ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

きものばなし素材…追記

2010-10-16 03:44:28 | きものばなし
まず絹のお話しですが、先日うれしいメールをいただきまして、
私の疑問にお答えをいただきました。あの「紙貼りの蚕カゴ」です。

私の疑問は「蚕は清潔を保つために、カゴはいつもきれいにしておくのに、
また終わったら全部洗うのに、紙を貼っているのはナゼだろう」でした。

これはひとつ忘れていたことがあります。「排泄物の掃除」といいますと、
ビロウですが「糞尿」になります。でも蚕って営繭の直前になるまで、
「小」の方はしないのです。つまりフンのほうだけ。
そしてそれは払って落とせるわけです。
藁や筵では、その隙間にフンや食べ残しが入り込みますから、
掃除も大変なわけですが、紙を貼っておけばひっくり返して
掃くなり、たたくなりで、みんな落ちるんですね。
きれいにすると言っても、消毒剤まいて無菌にするわけではありませんから、
それだけで、清潔に交換ができたわけです。

時代が古いほど、庶民が「反故紙」であっても「紙」を簡単に手に入れらませんでしたから、
豪農の家庭くらいしか、紙は使えなかったと思います。
あの反故紙も、内容は大福帳のようでお金の単位が「銭」のようでしたから、
たぶん明治か大正だと思います。やっと誰もが使えるようになったころかもしれません。
そして「カゴの洗い」ですが、和紙の場合は天日干しで十分だったそうです。紫外線殺菌ですね。
あらためてカゴをよく見ると、なるほどシミと言っても「水分」、
つまり「尿」のようなシミはなく、いわゆるホコリ汚れなどで
「汚いなぁ」というところはありませんでした。大事に大事に使ったのでしょうね。

もうひとつ「カゴ」には丸と角があるのですが、
使い分けは「飼う蚕の数」によるのかなと思っていました。
角の方はかなり大きく、蚕と桑を入れたまま一人では持ち上げて運ぶのは
ちょっと無理だろうと思いましたので、大人数でたくさん飼うなら、
角型の方が効率がいいし…と。
教えていただいたのは「カゴ」の使い方でした。棚に丸カゴをおいて飼うと、
例えば桑の食べ具合とか、偏りを調べる場合にカゴをクルクルまわせば、
一人でも世話がやけるわけです。なるほどです。
蚕の数、というより、その家々の都合や広さで使い分けしていたのかもしれません。

またひとつ詳しいことがわかって、うれしいことでした。

文章ばかりではつまらないのでここでハギレを…。
着物にはあまり見ない「緑」の地色のちりめん着物。
ほんとに緑色は少ないです。ちょっと着づらい色ではありますね。
これは女の子のきものです。華やかですね。こういう柄はもうありません。
復活してほしい柄だと思っています。


  



絹や木綿の歴史みたいなものをおおざっぱに書くと、
「~から伝わった、日本でも栽培が盛んになった、みんな着るようになった」と
こんな感じの流れなのですが…これだけ読むと、
「最初は外国からの輸入でまかなっていたが、自国で栽培が可能になって、
自給できるようになった」…みたいに感じます。
でも、実は絹も木綿も、栽培が進んでもけっこう輸入しているんです。
先日ご紹介した「絹と木綿の江戸時代」という本は、てっきり「衣類の変遷」に関わる本だと思ったら…
実は「繊維の動き」についての細かい記述が本筋でした。

どこの国で何がつくられ、どれくらいはいってきたか…などです。
それによりますと「西陣」が絹織物の中心になったのは応仁の乱以降、つまり1500年ころですが、
すでに国内では絹は作られていたのに、当時の西陣が使っていた絹は「輸入物」ばっかり。
以後200年近く、ほとんど国内産は使っていないのだそうです。えぇぇーっと思いますよね。
でも、実は当時「養蚕」をする人たちは、それぞれの地方で真綿を取ることが多かったそうです。
つまり「紬糸」ですね。今のように情報がなく、また流通ということが確立していませんでしたから
京都には入らなかったわけです。西陣は都の織物で、上質の絹が必要ですから、
結局ほとんどが、輸入絹…なんだ…今と同じじゃないか…です。

ここでまた一枚、私が大好きな色柄の、これは「錦紗」です。
「振々毬杖(ぶりぶりぎっちょう)」と「軍配」、
振々毬杖は、日本のポロゲームと言われています。ポロは馬ですが、こちらは自分の足で走る…。
「蹴鞠」はサッカーのリフティングだし、人間のやることって結局にたようなものなんですね。


       


さて、まだ「こぼれ話」的なお話しはいろいろありますが、
また順次こんな形で書けたらいいなと思っています。


トップ写真は、これもハギレのとてもハデなもの。かなり大柄です。

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6 コメント

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Unknown (とんぼ)
2010-10-19 09:34:22
古布遊び様

つい現在の情報を元に考えてしまうと、
全国的に…なんて思いますが、
昔は隣の国(県)に行くのも、難しかったわけですし、
流通って面白いものだと思います。
いまや、飛行機でぴょーんと、よその国任せになってる…。
なんかおかしいですね。
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Unknown (古布遊び)
2010-10-18 20:33:20
絹のお話も興味深く読ませていただきました。
西陣の絹のお話はびっくりです。
そういうものなのかあ~~と。。。
なんだか不思議な話ですね。
よくわからないで自分が当然と思っていたことも案外違うことがあるものなのですね。

返信する
こちらこそ (とんぼ)
2010-10-17 04:09:45
かい子様

はじめまして。
コメントありがとうございます。

ほんとに緑色は少ないです。
きれいな色なんですけどねぇ。

昔のもののデザインや色柄は、今でも十分
通用するものと思います。
日本人の美的感覚や感性って、素晴らしいです。

こちらこそ、今後ともよろしくお願いいたします。
返信する
Unknown (とんぼ)
2010-10-17 04:07:09
陽花様

いまや国産の絹がどーーっと減ってます。
なんで安いからと外国に頼るんでしょ。
職人や、農業、技術者を大切にしない国です。
先々が心配ですね。
返信する
はじめまして (かい子)
2010-10-17 00:49:18
紅絹を調べていてこちらを知りました。
知らないことをいっぱい教えていただいています。

緑色の着物は少ないですね。
世田谷のボロ市で探していたら『緑は出したら直ぐ売れちゃうよ』とお店の人に言われました。

綺麗な柄にもうっとりしています。
日本人のデザイン力は素晴しいですね。
古くなって色褪せたり、黄ばんだりしているのもまた素敵だと思います。

これからも宜しくお願いします。

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Unknown (陽花)
2010-10-16 22:59:58
西陣織の絹糸は輸入ものなんですね。
外国産の方がすぐれているとは、ちょっと
情けないような気もしますが、お蚕さんを
飼っている所が少ないんじゃ仕方がないの
かもしれませんね。
返信する

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