丸帯です。状態良好、わずかなシミやヨゴレ程度ですので、
アンティークお好みの方なら締められます。
それにしても「ハデ」、といいますか「華やか」と言うべきなんでしょうね。
「源氏車」といわれる柄です。御所車の車輪ですね。
こういう柄にはたいがい「花」があるのですが、この帯は珍しい「稲穂」、
あくまで「車輪」メインということでしょうか。
色も「グリーンと黄色」という組みあわせ、「赤系」がない分、
年代的に長くつかえそうな感じですね。
昔は、総体に柄が大きい、色がハデというのは当たり前でしたから、
これくらい柄が大きくても、30代40代でも締めたと思います。
当然「引き抜き用」の柄置きです。
この前の「貝あわせ」と同じで、あっちこっち柄だらけ?!
とても華やかです。ちょっと全体を、写してみました。
グリーンのところを隠してしまうと、全体に淡い感じ、
この「グリーン部分」が、とてもいいアクセント、コントラスト、なんですね。
普通のお太鼓にしてみるとこんな感じ、急におとなし~くなっちゃいますね。
たいへん柔らかい帯、というより、このタイプの「昔の丸帯」は、
柔らかいのが普通です。つまり、以前にも書きましたが、
「引き抜き」で結んだり、また丸帯は「おらずに」締めるのが決まりでしたから。
硬かったらしめられまへんがな…です。
以前使った写真ですが、
これは、モデル使用の写真ではなく、一般人の記念写真ですから、
これが普通…ということですね。左のおかーさん、まるで「腹巻」のようです。
もう二枚、これも同じ記事で使ったもの、丸帯が主流だった頃の締め方ですね。
今「丸帯」というと、「花嫁さん用」という厚手で金糸銀糸の織帯、
ずっしり重くて締めにくい…と、まずそれがイメージとして浮かびますが、
それはつまり「礼装用」、厚い重いタイヘン、それで「袋帯」ができたのです。
この帯のように軽くて薄くてシナシナ…は、普段用・オシャレ着用の丸帯、
今でも別に締めにくいことはありませんが、結局その後「袋・名古屋」などの
帯が主流になり「帯締め」をする締め方になったことで、
「引き抜き」をしなくなり、帯は固くても締められる、になり、
しっかり形のつく「織」の帯が主流になっていった…という流れですね。
染め帯は「塩瀬」が多いのですがあまり硬い芯は向きません。
表地と相性が悪くてよけいなシワがよりやすく、また中が硬いことで、
帯締めでこすれるところなど、帯の傷みが「織」よりひどくなります。
元々が「やわらかい、はんなりとした」印象のものなのですね。
染め帯は礼装には使いません。原則として「織の着物」用、
それは、かっちりした紬やしゃんとした縞のお召しなどに、
柔らかさを添えることでもあるのではないかと思っています。
私は染め帯が大好きなのですが、現代モノではなかなかありません。
昔、親に作ってもらったもの、古着でみつけたものを、
後生大事にしまいこんでいます。
さて、おまけは本日のメイン柄、「御所車」のお話。
源氏車、と呼ばれるこの柄は、水と縁がある柄の一つです。
この帯にも流れを表す曲線が描かれています。
これは「御所車の車輪」というものは、木製の「パーツ」の組合せだったため、
ヨゴレ落としと乾燥防止のため、川の流れにつけている、という風景。
その作業自体は季節に関係なく、というより乾燥を考えれば
夏より冬かと思いますが、美しい車輪が水の流れに浸っているという風景を
「着物や帯の柄」として切り取ったとき、やはり「水」があるということで、
比較的「夏モノ」に使われる柄です。
御所車の車輪は、本来「7個」のパーツの組合せが多いとされますが、
これは8個ですね。最初の写真をもう一度出してみましょう。
車輪の車軸(黄色いところ)を数えると8個あります。
この車軸、つまりスポークですが、これを「後光」といいます。
なるほど、後光がひろがっているように見えますね。
その後光の先についている「絵馬」みたいな形のものは「小羽根」
その先の、一番外側の部分を「櫛形」といいます。
これらを組み合わせて、漆で固めたりしたわけですが、
そのほかにも全体を漆塗りし、金銀蒔絵など、
貴族たちは競って美しく飾りたてたわけです。
そんな美術品のようなものを川の流れにつけたのか!
いえいえ、そういうものもあったかもしれませんが、
実は「それほど美しくない車輪」もあったわけです。
お金持ちとばかりは限りませんし、元々美しいものは「花車」と呼ばれ、
その後祭祀用の屋台のようなものだとか、
そういうものにもこの作りの車輪は使われました。
そういうものは、漆がけなどはなく、また外側を実用的に金属の帯で巻いた
「輪締め」をして補強しました。作り方だけが同じだったわけです。
それなら水にもつけますね。
いずれにしてもすごいと思うのは「円周率」もコンパスもない千年も昔に、
この7個8個という数で、後光、小羽根、櫛形、というたくさんのパーツを
ひとつひとつ手で作ってピタリとあわせたという技術です。
名も無き職人達のワザは、今でもつたわっているわけで、
日本人ってすごいなぁ、と思うのです。
それにしても、昔の写真、何年くらい前のものなんでしょうか。着物の着方も時代時代でこんなにかわるものなんですね。何十年後には、今私たちがきれいな着付けと思っている着方が、不思議~???ということになってるのでしょうね。後100年生きて、着物がどんな風になってるか見てみたいです。
って・・・妖怪・・?
話では紬や縞のお召に合わせるのでは?ということですが、紬の色無地(目立たない縫い紋付き)には 格が違いすぎでしょうか?
色的に合っていたりしてもったいないなぁと思ったり、アンティークの小紋に合わせたらクドイかしら?と思ったり悩んでおります。
悩むのも嬉しいですけど・・・
随分感じが変わりますね。
御所車の柄は今でも多くありますが
御所車をメインにしてあるのは本当に
珍しいですね。ちなみに私は最初の柄出しが
好きで~す。
現代では紋付にはちょっと…ですね。
紬の色無地、縫い紋つき、これは略礼装ですね。着物の原則として「染めの着物に織りの帯、織の着物に染めの帯」といわれます。街着などでは、これは気にしなくていいことが多いのですが、礼装や略礼装の「染めには織」はかえられません。あくまで原則として、ですが、たとえ紬でも略礼装なら「織の帯」の方がいいと思います。ただ、着る場所、目的、たとえばお正月に家で晴れ着として着る…なんてときは、いいんじゃないでしょうか。
「紋」って、便利な時とじゃまな時とありますね。一昔前は「地味な無地紬に黒帯黒羽織」で、御通夜にいかれたのですが、最近は生半可な知識で「紬なんか着て」とか「着物が黒くなかった」とか、いわれちゃったりして。
染めの丸帯は、小紋にももちろんOKです。染め帯自体が減っていますので、大事にしてくださいね。
引き抜き結びは、楽で本当にいいです。
私は全て引き抜きで結んでいます。
結べない帯はあきらめますけど・・・
着心地より見かけを選んでしまったので、
着物が実生活から遠ざかったんじゃないかと
勘ぐってしまいます。
遅くなってすみません。
「たくさん写っているほう」は明治時代のもの、
一人ずつのは、モデルさんを使って、
昔の衣装を復元したものですが、
昭和32年の本です。
着物の歴史も少しずつ変わっていきます。
おかしなものが残っていかないように、
きちんと足元の土台を知って、
その上にきちんと積み重ねたいきたいものです,。
いろいろな柄を楽しめるように、
あるいは「若いときは表、少しと縞になったら裏」
なんてやっていたのかも…。
これだけ大きい「車輪」の図柄はあまり見ませんね。
私も締めるなら最初の柄だし!(締める気か??)
私は「固い帯」が苦手です。
今のような形になってしまったのは、
おっしゃるような理由もあると思います。
これもあるよ、あれもあるよ、だったのが、
いつの間にか「これしかない」になってます。
ラクならなんでもいいのにねぇ。
纐纈織で、匹田鹿の子の総絞りのように見える中に所々
蓮華紋の様なのが金糸で織り込まれています。
豪華だけど重々しくなく、かわいらしい感じです。いったいどんな帯をすればいいのだろうと思っていたら、なんとまあここにありました。
帯に負けず、着物に負けず、お互いを引き立てる。うれしくなってしまいました。
じゃ、これはどんな人が着れば?
モンダイはそれだっ!?
いやいや、そんなことはありません。
そのお着物はお手持ちのものですか?
組み合わせてみたいものです。
私は、手持ちの着物をいろいろ思い浮かべたのですが
くすんだ緑にちょこちょこと茄子が飛んでいる紬、
これしか思い浮かびませんでした。
昔の組合せって、けっこう大胆なんですよね。
今じゃなんとなく「無難なセン?」
思い切って!ウチの中でしめてみよう…あらら。