昨年の暮れに買った「自分へのクリスマス・プレゼント」っていくつ目だっけ?
絵本は子供のためにも買いますが、自分のための絵本も、けっこうあります。
絵本を買おうとすると、小説を選ぶより迷うのです。それでさんざん眺めて比べて、それでも買わないことが多くて、
着物の本よりははるかに少ないのですけれど、それでも専用本棚があります。
ここ数年にわたる断・捨・離で、結構な数の文庫や小説、マンガなどを処分しましたが、
絵本は一冊も処分していません。なにしろどれもこれも、自分で厳選した(つもりの)本ばかりなので。
さて、今回本当に久しぶりに買った絵本、たぶん、前回は2年位前「ふきのとう」を買って以来と思います。
この本はNHKで紹介されていたもので、テレビ画面に映った表紙の「絵」がよくて、説明もきいたので…。
「道」という絵本。
Michi (福音館の単行本) | |
junaida | |
福音館書店 |
字はいっさいありません。裏表紙も表表紙も同じ色調のきれいな町、どちらから見ていってもかまわないという本です。
右へとあけてみていくと、赤い服の女の子が白い子犬と一緒に町の中を歩いていきます。その姿を探すのも楽しい…。
左からあけていくと、こちらは青いズボンの男の子が白とグレーの子猫と一緒に同じように町を通っていきます。
だまし絵ではないのですが、エッシャーのだまし絵の町のような、入り組んだ道があちこちに続き、
必ずページの端に、次のページの道につながる道が描いてあります。
きれいな色調で統一されたいろんなカタチのいろんな町を通り過ぎて、
最後に真ん中のページで、男の子と女の子は出会います。
町はみんな「ラピュタ」のように、宙に浮いている町、水の中の町、楽器の町、ゴーストの町…。
ふと「安野光雅」さんの絵を思い出しました。雰囲気にています。氏の絵よりもうちょっとシャープかな。
町そのものを見るのも楽しいし、子供たちや町の人たちの様子を見るのも楽しいです。
できればお子さんと一緒に、どの街角で誰がなにをしているか、主人公の男の子と女の子がどこにいるか、
クイズみたいに話しながら見たら、とても楽しいと思います。字がない分、物語を自分で作る感じです。
私の場合はハズキルーペが必要ですが…。
作者の「Junaida」、ジュナイダとよむそうですが、この方「ナゾの作家さん」といわれています。
男性であること、京都在住、大学のセンセイ…くらいしかわかりません。別に隠しているわけではないのですが
さまざまなメディアに露出度が低いのですね。大人でも今風に言うなら「癒される」?絵本です。
もう一冊、これは絵本というより、子供向きの歴史図鑑っぽい要素の本です。
アマゾンで表紙の絵をみたとたんに「懐かしい!」と思ってポチッとしてしまいました。
「ふるさと60年」、この本は2012年が初版、私が今回買ったものは2017年度版です。
ふるさと60年 (日本傑作絵本シリーズ) | |
道浦 母都子 | |
福音館書店 |
2012年の時点で、おじいちゃんは68歳、おばあちゃんは66歳という設定、つまり私より5歳と3歳上、です。
物語はおじいちゃんとおばあちゃんが、孫たちとのおしゃべりの中で昔の暮らしの話をせがまれて…と始まります。
おじいさんが生まれたのが1945年、戦後5年目ですね。焼け野原から少しずつ復興し始めた時代です。
おじいちゃんは「しょうゆ屋の息子」、つまり地元では裕福なほう、おばあちゃんはすぐそばに住む農家の娘、
幼馴染の二人は仲良く育ち、おじいちゃんは大学から東京、やがておばあちゃんと結婚して、
二人は東京での団地暮らしをし、子育てをして…と、二人の人生の歩みと交差させながら、
二人のふるさとの変化を絵であらわしていきます。
あわせて当時の社会の様子とかはやっていたものなども絵と短い説明で紹介。
絵は「定点観測」ともいえるもので、二人の実家を中心とした町の風景、すぐそばの川や神社、
ちょっと離れたところの商店、遠くにある線路などが描かれています。最初の絵が1946年ごろ、
次が1951年ごろ、次が1956年ごろ…と進んでいきます。
大きな映画館ができたり、橋が整備されたり、護岸工事がされたり、舗装道路になったり…。
遠くを走る汽車は、やがて新幹線になりました。
物語の最後は「未来」への話になります。
昔々の町は、ビルの立ち並ぶ近代的な町に変貌し、昔の面影はなくなってしまいました。
でも、今(本で言うところの2012年ですね)緑や自然環境も大切にしないと…という声があがり…
というようなお話しになっています。
以前、一度ご紹介したことがあったかもしれませんが、今からもう30年ほども前のこと、
船橋の西武美術館で「イエルク・ミュラー 展」というのが開催され、
知らないままに見に行き、図録を買ってきました。それもおなじ「かわっていく風景」の絵です。
「うつりゆく街」という本ですが、図録であったためそのほかにも「うさぎの島」「ふたつの島」などが載っていました。
3枚の絵、右の茶色い建物が、数十年後に真ん中のようになり、さらに近代になったらあとかたもなくなり
高速道路とビル街になっている…という絵です。
どれも現代の世の中についての警鐘といえる内容です。
ただ「うつりゆく街」は、結末に救いがありません。変わってしまった…で最後です。
「ふるさと60年」のほうは、「未来を考える」というテーマをうちだしているわけで、
元々「こんなになってしまった」という感じはありません。
昭和を38年、平成を30年生きてきましたが、昭和の時代は「どんどん豊かになっていく」時代で、
平成は「どんどん便利になっていく」時代であった気がします。
便利もいいけれど、そのために何がなくなっていくのか、何が忘れられていくのか、
それはなくなってもいいものなのか、忘れるずに伝えることはないのか、
そういうことも考えていかなければいけないのではないかと、そんなことをずっと思っています。
細かいところまで描き込まれている絵は、その時代を少しでも知っていれば、
「あぁそうそう、そうだった」と懐かしく自分のふるさとを思い出させてくれます。
私には、生まれたときからずっと暮らしていた、という家はありませんが、
狭い範囲をあちこちウロウロしたけれど、今住んでいる町がふるさとです。
4才から住み、結婚で18年あいて戻ったら…ほんとにすっかり様変わりしたわが町。
昔のことを思い出すだけでも、なくなったもの、忘れられたものがどれだけあることか。
どっちがいいとか悪いとかではなく、月日が経つことによってかわっていくなら、
なくしたものを補ったり、新しくていいものを取り入れたりして、
この街に50年先100年先に住むであろう人たちに、けっこういい町だよね、といってもらいたいものです。
小学生中学生の子供たちに、自分の住む町を思い出しながら見てもらいたい本だと思いました。
母の話によれば、私は絵本と折り紙をあてがっておけば、
何時間でも一人で遊んでいたそうです。
高校生になっても童話が好きでしたから、
いまだにこどもなのかも?
子供のころに好きだったのは「お姫様モノ」でしたねぇ。
今の絵本は上質で、装丁もきれいです。
ついつい本屋で足が止まります。
なかなか行かれないのですけれど。