テロ対策の一環として、原則16歳以上の外国人が入国する際、指紋や写真などの個人識別情報の提供を義務づける出入国管理及び難民認定法の改正案が,3月17日,審議入りする。このような制度を導入しているのは,先進諸国では米国だけで,国家が不特定多数の人の指紋などを管理して監視の対象とすることには個人情報保護の観点などから反対する声も根強い(この点は下記ジャパンタイムズ参照)。
しかし,実は,この法案の真の姿は,外国人の顔写真・指紋を採取するだけではなく,日本人の顔写真・指紋を採取し,それを警察が捜査に利用できるようにする「顔写真・指紋データ収集法」なのである。
出入国管理及び難民認定法の第61条の9は次のように規定されている。
■■
1 法務大臣は、出入国管理及び難民認定法に規定する出入国の管理及び難民の認定の職務に相当する職務を行う外国の当局(以下この条において「外国入国管理当局」という。)に対し、その職務(出入国管理及び難民認定法に規定する出入国の管理及び難民の認定の職務に相当するものに限る。次項において同じ。)の遂行に資すると認める情報を提供することができる。
2 前項の規定による情報の提供については、当該情報が当該外国入国管理当局の職務の遂行に資する目的以外の目的で使用されないよう適切な措置がとられなければならない。
3 法務大臣は、外国入国管理当局からの要請があつたときは、前項の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、第一項の規定により提供した情報を当該要請に係る外国の刑事事件の捜査又は審判(以下この項において「捜査等」という。)に使用することについて同意をすることができる。
一 当該要請に係る刑事事件の捜査等の対象とされている犯罪が政治犯罪であるとき、又は当該要請が政治犯罪について捜査等を行う目的で行われたものと認められるとき。
二 当該要請に係る刑事事件の捜査等の対象とされている犯罪に係る行為が日本国内において行われたとした場合において、その行為が日本国の法令によれば罪に当たるものでないとき。
三 日本国が行う同種の要請に応ずる旨の要請国の保証がないとき。
■■
つまり,【法務大臣は、出入国管理及び難民認定法に規定する出入国の管理及び難民の認定の職務に相当する職務を行う外国の当局(以下この条において「外国入国管理当局」という。)に対し、その職務の遂行に資すると認める情報を提供することができ,かつ,外国入国管理当局からの要請があつたときは、提供した情報を要請してきた外国の刑事事件の捜査又は審判に使用することについて同意をすることができる。】というのだ。
くだけて言えば,「日本で集めた外国人の情報は,外国の警察に売りますよ」,ってことだ。
しかも,このような捜査機関への情報の提供は【日本国が行う同種の要請に応ずる旨の要請国の保証があるとき】に限定されるのだから,くだけて言えば,「日本から外国人の情報を提供するかわりに,その外国からも日本人の情報を捜査機関で使わせてもらいまっせ」ということだ。
顔写真・指紋の採取は,強制できるものではないはずだ。悪名高い外国人登録証の指紋押捺について,法務省は、指紋記録は犯罪捜査に利用しないとしていた。そこまで厳格に適用せざる得なかった個人生体情報が外国でどんどん収集され,いざとなったら,犯罪捜査に使われてしまう。
こういうシステムなんだけど,成立させてもよいのかなぁ…。
■■ジャパンタイムズ引用開始■■
急増する外国人犯罪を抑止するため、政府は出入国する外国人に指紋押捺を義務づける制度の導入に動いている。「出入国管理及び難民認定法」の一部を改正する法案を来年の通常国会に提出、改正法を07年から施行する意向だ。この計画は外国人居住者の批判を浴び、外交紛争のもとになる可能性がある。
新制度の下で、外国人は入国時に写真を撮影され指紋を採取される。出国時にも同様の手順を繰り返す計画もあるという。ただし永住外国人は制度適用を免除される。
政府・自民党は、出国外国人の指紋採取は、外国人犯罪容疑者が偽名を使って海外逃亡するのを防ぐ効果があるという。米は同時多発テロの経験を踏まえ、昨年から入国外国人の指紋を査証申請時に採取した指紋と照合する制度を導入した。
日本の旧指紋押捺制度は外国人登録証作成のため導入された。これに対し多くの外国人、特に在日韓国人・朝鮮人は屈辱的で差別的だと反発、反対運動が起きて、同制度は1999年に廃止された。
旧制度について法務省は、指紋記録は犯罪捜査に利用しないとしていた。刑事訴訟法でも、令状なしの指紋採取の対象になるのは、犯罪容疑者として身柄を拘束された人物に限るとしている。したがって、外国人が出入国時に強制的に指紋を採取されるとなれば、外国人差別の新しい動きとして批判を浴びるだろう。
問題は、政府が外国人、外国政府に対し新制度導入の合理的根拠を示せるかだ。外国人犯罪を抑止する方法は他にもある。法務省は、外国人居住者の国籍、氏名、住所、出入国の記録、強制送還者の写真・指紋などを含む各機関所有のデータベースの一本化を検討しているという。しかし、身元確認のための情報が犯罪捜査に使われると、個人情報保護の観点から問題になる可能性がある。
自民党は、外国人対象のIC在留カード導入を検討しているというが、これらの制度のもとで外国人は、常時監視されていると感じるだろう。
政府・自民党は、新防犯制度の詳細を、実施前に十分時間をかけて説明すべきだ。
■■引用終了■■
しかし,実は,この法案の真の姿は,外国人の顔写真・指紋を採取するだけではなく,日本人の顔写真・指紋を採取し,それを警察が捜査に利用できるようにする「顔写真・指紋データ収集法」なのである。
出入国管理及び難民認定法の第61条の9は次のように規定されている。
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1 法務大臣は、出入国管理及び難民認定法に規定する出入国の管理及び難民の認定の職務に相当する職務を行う外国の当局(以下この条において「外国入国管理当局」という。)に対し、その職務(出入国管理及び難民認定法に規定する出入国の管理及び難民の認定の職務に相当するものに限る。次項において同じ。)の遂行に資すると認める情報を提供することができる。
2 前項の規定による情報の提供については、当該情報が当該外国入国管理当局の職務の遂行に資する目的以外の目的で使用されないよう適切な措置がとられなければならない。
3 法務大臣は、外国入国管理当局からの要請があつたときは、前項の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、第一項の規定により提供した情報を当該要請に係る外国の刑事事件の捜査又は審判(以下この項において「捜査等」という。)に使用することについて同意をすることができる。
一 当該要請に係る刑事事件の捜査等の対象とされている犯罪が政治犯罪であるとき、又は当該要請が政治犯罪について捜査等を行う目的で行われたものと認められるとき。
二 当該要請に係る刑事事件の捜査等の対象とされている犯罪に係る行為が日本国内において行われたとした場合において、その行為が日本国の法令によれば罪に当たるものでないとき。
三 日本国が行う同種の要請に応ずる旨の要請国の保証がないとき。
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つまり,【法務大臣は、出入国管理及び難民認定法に規定する出入国の管理及び難民の認定の職務に相当する職務を行う外国の当局(以下この条において「外国入国管理当局」という。)に対し、その職務の遂行に資すると認める情報を提供することができ,かつ,外国入国管理当局からの要請があつたときは、提供した情報を要請してきた外国の刑事事件の捜査又は審判に使用することについて同意をすることができる。】というのだ。
くだけて言えば,「日本で集めた外国人の情報は,外国の警察に売りますよ」,ってことだ。
しかも,このような捜査機関への情報の提供は【日本国が行う同種の要請に応ずる旨の要請国の保証があるとき】に限定されるのだから,くだけて言えば,「日本から外国人の情報を提供するかわりに,その外国からも日本人の情報を捜査機関で使わせてもらいまっせ」ということだ。
顔写真・指紋の採取は,強制できるものではないはずだ。悪名高い外国人登録証の指紋押捺について,法務省は、指紋記録は犯罪捜査に利用しないとしていた。そこまで厳格に適用せざる得なかった個人生体情報が外国でどんどん収集され,いざとなったら,犯罪捜査に使われてしまう。
こういうシステムなんだけど,成立させてもよいのかなぁ…。
■■ジャパンタイムズ引用開始■■
急増する外国人犯罪を抑止するため、政府は出入国する外国人に指紋押捺を義務づける制度の導入に動いている。「出入国管理及び難民認定法」の一部を改正する法案を来年の通常国会に提出、改正法を07年から施行する意向だ。この計画は外国人居住者の批判を浴び、外交紛争のもとになる可能性がある。
新制度の下で、外国人は入国時に写真を撮影され指紋を採取される。出国時にも同様の手順を繰り返す計画もあるという。ただし永住外国人は制度適用を免除される。
政府・自民党は、出国外国人の指紋採取は、外国人犯罪容疑者が偽名を使って海外逃亡するのを防ぐ効果があるという。米は同時多発テロの経験を踏まえ、昨年から入国外国人の指紋を査証申請時に採取した指紋と照合する制度を導入した。
日本の旧指紋押捺制度は外国人登録証作成のため導入された。これに対し多くの外国人、特に在日韓国人・朝鮮人は屈辱的で差別的だと反発、反対運動が起きて、同制度は1999年に廃止された。
旧制度について法務省は、指紋記録は犯罪捜査に利用しないとしていた。刑事訴訟法でも、令状なしの指紋採取の対象になるのは、犯罪容疑者として身柄を拘束された人物に限るとしている。したがって、外国人が出入国時に強制的に指紋を採取されるとなれば、外国人差別の新しい動きとして批判を浴びるだろう。
問題は、政府が外国人、外国政府に対し新制度導入の合理的根拠を示せるかだ。外国人犯罪を抑止する方法は他にもある。法務省は、外国人居住者の国籍、氏名、住所、出入国の記録、強制送還者の写真・指紋などを含む各機関所有のデータベースの一本化を検討しているという。しかし、身元確認のための情報が犯罪捜査に使われると、個人情報保護の観点から問題になる可能性がある。
自民党は、外国人対象のIC在留カード導入を検討しているというが、これらの制度のもとで外国人は、常時監視されていると感じるだろう。
政府・自民党は、新防犯制度の詳細を、実施前に十分時間をかけて説明すべきだ。
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