これは昭和29年の「主婦と生活」12月号付録です。
タイトルに「姿態美をつくる美容仕立ての」と書いてあって
「新しい和裁読本」となっています。「姿態美をつくる」という言い方も
かなり古典的で、要するにスマートに見えるとか、カツコよく見えるとか・・?
と言うことではないかと思うのですが・・・。
この本の最初のほうは、今までの本と同じで、普通の振袖や小紋など
「古典の美・・」とか「伝統の・・」とか、そんなタイトルで出ているのですが
そのあとのほうに「千円でできるきものショー」というページがあります。
物価は今とは違いますから、今なら「一万円でできる」という感覚でしょうか。
このページに出てくるのは、当然化繊とかウールとかで、
つまり安い材料を使って・・ということももちろんなのですが、
着物そのものをもっとカンタンに作って着ましょう、みたいな紹介も多いのです。
たとえば、二部式、下の写真ですが・・・モデルは司葉子さん。
ちなみに右は草笛光子さん、
ちょっとイマドキの二部式と違うと思いませんか?
最近の二部式にも二種類あって、ひとつは「おはしょり丈までしっかりあり、
作務衣の上着のように着るもの」、場合によっては帯もしめます。
もうひとつは、この写真の下の方、帯をしていない形で、
そのかわり帯代わりの同布で紐がついていて結ぶもの、
それでもこれほど短くはありません。
この写真の丈、お辞儀したら背中みえませんかねぇ。
で、ちょっと短いんじゃ・・と思っていたら、コンナのが・・・
モデルは関千恵子さん、
なんかもう、ねっ洋服みたいでしょっと言ってるようで・・。
本来の二部式は「普通の着物に見えるように」工夫したものでしたが、
これはもう最初から「別々で~す」とハッキリ見せ、しかも腰、細ォ・・。
このずっとうしろのページには、わざわざ外人女性を使って、
上を上着風に着せて「パーティー」などにも着られる・・と紹介しています。
今でもその類はありますが、普段の着物からこういうスタイルで、
しかも「新しい」と推し進めているあたり、やっぱり着物離れが
顕著だったのではないかと、そんな気がします。
もう一枚、どうぞ。
特別かわってないじゃない・・普通のアンサンブル・・。
に見えるのですが、この着物についているコメントは、
「在来の和服の形をそのままで、一反でできるスリーピース」、
和裁をご存知の方ならお分かりと思いますが、一反では着物と羽織はできません。
一疋ものを使うか、別布にします。ところができちゃう・・という、
それ以上何も書いてないので、仕方なく「作り方」のページをたどっていったら、
はっはっはと大笑い、この下の着物のほう、二部式なんですが、
上は「ベスト」・・・。袖なしです。しかも後ろは衿の少し下から別布。
いやもーおどろきました。ものがないので工夫した・・というのはありますが
最初から「ベスト式着物」です。どんなことがあっても「羽織」は脱げません!
この本は全体的に、着物素材でないものを使ったり、
おくみと衿にずーっと並べてピンタックをとった洋服風にしたり、
下前を前幅いっぱいにしておくみをつけずに、
上前だけおくみをつけた一反でできる「大振袖」とか(着づらいと思う)・・。
とにかくさまざまな二部式とか、用尺少なくとか、洋服地とか、
いろいろな工夫ものがのっています。ちょっと抵抗あるなぁ・・
と思うものもありますが、いまでも使えるものがあります。
そういうところが、着物は便利ですねぇ。
それにしても、みんなスマートだわ・・。
こんなにがんばったのに、ベスト式スリーピースはグッドアイデアとして
残らなかった・・・よかったぁ・・と思っちゃうのは私だけ?
でも、薄い素材で(すけないもの)作ったら、羽織きてても涼しいかも?
いつ着るんじゃ!
ほんとうに、はっはっはですね。
せめて袖なしの着物でも背中側も
同じ生地にしてほしかったですね。
そうしたら、割烹着でも上から着れば
わからないのにね。
わたしは手芸コーナーのワゴンセールのハギレから、着物、足袋、作り帯などを作ってるので、この記事のコンセプトに近いかもしれませんね。でも二部式は苦手なので、長襦袢と着物はスタンダードな形がよいですが…ハギレは布に制限があるので、反物のような裁断ができず、工夫する部分も多いです。縫い物も楽しいので、普段着は自分で縫ったものを着たいと思ってます♪
その一方で着物も着ている人はまだ多かったのでしょうし、高度成長期にさしかかったところで、少し生活に余裕が出てきた時代と思われます。だから、「布を贅沢に使う」のではなく「工夫して、楽しく作る」文化(??)が生まれたのではないでしょうか?
袖なしの着物は、ここ数年若い女性に流行っている浴衣のことを思い出させました。もっとも、今は「生地の節約」ではなく「露出」が目的ですが・・・(丈も短いし)
そうですよね。わざわざアンサンブルに見せたいがための「袖なし」、じゅばんはまんまですから・・みょうちきりんなかっこですね。
りさこ様
昔からのリフォームで2枚とか3枚の着物から一枚を作るってのもありますし、パッチワークなんて、実はアメリカよりはるかに歴史がながいんですよね。縫い物が楽しいというのは、聞くだけでうれしい言葉です。いつもりさこさ間の「お裁縫」を「おぉっ」と思いながら拝見しています。落ち着いたら・・HPできたら・・ぬうぞぉ・・って何を・・。
Fujipi様
おお、そういう年代でいらっしゃいますか。私の母はもう少し「古い」ですが、ワンピースなど、やはり腰できゅっとしめて、スカートはギャザーでしたね。記事のたっぷりかかる「サーキュラースカート」をはいてみたいといってまして、50過ぎてからはいてました。
あのミニの浴衣、それはそれでかわいいと思いますし、すずしいだろーなーと・・。でも着物って、全部隠すから「ちらっ」というのがいいんですけどね。それが古い・・といわれてしまうのでしょうね。