う特別調査は人権委員と委員会事務局の職員のみが行う権能である(44条2項)。人権擁護委員は、従来の相談業務に加えて、一般調査に関わることは認められているが(39条2項)、特別調査の権限は認められていない。人権擁護委員の業務は、いずれも権力的な業務とは言えない。したがって、人権擁護委員の一部に外国人が選任され、相談業務などに関与することに問題はないし、むしろ話し合いをスムーズにすることに寄与するであろう。
人権擁護委員は全国で2万人以内とされるほど、多人数選任されるのであり、人権擁護委員から、外国人を閉め出そうとする自民党の一部議員の主張は国際化の流れにも沿わない、差別的で排外的なものと言わざるを得ない。
2)人権擁護委員は市町村長が推薦した候補者の中から人権委員会が委嘱することとされている。しかも、人権委員会は候補者が適当でないと認めたときには候補者リストを再提出するよう求めることができる。したがって、特定の団体に偏った委員の選任などはあり得ない。
3)法案の定義する差別の定義があいまいであるという意見も誤解である。3条2項の「不当な差別的取り扱いをすることを助長し、又は誘発する」という文言が無限定であるとする意見があるようであるが、3条2項は「不当な差別的取り扱いをすることを助長し、又は誘発する目的で」「当該不特定多数の者が当該属性を有することを容易に識別することを可能とする文書の頒布、掲示その他これらに類する方法で公然と摘示する行為」を人権侵害としているのであり、これに該当する行為は地名総鑑の出版など極めて限定された行為を対象としていることは文言上も明らかである。
客観的行為を特定した上で、それに差別目的があったことを加重要件として挿入された文言を、あたかも、行為の特定のための文言であるかのように取り上げて議論していること自体が誤りである。
4)委員会に与えられた出頭要請や立ち入り調査などの権限が濫用されてはならないことは言うまでもないが、濫用がなされないことの担保は、委員会を内閣府の外局とするなど政府からの独立性を保障することなどによってなされるべきである。
4 結論
以上のとおり、私たちは、よりよい人権救済制度の創設を求める立場から、一部自民党議員の意見に基づいて法案が修正されることに強く反対する。
私たちは、政府の原案については改善すべき点を冒頭に掲げたところであり、これらが修正されない限り、法案の再提出にも反対である。しかし、今回、自民党の前記会議で出された意見に基づいて人権救済機関の性格を更にゆがめるように法案を修正することには強く反対する。