別サイトで「ゴブラン織り」のお話が出ました。トップは母の手作りゴブランバッグ。
形見にもらったものですが、ちょっとジミ…かな?
「ゴブラン織り」と検索すると「つづれ織り」と出てきます。
着物好きの人間は「つづれ」と言ったら「本綴れ」「爪掻つづれ」、あの高級な帯を思い出します。
というか、それしか思い出さない?あははですが、そうですよね。
でも、つづれ織りって何か、というと「平織で緯糸に色糸を使って柄を織り出したもの」の総称なんです。
つまり、普通に締めている西陣の袋帯も、オシャレなゴブラン織りのバッグの生地も、
1日に3センチ5センチしかおることができない爪掻も、みんな「つづれ織り」なのです。
たまたま日本では「つづれの帯」という、たいへん手の込んだ美しいものがあるために
つづれといえば「本つづれ」になっていますが、実際には「つづれで柄を出してるもの全部」…ということです。
では、色糸で柄を出すとはどういうことか…毛糸編みで考えるとわかりやすいと思います。
一色の糸で、いろんな編み方を駆使して編むのは「地模様が柄になる」、例えばアラン模様。
また単純な表編のみだけど、色糸を駆使して柄をだすのは「編みこみ」ですね。
つづれはこの「編みこみ」にあたるわけです。
毛糸で編みこみ模様を編むと、色がかわったところで、それまでの糸は下に下げます。
次にその色糸を使うときは、編まなかった分、裏に糸が渡ります。
編み物の場合は、セーターなどだと、そこにボタンが引っかかったりしますから、
あれこれ工夫して、渡り糸ができるだけ邪魔にならないように始末します。
帯の場合、袋に仕立てるなら裏が見えるわけではありませんから、そのままでも問題ありません。
例えばこの帯、未仕立て、ごく普通の織り帯。貝の柄は8センチくらいですか。
これの裏側はこんな感じ。糸いっぱい渡ってますね。
つまり「渡り糸の始末は特別しない」です。
こちらはゴブラン、トップの母のもので、表と裏を見るとこんな感じ。裏側、糸はきれいに始末してありますね。
ちょっと話はそれますが、ゴブランは元々ヨーロッパのフランドル地方(英語だとフランダース、わかりやすいでしょ)
国ではなく「地方」ですが、なにしろあの辺りは何百年という歴史の中で何度も「トップ」がかわり、勢力地図も変わっています。
今でいうならオランダのはしっことフランスのはしっこと、ベルギーのはしっこと…みたいな感じの地域です。
そこでは元々毛織物が盛んでした。つまり「羊を飼うことが盛んだった」ということですね。
その毛織物が、パリでどんどん洗練されて「ゴブラン兄弟」の工房の製作するものが絶賛され、
王室御用達にもなりました。もとは一地方のものだったものが、中心部のゴブランの名前でよばれるようになり、
今に至るわけです。その後、ルイ14世が「国営にする」とゴブランの名前ごと「国営工房」にしてしまいました。
今でも「国立ゴブラン織物工房」として稼働中、最近になって工房見学のツアーもやっているそうです。
ちなみにパリ13区、ゴブラン通りのまんなか…。
時間をかけて洗練されたゴブラン織りは、タペストリー(タピスリー)として大きなものも織られ、
石造りの建物の壁にかけられ、冷気を防いだり、豪華な装飾品となったりしたわけです。
これがやがて日本にも伝わりました。南蛮貿易盛んなころです。
祇園祭の山鉾の飾りには、この当時のタペストリーが多数飾られています。
さて、このほかにもつづれ織りとして耳にするのは、キリム、ギャベッジなど…カーペットや絨毯で有名ですね。
キリムは今のトルコが中心、ギャベッジはイラクあたり、つまり中近東です。
こちらの柄は、なんといいますか…ゴブランの絵画のような柄ではなく、素朴で民族的な幾何学模様が中心。
こんな感じ。
キリムなどは、元は遊牧民の織物です。遊牧民は定住しませんから家財道具一式持って移動する…
そういう暮らしの中では「織物」は大切な「家具」でもありました。
丈夫で、厚手で、そして美しいこと…それを作るのは女性の仕事です。
つづれ織りは色糸で柄を出しますが、カーペットなど、敷いたり丸めて運んだりするものにとって、
それは弱点となります。そこで「裏に糸が渡らない方法」を考えました。
それが「柄の部分は柄の部分で糸をUターンさせる…です。つまり柄糸はそれぞれに「突合せ」になります。
そのままだと柄糸の際が穴が開いてしまいますから、こんな感じで…これはネットからお借りした画像です。
うまくからませて、アナが開かないように、そしてきっちり柄になってしっかり仕上がるというわけです。
赤で囲ったところが、柄のつきあわせになる部分。そうやってしっかり織ると…右のようになるわけです。
こちらもネットからお借りした画像です。
これはキリムを織っているところ。柄ごとに織っているのがわかりますね。
日本の場合、絹糸ですから糸が細く、羊毛の場合のような始末は、なかなか大変です。
そこで織機を使って織ってきたわけですが、かつては大掛かりな機を使って、二人がかり三人がかりで
たいへんな労力と時間をかけていました。そのため高価でしたし、あまり複雑なものは織れませんでした。
明治の初めころにフランスでジャカールという人が機械でつづれを織ることに成功し、
その機械が日本にも入り…西陣あたりでは大正期にそれが使われるようになったそうです。
ジャカールさんが作ったので「ジャカード織り」、今はいつの間にか「ジャガード織り」と言われていますが、
名前からすれば「ジャカード」が正解。私も以前は「ジャガード」だと思っていました。
この機械のおかげで、帯制作は重労働から解放され、複雑な柄もOK、短時間での製作も可能になりました。
ただし、この機械は、裏側に糸が渡る織りです。つまり、普通の西陣織、ですね。
そこで、細い糸を、まるでキリムなどのように、裏も表も同じ柄になるように、細かい作業をして織るのが、
「本つづれ」、さらに爪の先をのこぎりのように目立てして、それで織ったところを掻きよせて、
しっかり目を詰めて織るのが「爪掻きつづれ」です。今まさに「爪」で掻きよせているところ。
つまり、つづれ織りというのは、いろんな方法で裏の糸の始末を考え、目的にあったものを作ってきたんですね。
このほか、絨毯も「色糸で柄を出す」ということでは「つづれ織り」に入れられていますが、
絨毯(毛足のあるもの)の場合は、縦糸と緯糸の交差する点に、糸を特殊な結び付け方で結び、
糸をカットします。このカットした糸を仕上がりで切りそろえると、あのフカフカ絨毯になります。
織機には垂直織機と水平織機がありますが、私たちが「反物」で見慣れているのは水平織機。
これは縦糸が織り手から見て水平に寝ているもの。これだと、横から「杼(ひ)」を滑らせて織りますから、
あまり幅の広いものは織れません。垂直織機は、縦糸を上から垂直にたらし、
キリムなどの場合は、柄ごとに色を変えればいいわけですから、幅の広いものも織れます。
ゴブランも大きいものは垂直で織ります。
ただし、糸の始末をいちいち裏側に回ってするのは大変ですから、最初から「裏を見ながら」織ります。
国立ゴブラン織り工房の紹介写真からお借りしました。こんな感じ。
そして、垂直水平の違いはあっても、つづれ帯の本つづれも、細かい作業は裏側になりますから「裏を見ながら」織ります。
ゴブランも、本つづれも、裏から織って、時々織りあがりをみるため鏡を置いています。
上の写真、右側にあるのが鏡で、写っているのは「出来上がりつつある表側」です。
今は機械化で、すべてを機械がやるものもたくさんありますが、やはり「人の手」というものは、
なくなってほしくないですね。本綴れの帯などは、いくら同じ図案を置いて織っても、こまかいところのニュアンスなど、
織り手によってかわったり、細かいところの始末なども変わってくるので、同じものはふたつとないそうです。
手間がかかることが、なにかと敬遠されますが、国立ゴブラン織工房では、若い人もたくさんいて、
伝統技術を学びつつ、新しいデザインなども研究しているとか。
日本にもそういう「バックアップ」がほしいですねぇ。
二度もコメントいただいているのに、
おそくなってすみません。
おかげさまで雪もすぐに消えましたが、寒暖の差で、
息子がおなかに来たりでバタついておりました。
世界中にはいろんな織物染物があり、
衣装を見ているだけでも楽しいです。
物が豊かになった日本では、使い捨てかそれに近いことが
当たり前になってきています。
絹物がどれだけ手間がかかっているか、
そういうこともわからなくなっていますからねぇ。
もったいないことです。
たいへん遅くなってすみません。
唐織、これはまたちょっと説明が難しいので、
お預かりということにさせてください。
ちゃんと書きますので、お待ちくださいね。
たいへんおそくなってすみません。
ちとバタついておりました。
絨毯は裏を見て買う。というのは本当のことです。
ただし、見てわかる眼を持たねばなりませんけれど、
機械織りと手織りは価格で歴然です。
房はあとから付けたものもあるといいますよ。
まぁ私なども刺繍もできない方ですから、
ダメでしょうねぇ…。
南国も雪積もりましたよ。
今はもう解けちゃいましたけどね。
先週病院へお薬貰いに行ったら、その多いこと。
雪降らないうちにと。考えることみんな一緒だわ。
インフルエンザはピークだって。
出来るだけ人混み避けています。
そちらはどうでしょうか。
ジャガードもジャカードとは。
とんぼさん 博識~。
いつも勉強になります。とんぼさん。
数年前、ゴブラン織りのバック買ったのです。
テディベアの柄です。
歳に似合わないかなと思ったのですが、余りに可愛くて♪
たまに電車でとかで、ジッ~と見られることがあります。
小さいからぱっとみわからないのかも。
それがまた楽しい♪
今夜から寒くなるんだって。
南国も雪予報です。
とんぼさん 気をつけてね。
また色々教えてください。
先日友人が着物少し処分したんだって。
子供も着ないし、良い物ならともかく普段着だしリサイクルショップで数百円で買ったもの。
そしたら、どこかの学校で女子学生に着付けを教えてるらしいの。
おかあさんの着物とか持参なんだけど、持ってない人いるんだってさ。
昔だったら嫁入りのときに色々持たせたものだったのにと話かたでした。
びっくりしました。全く別物と思っていました。
なるほど、なるほどですね。
以前ゴブラン織りという帯を手に入れたことがあったのですが、一寸イメージと違ってゴブラン織ってどういものなんだろうと思っていました。キリムも仲間なんですね。
帯ではよく唐織というのも見かけますが、これはどういものでしょうか?
次回ぜひご教授ください。
織物は裏を見るとそのちみち差?価値?がわかると昔々、母が言っていたのを思い出します。
まぁ、絨毯屋の受け売りでしょうけれどねww
しかし、こうしてする織り糸の始末、
目の焦点の合わせることが出来ず?拡大鏡のすごいのがないと。。出来そうにない。。
あっても、私のブットい指では難しい。。。ですね( ゚Д゚)