ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

今日は帯締めのお話です

2008-06-10 21:29:46 | 着物・古布
写真は、23か4くらいですか、いとこの結婚式で司会をしているところです。
この帯締めが又…いいくりかげんで…ペケです。
司会の合間に食べることに走ってまして、着崩れのはげしーこと…。

帯締めの正式な締め方、なんてご存知でしょうか。
今はほとんど言われくなっていますし、専門家でさえあまりうるさく言いません。
ためしに着物雑誌を見てみると、あれこれいろいろ…。
留袖や喪服などの礼装用について言われるくらいでしょうか。

実は「帯締め」というのも複雑な「立場」でして、
帯締めの歴史そのものは「和服」の歴史の中ではもっとも新しいわけです。
たかだか150年ちょっと…着物の歴史1000年から比べたら新参者です。
帯締めは江戸時代から存在しましたが、身分制度がはっきりしていた時期に、
一部の階級でのみ使われていたもので、庶民の中では
帯締めを使わない結び方が主流でした。
俗に、亀戸天神の太鼓橋の渡り初めで、芸者さんが締めたのが、
お太鼓の始まりで、それが庶民にひろまって…、といわれていますが、
いずれにしてもそれも江戸の後期です。
そこから始まったわけですから、今風の帯締めの
和装小物としての登場と定着は、まだ新しいわけです。
ただ、「結ぶ」ものであったがために、
けっこうルールっぽいことがあとあと取り入れられたんですね。
「結び」というものは、日本では重要な意味を持つ文化ですから。
そんなわけで、結び目がどっちにくるとかどっちが上だとか、
そんなことがこまごま言われた時代もあったわけです。
上にも描きましたが、最近は着付けの本を見ても
実はごちゃごちゃだったりします。
ですから別に「昔のルールを守りましょう」というのではなく、
始まりに意味のあるものなら、その意味を知っていて崩すほうが、
納得もできるし、口うるさい方に何か言われても
気にせずにすみます、ってことで…。

例によって前置きが長くなりましたが、
「丸ぐけ」以外は、ほとんど使われなかったわけですから、
最初からいきなり「はい、これが帯締めです」と、
規定ができたわけではありません。
実は「紐」ならまーなんでもいいか、なんて感じもなきにしもあらず。
明治時代に帯締めを使っている写真など見ると、
えらく貧弱な紐だったりします。
実は…、明治に入って「廃刀令」というのが発令されました。
詳細は略しますが、持ってはいけない、ではなく「帯刀」してはならん、です。
このとき、不要になったのが「刀の下げ緒」です。
腰に挿した刀が落ちないように、袴の紐などに結び付けておくための紐。
長さは7尺といいますから、2メートル少々ですね。
これは真田紐や伊賀組みひもなどが使われていました。
今の帯締めよりは薄いです。それでも、今まで帯締めってものが
なかったわけですから、これは重宝だったわけです。
元々武家の未亡人は、夫の形見の下げ緒を、帯締めとして巻いたといいますから、
あながちおかしな使い方ではなかったわけです。
そんなこともあって、それまで「下げ緒」を組んでいた職人さんたちは、
帯締めを組むようになったわけですね。

まぁそんなわけで、お太鼓が主流となるにしたがって、
帯締め帯揚げは「ワンセット」の小物として定着したわけです。
当初は丸ぐけも多く使われ、今でも花嫁さんや七五三には、
丸ぐけが使われますね。私の子供のころは、まだ留袖用は白の丸ぐけを
使っているのをみたことがありました。
その後「組みひも」が主流になりましたが、
帯締めの長さはあまり変化はないものの、幅はずいぶんいろいろ出ました。
着物が洋装に負けじと、やたらがんばって洋風のこしらえなどに
励んでいたころの帯締めは、親指で隠れないほど太いものがありました。
今は、ほぼ見た目にもバランスのいい幅になっていますね。
礼装は少し幅広め、帯止めを使うなら細め、と、
使い分けをしていますが、これも近代に入っての「モード」なわけです。

さて、肝心の締め方、ですが、実は過日、Suzuka様に質問されたとき、
思いっきりボケこいてお話してしまいました。
なんたって私は礼装なんざ、めったに着ませんし、
そのほかはテキトーですから。本日、バサマに確認してまいりました。
Suzka様、本日お話することが「正解」です。すみませんっ!

ここまでの話の長いこと…、でもまだこれから「締め方」までに
少しお話があります。
お疲れの方、ここから先は明日読んでくださってもいいですよー。

先にも書きましたが、最近はしめかたについて、あまりうるさく言いません。
ただし、礼装だけはきちんと守ってください、あなたと着物の歴史のために。

まずは、紐、ということで「結び」の歴史がかかわってきます。
日本において「結び」というのは、たいへん重要な意味を持つことでした。
このことについて書きますとまた長くなりますので、
結び」について書いた過去記事をご覧ください。
で、この結びというのは、日本古来の、特に宮中などのしきたりが、
影響しておりまして、「右より左が位(地位)が上」です。
これは「お雛様」のところで書きました。
とんぼの記事はやたらと長いですから、こちらもがんばって?!読んでください。
つまり、左のほうが身分が高い、「右大臣より左大臣」です。
それが帯締めにも使われていまして、左のほうが華やかといいますか、
意味を持つほうといいますか…、そういう位置づけで使います。
たとえば、留袖用などで真ん中で半分ずつ「金銀」に分かれているような帯締め、
この場合は「金」が「自分の左」に来ます。相手から見てじゃないですよ。
これは金のほうが銀より上、だからですね。
熨斗袋を見るとわかりますが、祝儀用は赤が、不祝儀用は黒が、
左、つまり「向かって右」ですね。
これは赤や黒が、その行事の吉凶を表したり、思いをこめたりするから。
これを思い出せばいいわけです。
また、片側だけに模様が入っていたり、ぼかしがあったり、
そこだけ組み方が違っていたり…。この場合は「多い色」が「地色」です。
地色に対して、その帯締めのポイントになるほうが左、です。


まず、裏表がよくわかるように、裏と表で色が違うもので締めて見ます。
こちらは陽花様に、この色でと、お願いして組んでいただいたもの。
まず、最初が肝心。
とんぼ!何縛り上げてんのよっ…ではありません。

最初に組みひもを左側が外にいくようにして上に向けてクロスします。
わかりやすいようにちとオーバーにやってみました。


普通にやるとこうです。
房側が上であることがわかるように、わざと短くしてあわせています。


外側、つまり「自分の左」から来ているほうを、上から下へくぐらせます。


「自分の右」から来ているほうで輪を作ります。
このとき帯締めは裏返しになります。


「自分の左」から来て下に下りているほうを、
持ち上げてきて輪に通します。


そのまま左右に引くと、こうなります。


ちゃんと締めて出来上がり。


はい、よく見てください、こうすると左に行くほうが、
結び目の中で、ちゃんと右に行くほうより「上」になります。


結び目で大事なのも、向かって右の一箇所、
裏の色がでているところ、これも「左」に行きます。
熨斗袋の結び目もそう書いてあります。

模様の色が片側に入っている場合も同じです。
こんな帯締めを使ってみます。地色がピンク、模様がグリーンです。


   


模様のあるほうを左にして、上に向けてクロス。


輪にして


通して、


引いて締める。



さて、私がめんどうなのでしょっちゅうやってるごまかし、
コレのおかけでSuzuka様にもインチキなお話なんぞしてしまい、
あげく今日バサマに叱られてきました。
ボケたとはいえ、まだ着物の知識は「現役」でした。

これは、上から見た目線、つまりあなたが今しめているのと同じです。
最初に上にあげず、目の前でふつーにクロス、しかも左が上になってます。


これで上の写真のようになるよーに、なんとか結びますと…


ややこしいですが、これは上から見下ろしているところですので、
結びの丸い部分が左でいいわけです。
ところが…、これを前から見ると、


こっちの「グリーンのところ」が違いますね。


実は、私のまちがってる結び方は「羽織紐」の結び方なんです。
羽織紐と違って長いから、はしを重ねて押し込んじゃえばわかんない…、で、
面倒なので手になれたこれで、ずーっとやっていたのですが、
バサマに「足袋の先まで気ぃ抜いたらアカン」と、いわれました、ははは。

というわけで、帯締めの正式な結び方、でした。

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8 コメント

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Unknown (陽花)
2008-06-10 22:53:22
エエッ~そうなんですか。
慌てて帯締めで結んでみましたが、
左を上にクロスはしますが、上に
向けてではなく下に向けてしています。
だから仕上がりは、下から二番目の
写真のようになりますね。
知らなかったわ~
返信する
あらまあ・・・ (茶ノ葉)
2008-06-10 23:14:03
私も上から覗き込んだ状態で「左手に持っている方が上になるように」と教わって、ずっとそれで結んでいました。
でも確かに丸組や平打ちでも細いものはさほど違和感がないのですが、太目の平打ちを使うと、紐の流れに無理があって何か変?といつも思ってました。

PC前に帯締めを持ってきて、結んでみてなるほどと納得です^^
良いことを教えていただきました。
ありがとうございます。
返信する
連投すみません (茶ノ葉)
2008-06-10 23:18:08
とんぼ様、連投ですみませんが一つ関連質問させてください。

不祝儀の場合は帯締めの流れが逆(脇で差し込むのが下から上)になるように結ぶ、と聞いた事があるのですが、その場合は羽織と同じ結び方と考えて良いのでしょうか?
返信する
選挙カーから連呼、 (Suzuka)
2008-06-11 07:24:59
もしくは指名手配されてる気分ですぅ。。。

えぇぇと、色の右左、
蟲でやってたので、よかったんですね。

とんぼさまの名誉のために申し添えますと、
おかげさまで、おったて結びが直りましたよ~
ありがとございました。

なんとも、ツボにはまる染め分けの帯締めです


返信する
ぎょぎょ♪ (zizi)
2008-06-11 07:58:11
着付け教室でそのように習ったと思っていたワタクシは○×でしょうかTT(号泣)

トップのトンボ様の麗しいお写真にうっとりです。
返信する
Unknown (とんぼ)
2008-06-11 19:36:05
陽花様
一応知識として知ってても、私なんぞ
「やりたいよーに」やってます。
普段はなんでもいいと思うんですよ。
そんなに堅苦しく決めなくても。


茶ノ葉様
お役に立てて何よりです。
「房の向き」については、
今日書かせていただきました。
テーマをいただき、ありがとうございます。


Suzuka様
なにとぞなにとぞぉ~~と連呼…。
お許しくださいませ。


zizi様
お教室によっても違うのだそうです。
迷いますよねぇ、それじゃ。
若い頃は、「二重アゴじゃなかった」…。



返信する
Unknown (piyo)
2008-06-11 19:58:18
とんぼさんには時々メールでお世話になってますが、
コメントは初めてです。

私も陽花さんのように、左を上に、下に向けてクロス、
します。
そして最後に結び目を裏返すと教わりました。
そうすると、結び目が左にきます。
よって、手順は陽花さん、仕上がりはとんぼさん、
のようになります。
返信する
Unknown (とんぼ)
2008-06-12 19:15:53
piyo様
はい、ひっくり返す方法もありますね。
ただ、ひっくり返す、というのが、
まるごと全部ですと、房のついた紐は
胴に巻いた紐の下に入ると思いますが…、
これは尺の短い帯締めをしめるときの
裏技、ですね。
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