情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

政府によるプロパガンダ放送開始への動機は何か?~外国人向け国際テレビ放送の要否

2007-08-07 01:40:43 | メディア(知るための手段のあり方)
 
 
 ついに、政府が海外に向けて行うプロパガンダ放送の概要が明らかになった。情報通信審議会(会長:庄山悦彦株式会社日立製作所取締役会長)が、このほど、「『外国人向けの映像による国際放送』の在り方とその推進方策」について、答申を発表したのだ(ここ←参照)。すでに各紙が報道しているようだが(ネットでは朝日のみ確認)、どうも、警戒心が薄い感じがする。

朝日新聞は、次のように報道した。

【NHK子会社を使った海外向けの新たな英語テレビ放送について、総務省の情報通信審議会(総務相の諮問機関)は2日、08年度後半の開始を求める答申をまとめた。09年初めを想定している。
 英BBCの国際放送並みの従業員200~400人体制を取ると、運営経費は財政支出を含めて年135億円にふくらむと試算している。総務省は小規模な立ち上げで経費圧縮を図る考えだ。
 新たな英語放送は日本からの情報発信を強化するのが狙い。通常国会で継続審議となった放送法改正案で、子会社設置を盛り込んでいる。
 答申によると、現行のNHKの国際放送を「外国人向け」と「在外邦人向け」に分離。外国人向けの部分を子会社に委託し、受信料や財政支出で運営する。NHKのノウハウを活用しつつ独自放送もする計画で、資金面での民放の協力や広告収入の確保も提言している】

う~ん。これでは、政府広報ではないのか?もちろん、字数の問題もあるが、批判の視点を盛り込んで欲しい。


 まずは、そもそも、なぜ、いまになって、政府が外国人向けのプロパガンダ放送をしようという気になったのか?それは、明らかに、慰安婦問題などのように歴史を改ざんしたいという安倍・中川らの意向が反映している。
「ぼくたちの言っていることが正しいのに、海外のメディアはそのとおり報道してくれないから、自分たちで海外向け放送をつくるでちゅ」「そうでちゅ、そうでちゅ」…本当に申し訳ないが、「お子様」の発想だ。

 この点、上記答申は、

【「日本の対外イメージの向上、親日感の醸成」を第一義的な狙い・目的として設定した上で、これを達成するための具体的な放送理念として、
① 日本の視点の不偏・独立な形での発信
② 等身大の生活・文化・歴史・言語・科学技術・産業等の発信
③ 多様な価値観・アイデンティティのバランスのとれた発信
を柱として据える。
これらのうち、
①は、日本の視点の発信に際して、編集権の政府からの独立を確保すること、プロパガンダ的な放送は行わないという趣旨であり、
②は、普通の日本人、日本の生活・文化・歴史等のありのままの姿を発信することが親日感の醸成上、有効という趣旨である。さらに、
③は、各種の報道に当たっては、特定の見方、解釈に偏った情報のみを発信するのではなく、インタビュー、ディスカッション等の活用により、多様な意見が存在することを伝える姿勢が重要であるという趣旨である。】

と建前を述べる。

しかし、「① 日本の視点の不偏・独立な形での発信」なるもので重要なのは、誰が編集権を握るか?ということだ。つまり、誰が「不偏・独立」か否かを判断するかである。

皆さん、その判断は、NHKがするそうですよ。

なぜなら、外国人向け国際放送の主体は、

第1案:NHKが行う国際放送とは異なる枠組みの下で、新たに「外国人向け」放送を行う主体を創設する

第2案:NHKが行う国際放送を「外国人向け」と「在外邦人向け」に分離した上で、「外国人向け」放送について、NHK子会社に委託することにより実施させる

の二通り考えられるが、

第1案だと、【○ 初期投資費用として、150~170 億円 ○ 運営経費として、230~270 億円(うち番組制作費180~210 億円)が見込まれる】のに対し、

第2案だと、【○ 初期投資費用については、NHKのリソースとの共用により、相応した程度の圧縮が見込まれる】【○ 運営経費については、NHKとニュース素材の共用等を行った】場合【BBC等とほぼ同レベルの番組編成を実現するためには、現段階、135 億円程度が必要】というに止まること

及び技術的問題から、答申は第2案を推している。


そして、その場合、外国人向け放送については、NHKから委託を受けるのだから、編集権はNHKに帰属することになるというのだ…。

NHKに編集権があるということは、残念ながら今のシステムのもとでは、政府に編集権があるというに近い。過剰なまでの拉致事件報道からも明らかだ。予算決定過程における自民党の関与を絶つか、編集権を現場に与えるかしなければ、この構造を変えるのは困難だろう。


そして、答申は、さらに次のような恐ろしいことをさらりと述べる。

【(2)国費投入及び国の関与
事業の安定性の確保のため、新主体に対する国費投入は不可欠であるが、国費を投入する以上、その効果を明らかにすることが求められる。このため、これを検証する適切な仕組みを設定する必要がある。具体的には、政策評価法に基づく政策評価制度を積極的に活用するとともに、視聴効果等をより短期的にかつ効率的に評価するための適切な業績指標及び測定方法について更に具体的に検討していくべきである。ただし、如何なる仕組みをとったとしても、編集権の所在が明らかにされるとともに、番組編集の自由が適切に担保されなければならない】

【視聴効果等をより短期的にかつ効率的に評価するための適切な業績指標及び測定方法】…これを受けるのは電通なのか、例のアメリカの代理店なのか…。そして、政府の望まない放送がなされたら、直ちに、【短期的にかつ効率的に評価】され、編集権を握るNHKに報告があがる…。NHKは、編集権を利用して、そのような政府に嫌われるような報道が二度となされないように現場に圧力をかける。ちょっとうるさい奴は、愛宕山あたりに勤務してもらうのもいいだろう…。


このシステムでは、【プロパガンダ的な放送は行わない】といっても、信用できない。というか、安倍ちゃまにとっては、慰安婦否定もプロパガンダじゃないってことなんだろうな。

本来、国、国民に対する評価は、評価される側から報道することによって高まるのではなく、その国、国民の行為そのものを高く評価されるべきものにするよう努力し、その行為が海外のメディアで取り上げられることによって自然と高まるものだ。

学校で通信簿の評価が低いのは、先生があなたのことを見てくれていないからではありませんよ。いくら、ホットラインを設けて先生にアピールしても、ホットライン以外から伝わる内容が「弱い者いじめ」だったり、「えこひいき」だったり、「特定のクラスの子を仲間はずれにすることで自分の人気を高めようとすること」だったりしたのでは、結局、通信簿の評価は上がらないのですよ、安倍ちゃま。


あっそうそう、NHKは、公共放送、つまりみんなの放送だから、勝手にその施設をホットラインに使うのはよしてくれないかなぁ。NHKを使えば安くプロパガンダできるって、それは、違うだろ。


なお、諮問時点での予定では、冒頭の図にあるとおり、3月には答申をする予定だったようだが、内部でも異論があり遅れたようだ。

この件についても、政府・与党(自公)及び総務省にNHKを私物化するな!と講義する、じゃなかった抗議する必要がありそうです。














★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
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