ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

被衣(かつぎ)

2005-11-05 00:27:24 | 着物・古布

着物を着られる方なら、1枚目の写真をご覧になって
「あれっ?なんかヘン」と思われるでしょうね。
そうです、着物をこういう形に広げた時、衿はここにきません。
(わかりやすいように衿を裏側に折り返しました。赤いところです)
もっと上、肩線に衿が乗りますね。このまま着ると、背中があまっちゃいます。
これは「かつぎ」と呼ばれるもので「着る」ものではなく「被るもの」です。
それで漢字では「被衣」と書きます。
頭からスッポリかぶって、衿を持って顔が隠れるようにするわけですが、
普通の着物でこれをやると、背中のあたりに頭がはいり、袖が顔の前両脇に
かぶさってジャマになります。おまけに後ろの裾は持ち上がってしまいます。
それを考えてかつぎは作られたわけで、頭の入る分、袖と肩線を後ろにしたことで
被ると袖は耳の横あたりに下がるのでジャマにならないし、後ろのすそ線も
あがりません。とてもきれいなカタチに着られるわけです。



2枚目が、着用したところ、ではなく「きっとこんなふう」の写真です。
「こんなふう」というのはモデルが・・ウチの扇風機なもんで・・。
季節も終わり、しまいこむ前にもうヒトシゴト、と頼んでみました。
こころよく引き受けてくれたのですが、そのままかつぎを掛けると
どうもサマになりません。そこで後ろ向いてもらってモーター部分が
手の位置、アタマは後ろ向きの本体・・ということになりました。
袖がちゃんと後ろの方にズレているのがおわかりでしょうか。
ちなみに、モデルのギャラは「オソージと潤滑油少々」でした。

かつぎはかなり古くからあって、女性はカオを見せないということにおいても
すっぽりかぶるこのかつぎは、貴族の女性にとって必需品でした。
鎌倉時代くらいの女性は、近いところはこの「かつぎ」で、少し遠いところは
「市女笠」というのを使いました。別名「虫の垂れ絹」といいます。
ちょっと脱線しますが、市女笠というのは、時代映画などでもみかけます。
てっぺんがちょっととんがった大きな麦藁帽子・・といった形で、
笠の周りには上布か絹の薄いものをぐるりと暖簾のように垂らしてあり、
そこに8本の「総角(あげまき)」を垂らします。
「あげまき」というのは紐の結び方のひとつで、平安時代は几帳や調度品、
檜扇の飾りなどにも盛んに使われました。
ところで、なんでのれんみたいにぐるりと布をたらしていたか、
その名のとおり「虫」よけでもあったんですね。

はい、かつぎに戻ります。江戸時代髪型もも多様化し、髪型にあわせて
便利な被り物もいろいろ出てきましたが、かつぎもずっと使われました。
かつぎは被るものですから、素材は薄い上布や絹です。
ふわふわと軽くて、ちょっと使ってみたい気もしたり・・・。
でも、両手はずーっと上で疲れそうだし、両手使ったら荷物持てないし、
なにより「隠していた顔を、いずれさらすのがコワイ?」・・。


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4 コメント

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相変わらず ()
2005-11-07 00:11:18
相変わらず博学なとんぼさん



着物をひょいと覆った訳ではなく、

用途に分けて別誂えだったのですね。



鉢かつぎ姫という話。

歌舞伎の舞台での情景。

絵本の世界。

五条の橋の上の牛若丸も・・・かつぎ?
返信する
それ、私も考えたんですよー (とんぼ)
2005-11-07 00:47:01
♪京の五条の橋の上~の牛若丸が被っていたのは

かつぎか、それともただの着物か・・。



実は、今かつぎとしてよく見るものは、共通して

地色が黒、茄子紺などの濃い色(たぶん透けて

見えるのをふせぐためかなと・・)で、

写真にあるように、真ん中部分が白く抜けていて

そこに絵があるんですが、たいがいは「風景柄」。

上の写真のも「松並木」です。周りの風景に

同化しようという思い??

いずれにしてもあの時代のかつぎもジミだったのか

それとも、美しい薄絹だったのかな・・とか、

絵本では牛若丸は「お稚児髷」ですが、

カレは「僧侶」になるためにお寺に入ったんですから

「稚児髷」ってのはどうかなーとか、

もしそうだとしたら、かつぎであれ小袖であれ

かぶってもあの髷の「わっか」に引っかかって

手で持ってなくても笛ふけただろうな・・とか。

こうなると情緒も何もありゃしない・・。

絵本で時代考証してもはじまりませんねぇ。

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かつぎ (けに)
2010-10-15 13:56:02
かつぎの説明がすごくわかりやすくて参考になりました。

扇風機様お疲れ様です。
返信する
Unknown (とんぼ)
2010-10-15 16:07:40
けに様

お役に立ててなによりです。
扇風機は、今年もがんばってくれましたです!
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