このところ「基本」なんてぇ、えらそうなことを書いてますので、
今日は基本の基本で、ちりめんのことを書こうと思います。
写真は、代表的なしぼ小さめ柔らかちりめんの古布です。
ちょっと前まで若かった方、着物好きの方ならご存知のことも
いろいろでてくるかと思いますが、お付き合い下さい。
ちりめんとは何ぞや・・強撚糸を使った織物、です。(これだけかいっ!)
すみません、突き詰めていうとそういうことになります。
少し詳しくいってみましょう。
絹の歴史については以前に書いたと思いますが、絹そのものの伝来は
たいへん古いものです。そういう歴史に比べると「ちりめん」の歴史は、
まだ新しいものです。時期的に言うと「桃山時代」くらい。
安土・桃山時代は、貿易が盛んになった時代です。
南蛮からは「ビロード・ラシャ」などという生地も輸入され、
武士の衣装や陣羽織などに、たいへん人気を博しました。
同時期に中国から入ってきたのが綸子やちりめんでした。
ちりめんを作る技術は京都西陣に伝えられましたが、この技法は門外不出でした。
独占していたのですね。しかし「弟子」としてやってきた人達が
やがては持ち帰る・・というよりはいわば「技術」を盗んでかえったわけですが
西陣の方も技術が外にでるのを警戒して、かなりたいへんだったようです。
昔中国が「蚕」と「養蚕技術」を国外に出さないように、
厳しく制限した・・ということがありました。
中国は国が広いですから、他国へ嫁ぐ場合などは、花嫁道具なども
厳しく検査されたそうです。一説には、ある女性がついに繭の持ち出しに
成功した、彼女は繭をどこに隠したか・・実は、高々と結いあげた髷の中だった、
というハナシがあります。真偽のほどはともかく、それほど重要視されていた
ということで、西陣の「ちりめん」の技術も同じような感じですね。
持ち出された技術によって、まずは「丹後」次に「長浜」で
ちりめんが作られるようになりました。中国からちりめんが伝わってから、
この「京都以外」で作られるようになるまで、100年くらいかっています。
それでも最初は当然のように「本場」は西陣、だったわけですが、
しばらくして西陣で大火事があり、機(ハタ)が大打撃を受け、それで
丹後や長浜にちりめんの注文が殺到、「ちりめん産地」としての基礎を
築くことになったわけです。その後、ちりめんの技術は養蚕の盛んな地方へと
ひろがっていまきました・・というのが、ごくオオザッパな歴史です。
では、ちりめんとは他の絹織物とどう違うのか・・・。
最初にちりめんは「強撚糸」を使う、と書きました。
強撚糸というのは1メートルで3000回とか3500回という撚りをかけます。
これだけ撚るとどうなるか・・・皆さん、毛糸でも紐でも、クリクリと強く
撚っていくと、だんだん締まってやがてあちこちに撚りきれないところが
「玉」になってきますよね。で、手を緩めると、真ん中からクリンクリンと
縄をなうように、きれいに大きくより合わさってしまいます。
そうならないように、強くひっぱりながら撚りをかけていき、
そのまま糊付けして固めてしまいます。この糸を「緯(よこいと)」として
織物を作ります。このとき、右撚りの糸と左撚りの糸を交互に使わず、
どちらか一方のより方の糸を使うと、精錬した時シボがうまく散らず
シワのようになります。これが「ちぢみ」です。
右撚り、左撚りを一回ずつ交互に通して織るのが「一越」ちりめん、
鬼しぼ、と呼ばれるしぼの大きなものは「古代ちりめん」とも言われますが、
左右のより糸を二本ずつ引き揃えて交互に通す・・、という具合に、
「撚り」の強さや方向、糸の太さなどの違いによって
いろいろな「ちりめん」地が出来るというわけです。
糸の撚りかたとか回数といったものは、職人さんやその工場によって
違っていたりします。たとえば3000回転ではまだ強撚糸とは言えない、
という職人さんもいたり・・とにかく、そのあたりになるともう
「ついていけない」世界です。奥が深すぎるぅ~~~。
ともあれ、とりあえず「撚りの強い糸」を緯(よこいと)に使って織ったものが
ちりめんである、ということは、お分かりいただけたと思いますが、
織っただけではまだちりめん地にはなりません。
実はここでもうひとつ、以前「生糸」はどうやってできるか、
というお話しを致しました。えっと繭のわんちゃんのところです。
そこで、糸にしただけでは絹糸にならない、精練をして生糸になる・・という
お話しを致しました。絹を「糸」たとえば縫い糸などにするには、
精練して糸にするわけですが、織物用には、する場合としない場合があります。
ちりめんの場合は精練しないままの糸で布(反物)にしてから精練します。
「後練織物」といいます。但し、お召しなどは同じちりめんですが、
糸のうちに精練して、染めてから布にしますので「先練織物」といわれます。
精練にはアルカリ薬剤や酵素などを使う方法や、高圧で洗うだけ・・など、
いくつか方法がありますが、それぞれ出来上がりの状況とかかかる時間などに
違いがあるため、工場によって違いがあるようです。
とりあえず、この精練を行うことで余分なものが取れます。
糊もすっかりとれてしまうわけで、そうなると強くかかっていた「撚り」が
戻ろうとして、それがあの独特の「しぼ」になるわけです。
当然縮みますから、このあと機械で伸ばして必要な反幅や長さを出すわけです。
とまぁ、ざっと駆け足で説明いたしました。
元々日本に入ってきたばかりのちりめんは「無地」であったようで、
赤とかウコンなどの一色染めが主流だったようです。
その後、糊防染、型紙、顔料など、染めに関するさまざまな技術が生み出され
「友禅染め」などの華麗な染物が独自の発展を遂げたわけですね。
最近のちりめんはほとんどが「一越」か「梨地」です。
鬼しぼなどのちりめんは、なかなかありません。
私たちのように「古布」で小物を作る人間にとって、昔のちりめんは
垂涎ものです。特に「錦紗」と呼ばれるちりめんは、
もうほとんど作られていませんので、古着で探しても古代ちりめんについで
高値になります。錦紗については、また別の機会にお話しいたしましょう。
毎日「ちりめん」を触って暮らしておりますが、
とにかく絹はその歴史が長い分、奥が深くて謎がいっぱい!
私もまだまだでんなぁ・・。
私、ビロード・ラシャで作られた陣羽織をもっています。正平六年六月一日(多分1351年)と書いてります。本当にその時代に作られたものかを知りたく博物館に持参して見てもらいました。
当地には、見切る方がいなく分かる人を探してくださるとのこと。
ぜひ、私のブログを見てください。
はじめまして、ようこそ。
さっそくブログ拝見させていただきました。
なるほど「状態」が良すぎる・・とおっしゃる気持ち、わかります。でも博物館などにある「伊達政宗」のものなど写真でみてもきれいですし、使用されずに保存良好なら・・とは思います。ただ、きれい汚いという表現より「古い」感じがしないのです。珍しい紋ですし「写し」ではないかと・・。但し私は「骨董」についての知識は全くありません。「生地」の状態として(赤の部分)経年の色の深みにかけるかなと思います。絹の赤よりラシャの赤の方が比較的黒ずみますので。よい評価がでるとよろしいですね。
西陣お召し全盛のとき、風通お召しなんてのもありましたし、十日町お召しなんてのもありました。
これが全部お召しというものにひとくくりにしてもいいの~というものでした。みな違ったものに見えました。
縮緬、今でておりますのはやわらかいとのこと、よりが強くてお召しなんて硬いものでしたが、やわらかい、硬いはよりの強さによるものでしょうかしら。
個人的な思いではありますが、この「基本シリーズ」を、しばらく続けていただきたく思います。
とんぼさん、いや、とんぼ先生のお話は、そこらへんにある本よりも頭に入る感じで、おそらく、とんぼ先生の文章力の巧みさなんでしょうね?(^o^)
知識欲というものは、果てしなく広がっていきます。知れば知るほど、その先や奥を知りたくなるものです。私は、ひとことで言って、「江戸時代好き」でありますが、その中の一部であります着物ひとつをとりましても、裾野は膨大な資料の塊でしょう。ここは、ひとつ、とんぼ先生を講師に迎えて、私の他にも大勢の方が聞きたがっておりますでしょうから、是非、着物のイロハ、基本の基本をシリーズ化して、順次、お教えいただきたくお願い致します。m(_ _)m
先生!飛んでる場合じゃないですよ!
ま、堅く考えずに、とんぼ先生の知識を判りやすくご披露していただければありがたく思う次第であります。私めを受講生の一期生、会員No.1番として(どうして、ここで、一番になりたがるのだろう?笑)お導きください!
先生!マジですよ!(但し、受講料は無料でね!笑)
もうJJがとんぼ先生の会員No1ですから(笑)
と・・・いうか、千爺も大先生ではないですか!!JJは、大先生のお二人に出会えて幸せです。これは勉強できるチャンスですね☆
ちりめんの歴史・・・。今まで考えたこともありませんでしたが、そうですよね~。
時代の背景とともにちりめんも変化して今まで受継がれているんですね☆
強撚糸ってそんなに撚りをかけているなんてびっくり☆そうかぁ~だからあのちじみ・・。ふうん♪なんか面白い~!!
本当わかりやすくて新しい知識に顔がにやけてしまいます♪
今後も基礎編・・楽しみにしてます☆
そして・・・あらためて、昨日は、大変わかりやすく勉強になるメールをありがとうございました☆
撚りの違いはシボの大きさにつながりますから、硬さということにも関係してくるとは思います。そのほかにも何本取りの糸を使うか(これをデニールであらわすのですが)とか、経糸の打ち込み数とかでも変わってきます。もうひとつ、理由になるかどうかは定かではありませんが、お召しは経糸も「撚り糸」を使います。ちりめんは経糸は普通の糸です。そういう違いで「ごわつき」といいますか、あの硬さ、シャリ感がでるのではないかと思うのですが・・。
例え、姫と爺の関係でありましても、これだけは譲れません。(笑)どうぞ、NO2で、ご了解くださりませ。m(_ _)m
例えば、今回の記事にしましても、爺も、強撚糸云々の途中まで位の知識はあったのですが、とんぼ先生はそれ以上の知識を持っておられ、また判りやすく教えていただけますので、本などを読むよりも、より判りやすいと思いました。
姫!爺の隣の席で、仲良く講義を受けましょうね?
どーしましょー、先生なんぞといわれた日にゃ、穴掘って隠れたい・・。ちょうど雪かきに使ったスコップもまだ出てるしぃ・・。
ともあれ、私もここで書くことで今までの知識にマチガイがないかの確認とか、これは知らないとか、いろいろ勉強になりますので、自分のためにも続けていきたいと思っております。導くなどトンでもありませんので、ご一緒にいろいろ考えたりしていってください。よろしくお願い致します。
ところで「江戸時代」、私も大好きです。リサイクルについては、いずれ書いてみようと思っております。
すみません、今とりあえず「チラシ広告」のウラで「会員証」を作ってって、違うってば!
実際には、私のブログにおいでの方は、博学な方が多いのですよ!とんぼはその皆様に読んでいただくのに「えーかげんなことは書けん!」と、必死こいてるだけでして・・。お若い方には、そういうやり取りの中から、拾い上げていただけることがあればいいなと思っております。これからもがんばりますので、よろしくお願い致します。
いつもとんぼ先生の博学に感心するばかり。
自分では苦労せずに、ここで知識を頂いてしまうばかりで良いのでしょうかと思いつつ、楽をさせて頂いています。
これからもお願いします。
(苦労しない だから 痩せないんだわね)