ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

家紋・・じゃないんですが

2005-12-23 15:07:52 | 着物・古布

まぎれもなく「ねずみ」です。
これは、息子の羽織の背中につけたもの。
通っていた養護学校の卒業式に着たものです。
元々もらい物の無地ちりめんで、一つ紋入れて私の色無地にしようと
長年とっておいたものでしたが、息子の着物と羽織にしました。
紋を入れるつもりでしたが、色目からいって後々気楽に着られるようにと思い、
押し絵で飾り紋を作りました。我が家の紋は「柏」なので、
最初はそれをなんとか図案化しようと思ったのですが、なんかつまらない・・。
で、結局彼の「干支」のねずみにしたわけです。
周りを縫いつけただけでしたので、式のあとはずしました。
はずす前に撮った記念の一枚です。

というわけで今日は「紋」のお話し。
まずは「家紋」についてではなく先に「紋入れ」のお話しです。
羽織のところでも書きましたが、男性の場合は正装は「紋付」です。
女性の場合は、留袖・喪服には紋が入りますが、訪問着や振袖は
「入れなきゃいけない」というものではありません。
でも入れると「格」があがります。あまりあげすぎても「気楽」に
着られなくなります。逆に小紋に紋をつけておけば準礼装になり、
応用が利きます、というのは「羽織」のところで書きました。
この場合の小紋は「江戸小紋」のように無地感覚のもの・・です。

さて紋をつけるとき、技術的な「いろいろな付け方」があります。
一番高価なのは、例えば留袖などを作るとき、最初から紋を含めて
創ってもらうもの、つまり「誂え」です。
この場合は紋の輪郭をとって中を白く抜いて全体を染め、あとから紋のもようを
描き入れます。染めるのではなく筆を使って「描く」のです。
次に「石持(イシモチではありません、そりゃ魚の名前です!こくもち、です)」
という紋入れがあります。これは呉服屋さんなどで、反物を広げた時
紋のはいる部分に白い○型の染めていない部分を残しているものです。
買うことが決まり紋がわかると、この丸い部分に型紙をあてて紋を刷り込みます。
これが一番ポピュラーですね。
色無地など、元々「石持」に白く染め抜いていない場合は、
「抜き紋」と言って、染めるのではなく「紋の形」に色を抜きます。
細かい作業ですから、技術を要します。
もう少しカンタンでいい・・と言う場合は「縫い紋」があります。
ただし、どれにでもつけられる技法ですから、正式な紋付としては扱われません。
訪問着・付け下げ、色無地などにちょっと格を持たせる・・というところです。
このほか色の抜けない生地などに、白や着物にあった色で描き込む方法や、
「加賀紋」という「絵」のように多色で染める紋もあります。
もちろん正式な紋ではありません。無地っぽい振袖に、多色の花丸紋などを
背中にひとつ入れると、豪華で華やかな印象になります。

さて皆様はご自分の家の紋をご存知ですか?
今は昔ほど「家紋」というものを気にしなくなりましたから、知らない・・
とか「ない」とおっしゃる方もいますが、たいがいはあるもんです。
ちなみに我が家は「柏」私の実家は父方が「笹竜胆」母方は「違い鷹の羽」
母方の祖母は「揚羽蝶」です。よくよく調べたら父は「源氏系」
母は「平家系」・・・それでいつも「源平合戦を・・・」いやいや。

ところで、お嫁に行く時紋はどうすればいいのか、ということを聞きます。
これは実家の紋でかまいません。もちろん、婚家の紋でもいいのですが
実家の紋をつけていったからといって、こちらに嫁いだのにと叱られることは
ありません。あとは「女紋」と呼ばれる紋を入れる・・というのがあります。
私の母も「女紋」を付けていけば、どこへ嫁いでも大丈夫だから・・と
「女紋」の代表のような「五三の桐」をつけて「喪服」まで持たせてくれました。
実は、この「女紋」というのがクセモノでして、
いろいろな「定義」とでもいいますかそういうものがあり、
地方によって違ったりします。

ひとつには母系の紋、つまり母親からずっと伝承される紋をいいます。
例えば母親が「蔦紋」だったとしますと、その娘も「蔦」、その子が嫁いで
女の子を産むと、その娘も「蔦」、その娘が嫁いで・・と、ずっと女系に
継承されていきます。また、旧家などでは女性用に「替え紋」があったりして
これも「女紋」として継承されます。
このほかに、私の母のように「世間的に通用するから」という理由で使われる
「女紋」があります。代表的なものが「五三の桐」「揚羽蝶」など。
これは「通用する」という意味で「通紋」と言います。

昔は身分制度も厳しく「家紋」というものを大切に扱いましたから、
「これでもいいや」はなかったのですが、近年になって、
家紋に執着することがなくなり、自分の家紋も知らないというようになって、
呉服屋さんでも「なら通紋をつけておけば大丈夫」と、そういう流れが
あったようです。それでなくとも「母系伝承」があるとかないとか、
家によって替え紋があるとかないとか、地方地域の習慣が残っていたり
いなかったり、いかにも女性らしい図柄なんてのも「女紋」と呼ばれるし。
そんなこんなで「女紋」はごっちゃごちゃ・・。
今から「お嫁入り」の準備をなさる方は、まずご実家の紋をつけておけば
大概はOKです。一般的に紋にかまわなくなった分「どこの紋だ」と
相手が怒るなんてことも一緒になくなってきていますし・・。
あっ、でもおうちによってはうるさいところもあるでしょうから、
確認できたら、そのあとのほうがいいですね。
よくわからなければ「通紋」にしておけばいいのです。
まぁ、そういうことが増えて「女紋」の定義があいまいになっていくのは
あまりいいことではないのかもしれませんが、先ずは着物の格、ということで
「紋付」というのはどういうときに着るのか、とかそういうことから
きちんと伝承していきたいものです。

余談ですが、かの息子の紋付、袴は知り合いの呉服屋さんの奥様が、
ご主人の袴を解いて「お祝いに」と作ってくださいました。
薄茶系のつやのあるいい袴でした。ところがここでモンダイが・・
息子は障害があるので車イスです。歩かないので足が細くて小さく、
タビはなんとかなっても「草履」があうものがありません。
例えあっても紐でわらじのように結び付けないと脱げてしまいます。
考えた末「坂本竜馬でいこう!」と思いつきました。
卒業式当日、息子はくだんの紋付羽織袴に、前年ジサマにプレゼントしてもらった
「シルバーの編み上げブーツ」、しかも親も持ってないクレージュ製!
で臨みました。担任の先生に「おっ竜馬じゃないか」と言ってもらえて、
ニコニコで卒業しました。切羽詰るとニンゲンなんとかなるもんだ!


<こんなでした>




コメント (10)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 富士山・・・わかります? | トップ | イブですねぇ・・・ »
最新の画像もっと見る

10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
家紋 (てっちゃん)
2005-12-23 23:37:34
かっこいい、息子さん正面から見たかったのに~。

ちなみに我家の(家紋)は(剣かたばみ)です。

昔の振袖には家紋が五つ、いつ頃から、付けなくなったのかしら、ご存知ですか、それから先日、頼まれた紋は新たにデザインされた紋らしく、そんな紋は紋帖にも載ってません、紋やに聞いたところそれも有りとか?

返信する
家紋 ()
2005-12-23 23:55:35
実家の渡辺星の花びら?付きから婚家の武田菱へ

丸から四角。

少しも楽しくありません。

婚家では紋に拘りが無い様なので、(結婚する時に義母に紋を聞いたら良く知らなかった・・・)自分の好きな紋にしたいと密かに狙っています。

それにしても、干支のねずみのお洒落紋 可愛いですね。

私も2,3歳若い?干支を付けようかしら。
返信する
記憶では・・ (とんぼ)
2005-12-24 00:04:05
私が成人式のころか、もう少し前から

今主流の「中振」が流行りだしたんですよね。

あのころからのような気がするんです。

友人のお母さんが「本振袖は大仰だから、

これなら紋を入れずに気楽にきられる」なんて

話しをしていた記憶があります。



デザインされた紋については「アレンジ紋」とか

「私紋」とか言うんだそうですね。

知り合いの呉服屋さんも、

着物をたくさん持ってる人が、時にお遊びで

「わたくし紋」を作るのはいいけど、

「これ、うちの紋にするー」なんて簡単に言われて

ガクッとくることがある・・・って言ってました。

「紋」のなんたるかも知らない・・って。

返信する
それいいかも! (とんぼ)
2005-12-24 01:12:30
恵様

「ちょっと若い目の干支」、

私かわいいのがいいなぁ。ウサギとか・・

ひとつしか違わん!



武田菱、なるほどカクカクですねぇ。

私「抱きナントカ」っていう形、

好きなんです。「抱き冥加」とか・・。

「抱き大根」っての見てホントにあるのかな

と思いました。「抱きセロリ」とか

「抱きブロツコリー」とか、かわいい??

返信する
とんぼ紋 (Suzuka)
2005-12-24 13:34:21
丁子(大根)は、人気だったらしく沢山のバリエーションがありますね。”抱き”ではないけど、七つ丁子などブロッコリーに見えなくもないかも。だけど、竹蜻蛉紋なんて、まさにほばーりんぐ・ととさんのための紋みたい。娘の振袖に山桜紋を染め抜いたのですが(幼稚園のころ)今なら弓紋がいいといったかも。私も今だったら、鈴とか烏とか澪標とか・・・もっと飛べたかなぁ。
返信する
とぶっ! (とんぼ)
2005-12-24 17:14:10
suzuka様



そーなんです、とんぼの紋、私紋で作りたいんです!

桜とか水仙とか、キレイな紋もすきだけど、

やっぱりピーターパンの「アイ・キャン・フライ!」

で、とぶものがいいなぁと思うんです。

カブトムシ、ヘリコプター???紋になるか?

こうもり!そりゃバットマン・・。

やっぱ「とんぼ」で考えよう・・。
返信する
遊び紋 (ぺたこ)
2005-12-25 11:48:00
私も紋を色々考えるのが好きです。蓮にカエル、とか柳に燕とかあったら面白いですよね。トンボは勝ち虫と言われてよく印田柄に使われていますが、そういえば紋では見たことがないかも。
返信する
可愛いのがないんです (とんぼ)
2005-12-25 12:57:30
ぺたこさま



トンボの紋もあるにはあるんですが、

生々しかったり、これは「ハチととんぼのあいのこ」

みたいなのとか・・。

日陰紋にして、葦の先にちょっととまってる・・

なんてのをデザインしてみますかねぇ。

「柳に燕」・・かっこいいですね!

遊び紋ならなんでもアリですものね。



ちなみに印伝は大好きで「扇子・印伝のコマキ」

というネットショップで、さいふ、メガネケース

など、全部黒地に黒のトンボ柄で少しずつ

少しずつ揃えました。(なんせお高い!)
返信する
Unknown (花兎)
2007-09-15 21:10:52
おおっ、これですね!
息子さん、かっこいい。若者がやわらかい色を着るのも素敵ですね。
飾り紋ねずみさんのおっぽがぴんと上を向いているところが卒業式らしいですね~
返信する
Unknown (とんぼ)
2007-09-16 13:16:09
花兎様
元々は私にといただいた反物だったんですけどね。
なかなかいい色だったと、自画自賛しております。
まだ先のお話ですが、息子さんの成人式のとき、
紋付羽織着せてくださいね。
ほんっとかっこいいものですもんね。
(あの一部ピンクや黄色の「バカとの風」は別!)
返信する

コメントを投稿

着物・古布」カテゴリの最新記事