「荒磯」と書いて「ありそ」と読む…と、先日お話し致しました。
元々いわゆる「名物裂」の中のひとつ。「名物裂」は、安土桃山時代に海を渡ってきた、
緞子(どんす)や金襴などの生地を、かの千利休が「茶器の仕覆」として使ったことから、
珍重された布地全般を言います。
緞子・金襴・間道・天鵞絨(ビロード)など、様々な布で、茶道具の保護するための「入れ物」として作られ、
引き絞るヒモまで美しいというものです。
いやあ、茶道の心得のまっっっったくない私が、仕覆のお話をしようと言うのが、土台ムリなオハナシ…
というより「暴挙」に近いわけなので、えーと、知ってることだけチョコチョコと…です。
で、柄と言いますと、何しろ高価な絹織物が多いわけで、当然金襴などは「有職紋様」タイプが多いわけですが、
間道(かんとう)などは、縞や格子ですから、豪華絢爛な柄ばっかりと言うわけでもないんですね。
この「荒磯」は、そういう柄の中のひとつというわけなんですが、もともとは中国から来た柄。
「荒磯」と言うからには「海」で、こんなに元気に飛び跳ねているのだから「イルカ」…いやいやそーじゃなくて、
通常は「和柄に使われる海の魚」だと「鯛」…と思うのですが…。
お魚さんをよく見ると「ヒゲ」がある…あるかな?ないじゃん…口の先にVに書いてあるのがヒゲ…らしいです。
これ、略しすぎ…。
実はこの「荒磯」も、どれもがみんな同じように描いてあるわけではありませんで、
私の持っている「木綿」の方、こちらのほうが、より細かいといいますか、大判風呂敷などに使われています。
あごの下(魚ってあごっていうのかしらん)のピロンとしたのがヒゲ。
一番らしいのは、借用画像ですがこちら、ちゃんとヒゲらしいですね。これも風呂敷。
これなら鯉に見える…かというと、私いつも「荒磯柄」を見ると「鯉」の前に「シーラカンス」を思い出すのです…。
ヒゲがある…ということは、鯛でもマグロでも、もちろんイルカでもなく「鯉」です。
となると…そう「磯」ではないんですよね。
これ、以前に書いたと思うのですが、川、もしくは池と飛び跳ねる鯉が、ナゼ「磯」なのかは、実はわかりません。
勝手に考えたことですが、中国というのはとても大きな国ではありますが、
海に面しているところは東側だけ。あとは川や池、湖です。しかしスケールが違う!
長江や黄河のような、向こう岸も見えないような大きな川で「川魚」を主として獲ってきたわけです。
ですから、中国でおめでたい魚といえば「川を上って龍になる鯉」ですが、
四方を海に囲まれ、海と見まがうような大きな川や湖もない日本では、めでたい魚といえば、海にいる「鯛」…。
そのアタリからの混乱かなと思うのです。
というわけで、単純ながら楽しい「荒磯柄」の、これは題名「じゅばんの解き」…だったのですが。
実際広げてみたら、確かに胴貫として使ったらしいペラペラの平絹(衿肩あきのあるもの)が二枚、
但し、長さはちぐはぐ、それとなんだったのかな?が゛少々、そしてこの荒磯柄。
しかーし、この荒磯柄が、1メートル、2メートル、4メートルが1枚ずつという、ナゾな長さの3枚だったのです。
どこにも切り込みがありません。全部で7メートルですから、もちろん胴貫じゅばんはできますが…。
「じゅばんの解き」でないことだけは確かです。
おまけに、荒磯の方は、大きな別段問題ナシの状態なのですが、
一緒に入っていた「衿肩あき」のあるほうは、なんたってもう、すごいツギアテと色変わり…。
右のような穴が何箇所もで、左のように裏からピンクの布で裏打ちしてあります。
色も白いところからグラデーションで?汚れてますし。
いやまぁよくぞここまで使ったものですわ。
以前、お茶をなさっておられる方から、お茶碗を包むのに、使い込んでとろけるようになった絹がほしい、
とご所望があり、胴裏につかわれていたものなど、もうヨレヨレの絹をお譲りしたことがあります。
これはねぇ…タシカニ、優しく包むにはいいかもの手触りですが…この汚れとツギではねぇ…。
我が家の使わなくなった「どんぶり」かなんか包んで、床下収納に入れますかね。
不思議に思います。
ここまで薄くなるほど着こんであると
体に馴染むんでしょうね。
海といわれても、違和感ありませんしねぇ。
もうシナシナを通り越して、
さわっただけで切れそうです。
質の悪い生地の部分もあって、
それは逆にゴワゴワで紙みたいです。
着込んだんでしょうねぇ。