(写真:新幹線福井駅部高架橋、2009.3)
JR福井駅東に隣接する、北陸新幹線の福井駅部高架橋。2005年6月に起工して約3年8ヶ月、今年2月末に完成し、3月5日に福井県庁にて完成報告が行われた。今回完成した福井駅部高架は800mあり、事業費は51億円(当初81億円だが、工法変更などで30億円圧縮。地元負担も10億円軽減)。独立行政法人の鉄道建設・運輸施設整備支援機構が工事を請け負った。
新幹線福井駅部の完成により、福井県は今後、金沢~福井駅間と敦賀駅部の認可・着工の早期実現に向け、強く要望していくそうである。3月26日には、北陸新幹線が福井駅まで開業することにより、年間80億円の経済効果があるとの試算を公開している(なお、敦賀駅まで開業なら年間150億円)。なお、県内流入分から県外流出分を差し引いた試算額である。県ではこれらの裏づけを元に、間を置かず福井県内までの早期の開業を実現するためにも、国への働きかけが今後も展開していくことだろう。
しかし、新幹線高架については、北陸新幹線の延伸よりも深刻な問題がある。
北陸新幹線福井駅部高架橋は、北陸新幹線が延伸するまでの間、私鉄のえちぜん鉄道が暫定利用することとなっている。えちぜん鉄道については、高架への乗り入れを見据え、すでに本社と車両基地の移転・新築が完了している。しかし、えちぜん鉄道の路線をどう高架に乗り入れさせるか、その方法がいまだ定まっていない。
乗り入れ計画の前提についても問題がある。えちぜん鉄道が新幹線高架を暫定利用する場合、福井駅部の構造から、新幹線は開業時に単線乗り入れである必要がある。ただ、単線開業についてJRが認めるかは、現時点で不透明であるという。
新幹線が福井駅まで開業される頃、計画では以下のような路線編成になる。
・新幹線高架
> 北陸新幹線(単線)
> えちぜん鉄道(単線、勝山永平寺線のみ乗り入れ)
> 在来線リレー特急(単線、えち鉄路線の南側から乗り入れ)
・在来線高架
> 並行在来線(複線)
新幹線が単線開業したとしても、まだ問題はある。新幹線開業後、敦賀方面への新幹線延伸に伴い、えちぜん鉄道の路線は新幹線高架からJR福井駅(在来線)高架に移される計画となっている。この場合、えちぜん鉄道の在来線高架への乗り入れ部分の設置、および新幹線高架の改造(えち鉄旧乗り入れ部分)が必要となる。新幹線高架の改造に至っては、えち鉄乗り入れ部分の高架支柱を継ぎ足す必要がある他、新幹線運行の中での高架改造を行わなければならない問題がある。
こうして敦賀方面へ新幹線が延伸される頃、福井駅では以下のような路線編成になる計画である。
・新幹線高架
> 北陸新幹線(複線)
・在来線高架
> 並行在来線(複線、えち鉄乗り入れのため北側で一部単線)
> えちぜん鉄道(単線、勝山永平寺線のみ乗り入れ)
※並行在来線とえち鉄は電化方式・電圧とも異なり、路線共用は不可能
これらの計画で問題となる点は
○えちぜん鉄道の高架乗り入れ方法(新幹線高架、および在来線高架への移設)
○新幹線高架の改造(えち鉄移設後)の問題(二度手間)
○計画完了後の、並行在来線の単線化の問題(旅客・貨物輸送への影響)
当初は3階建てで新幹線駅部を造る計画であったが、「建設コスト」の面で2階建て構造へと変更された。しかし、いざ工事を進めてみれば、特にえちぜん鉄道の乗り入れに関して種々の問題が出ている。また2階建て構造への計画変更当初から、並行在来線の一部単線化の問題が出ている。
県の計画通り、当初計画よりも建設コストが少ないとしても、10年(予定)という短期間で、えちぜん鉄道の乗り入れスロープの設置と付け替え、および一部支柱の継ぎ足しを行わなければならない事に関しては、非常に工事の手間と無駄を感じる。また県の試算通り、福井までの新幹線開業で多くの経済効果が見込めるとしても、新幹線の敦賀方面延伸以降は、並行在来線の一部単線化で旅客・貨物に影響が出る可能性が高く、近隣(JR福井駅以北)への移動に不便が生じることに、不満を感じる。旅客に関しては新幹線で代替できる駅も少々あるが、在来線と同じ数の駅があるわけでなく、明らかに不便であるだろう。また代替のきかない貨物に関しては、運行計画に支障が出る可能性がある。
建設コスト縮減のために構造変更を行った新幹線福井駅部。しかし、新幹線・並行在来線・えちぜん鉄道の路線の扱いに関して、多くの問題が残されている。現在の新幹線高架を3階建てに直す方法も考えられるだろうが、国の認可を得て工事を行っている以上、恐らく行えない。県では新幹線の早期延伸に向けた活動が一層強まるだろう。しかし現計画で予定している、えちぜん鉄道の乗り入れさえ実現していない現状を見ると、今回の工事は「勇み足」ではなかっただろうか、という気がしてならない。えちぜん鉄道の乗り入れが進まなければ、現えち鉄福井駅の撤去と福井駅東口広場の残りの整備、県の予定しているえち鉄三国芦原線のLRT化、そして福井駅西口広場への延伸…、と、福井駅周辺の整備事業にも悪影響を及ぼす。
個人としては、現在の計画に納得していない。将来の福井の発展に支障が出ないよう、(たとえ現計画を推し進めるとしても)改めて見直すべきではないかと強く感じる。新幹線だけが映え、その他が不便になるのでは、新幹線を通す意味が無い。現在の使われていない新幹線高架が、将来の福井の姿とならないことを願う。
・参考:福井新聞「フォーカス福井」(2009/3/6付紙面)
JR福井駅東に隣接する、北陸新幹線の福井駅部高架橋。2005年6月に起工して約3年8ヶ月、今年2月末に完成し、3月5日に福井県庁にて完成報告が行われた。今回完成した福井駅部高架は800mあり、事業費は51億円(当初81億円だが、工法変更などで30億円圧縮。地元負担も10億円軽減)。独立行政法人の鉄道建設・運輸施設整備支援機構が工事を請け負った。
新幹線福井駅部の完成により、福井県は今後、金沢~福井駅間と敦賀駅部の認可・着工の早期実現に向け、強く要望していくそうである。3月26日には、北陸新幹線が福井駅まで開業することにより、年間80億円の経済効果があるとの試算を公開している(なお、敦賀駅まで開業なら年間150億円)。なお、県内流入分から県外流出分を差し引いた試算額である。県ではこれらの裏づけを元に、間を置かず福井県内までの早期の開業を実現するためにも、国への働きかけが今後も展開していくことだろう。
しかし、新幹線高架については、北陸新幹線の延伸よりも深刻な問題がある。
北陸新幹線福井駅部高架橋は、北陸新幹線が延伸するまでの間、私鉄のえちぜん鉄道が暫定利用することとなっている。えちぜん鉄道については、高架への乗り入れを見据え、すでに本社と車両基地の移転・新築が完了している。しかし、えちぜん鉄道の路線をどう高架に乗り入れさせるか、その方法がいまだ定まっていない。
乗り入れ計画の前提についても問題がある。えちぜん鉄道が新幹線高架を暫定利用する場合、福井駅部の構造から、新幹線は開業時に単線乗り入れである必要がある。ただ、単線開業についてJRが認めるかは、現時点で不透明であるという。
新幹線が福井駅まで開業される頃、計画では以下のような路線編成になる。
・新幹線高架
> 北陸新幹線(単線)
> えちぜん鉄道(単線、勝山永平寺線のみ乗り入れ)
> 在来線リレー特急(単線、えち鉄路線の南側から乗り入れ)
・在来線高架
> 並行在来線(複線)
新幹線が単線開業したとしても、まだ問題はある。新幹線開業後、敦賀方面への新幹線延伸に伴い、えちぜん鉄道の路線は新幹線高架からJR福井駅(在来線)高架に移される計画となっている。この場合、えちぜん鉄道の在来線高架への乗り入れ部分の設置、および新幹線高架の改造(えち鉄旧乗り入れ部分)が必要となる。新幹線高架の改造に至っては、えち鉄乗り入れ部分の高架支柱を継ぎ足す必要がある他、新幹線運行の中での高架改造を行わなければならない問題がある。
こうして敦賀方面へ新幹線が延伸される頃、福井駅では以下のような路線編成になる計画である。
・新幹線高架
> 北陸新幹線(複線)
・在来線高架
> 並行在来線(複線、えち鉄乗り入れのため北側で一部単線)
> えちぜん鉄道(単線、勝山永平寺線のみ乗り入れ)
※並行在来線とえち鉄は電化方式・電圧とも異なり、路線共用は不可能
これらの計画で問題となる点は
○えちぜん鉄道の高架乗り入れ方法(新幹線高架、および在来線高架への移設)
○新幹線高架の改造(えち鉄移設後)の問題(二度手間)
○計画完了後の、並行在来線の単線化の問題(旅客・貨物輸送への影響)
当初は3階建てで新幹線駅部を造る計画であったが、「建設コスト」の面で2階建て構造へと変更された。しかし、いざ工事を進めてみれば、特にえちぜん鉄道の乗り入れに関して種々の問題が出ている。また2階建て構造への計画変更当初から、並行在来線の一部単線化の問題が出ている。
県の計画通り、当初計画よりも建設コストが少ないとしても、10年(予定)という短期間で、えちぜん鉄道の乗り入れスロープの設置と付け替え、および一部支柱の継ぎ足しを行わなければならない事に関しては、非常に工事の手間と無駄を感じる。また県の試算通り、福井までの新幹線開業で多くの経済効果が見込めるとしても、新幹線の敦賀方面延伸以降は、並行在来線の一部単線化で旅客・貨物に影響が出る可能性が高く、近隣(JR福井駅以北)への移動に不便が生じることに、不満を感じる。旅客に関しては新幹線で代替できる駅も少々あるが、在来線と同じ数の駅があるわけでなく、明らかに不便であるだろう。また代替のきかない貨物に関しては、運行計画に支障が出る可能性がある。
建設コスト縮減のために構造変更を行った新幹線福井駅部。しかし、新幹線・並行在来線・えちぜん鉄道の路線の扱いに関して、多くの問題が残されている。現在の新幹線高架を3階建てに直す方法も考えられるだろうが、国の認可を得て工事を行っている以上、恐らく行えない。県では新幹線の早期延伸に向けた活動が一層強まるだろう。しかし現計画で予定している、えちぜん鉄道の乗り入れさえ実現していない現状を見ると、今回の工事は「勇み足」ではなかっただろうか、という気がしてならない。えちぜん鉄道の乗り入れが進まなければ、現えち鉄福井駅の撤去と福井駅東口広場の残りの整備、県の予定しているえち鉄三国芦原線のLRT化、そして福井駅西口広場への延伸…、と、福井駅周辺の整備事業にも悪影響を及ぼす。
個人としては、現在の計画に納得していない。将来の福井の発展に支障が出ないよう、(たとえ現計画を推し進めるとしても)改めて見直すべきではないかと強く感じる。新幹線だけが映え、その他が不便になるのでは、新幹線を通す意味が無い。現在の使われていない新幹線高架が、将来の福井の姿とならないことを願う。
・参考:福井新聞「フォーカス福井」(2009/3/6付紙面)
福井延伸だけで考えれば、関西も関東へも乗り換えが不要で関東へは念願の直通時短効果で大変便利だと個人的に思います。福井駅以北への移動に関してですが、えち鉄、バスも存在していますし、自家用車での移動で十分だと思います。福井県に関して言えば通勤通学以外に在来線を利用して近隣に移動する人達がどれだけいるのか疑問に思っています。でなければJRによって大幅な在来線の本数削減などなかったはずだと思います。
いづれも個人的な意見で間違いがありましたらすみません。ただ新幹線の延伸がない、このままの状況は絶対に福井県にとってはプラスにならないと思います。
今は良いですが、生活のレベルが何年もかけて序じょに悪く(他地域との格差)なっていくだだと思います。
この度は貴重なご意見を頂き、有難うございます。以下、コメントに対しての返答を記載いたします。
・福井駅部のえち鉄乗り入れの扱い
えちぜん鉄道(えち鉄)の乗り入れに関しましては、当初の新幹線駅が3階建て構造で計画され、京福電鉄(現:えち鉄)が2階に乗り入れる予定であったことからも分かるとおり、えち鉄乗り入れ・高架化が新幹線予算から賄われるものであるということは十分承知しております。また新幹線の単線乗り入れに関しましては、線路容量の関係から新幹線高架にえち鉄と新幹線の両方を乗り入れさせた場合にそうなる、ということが示されていますが、確かに現在におきましても、JR側から了承を得た正式計画ではありません。(当記事でこれらの事項に触れていないために誤解を与えました事に関しまして、深くお詫び申し上げます。)
・福井駅北の一部で単線になることに関して
在来線が一部単線化で不便になろうが、えち鉄、京福バスで十分カバーできるのであれば、それに関して私が意見する立場にはありません(福井駅以北の交通に関しては、私は詳しくありません)。一戸当たりの自家用車台数が日本一である福井において、自動車で移動すれば良いというお考えに対しても、私は反論できる十分な要素を持ち合わせておりません。JRの昼間時間帯の普通列車本数の削減も挙げられるでしょう。貨物事業への影響があるかもしれませんが、普通列車を減らしても県民の生活に全く支障が無いとするならば、反対はいたしません。(一方で、それならば福井県として公共交通を守る必要はなく、例えば岐阜県のように積極的な車社会の推進を行えば、とも思うのですが…。)
・新幹線延伸による他地域への利便性に関して
北陸新幹線により、路線が確定している東京・関東圏へは特急の乗り換えなく移動でき、特急で米原に行き、新幹線へ乗り換える現状よりも、改善されることでしょう。一方、大阪・関西圏に関しては、敦賀以西で路線(若狭・湖西・米原ルート)が確定していない現状においては、コメントを差し控えたいと存じます。名古屋・中京圏へは、敦賀以西のルートにも依りますが、こちらは乗り換えが必要となるのではないでしょうか。新幹線開通後も「しらさぎ」のような北陸~中京間の移動手段があれば良いのですが、並行在来線が経営分離される場合、特急存続が期待できません。中京圏(愛知・岐阜)と関わりのある企業・大学が福井県内に少なくないことから、新幹線延伸後の利便性確保が望まれます。
・新幹線と福井県の発展
新幹線延伸が金沢で中断した場合、例えば関東圏の利用客が金沢・富山に直接新幹線で移動するが、乗り換えの必要な福井へはさほど来ない、ということは考えられないことではありません。
私自身は、新幹線延伸に関しましては「消極的賛成」の立場です。すぐさま開業せよ、というほど積極的でないが、他の県民が望むなら反対しない、との考えです。私は専門家でもありませんので、建設促進同盟会などのサイトを拝見しており、経済効果が高いことを伺っておりますが、新幹線を延伸すれば県民生活が飛躍的に向上する、延伸しなければ徐々に没落する、というお考えが今ひとつ理解できず、新幹線の必要性を見出せておりません。
私自身の立場はさておいても、新幹線延伸が必要不可欠であるというのであれば、県外との交流として今後「従来の特急」か「新幹線」のどちらが良いかを今一度県民に周知させることはいうまでもなく、県内の交通(並行在来線、えち鉄・福鉄(LRT化)、バスなど公共交通の在り方、自動車だけで十分か)のこれからを考えること、それ以前に福井県全体としてどうありたいかを今一度考える必要があるのではないでしょうか。新幹線とまちづくりをリンクしないという考え方もあるとは思いますが、福井駅前だけでも整備の進まない現状を目の当たりにしている今、新幹線整備で福井県全体が飛躍的に発展するとは、到底思うことができず、希望を持てません。
私は人口減少が始まる中に於いて、空港もない高速移動の手段に乏しい地域には今後、企業進出雇用増も交流人口の増大も、観光客増も街への投資も、発展も遅れるだけだと思っています。これは空港もあり道路整備が進み首都との直通電車をもつ石川や富山と比べて、またアメリカや発展途上国など世界的に新幹線を整備する状況にあることを考えての意見です。
今回は通りすがりの私のような者に、丁寧な熱意のこもった回答をして頂きまして本当にありがとうございました。
過去の日記も拝見しました、すばらしい内容でした。