テレビではグルメ番組が大流行。
「まいう~!」や「食材の宝石箱や!」といった決めゼリフも有名になりました。
最近は、若手お笑い芸人がグルメリポーターをしていることも多いのですが、「おいしい!」とか、
「うまい!」としかコメントできないと、スタジオから「ふつう~」「レポーター失格
」などと、
厳しいつっこみが入ります。
どうして、このコメントではダメなのか?
「美味しい」という結論しか言っていないために、どうして美味しいのかが聞いている人にまったく
伝わらないからです。
「鰹のだしがよく出ている。」「隠し味に入れたウスターソースが活きている」「舌に乗せた瞬間に
とろけてしまうくらい柔らかい。」「しゃきしゃきした歯ごたえがいい」「表面の焦げたところが香ば
しい」「わずかな塩味が甘さを引き立てている」とか、そういった具体的な事実の裏付けがないと、
誰も「美味しい」とは感じてくれません。
裁判の証人尋問も一緒です。
結論を聞くのではなく、事実を積み上げて、積み上げた事実たちに結論を語らせます。
例えば、殺意が問題となっている事件で、被告人は被害者と仲が良かったので、殺すまでの
ことは考えていなかったということを言いたい時に、
弁護士:「あなたは、被害者とはどのような関係でしたか。」
被告人:「親しく付き合っていました。」
弁護人:「親しくしていた被害者をどうして包丁で刺したのですか?」
被告人:「その時は、すごくなじられたので、思わずカッとなって脅してやろうと思って包丁を出したんです。そうしたら、被害者が向かってきて刺さってしまったんです。」
弁護人:「あなたは、被害者を殺そうとしたのではないのですか?」
被告人:「そんなことはありません。ずっと仲良くしてたんですから。」
という尋問をしたらどうでしょう。
被告人の言い分(結論)は出ていますが、具体的な事実による裏付けがないので、言い
放しで終わっており、少しも説得的ではありません。
事実を積み上げる。
例えば、こんな風にします。
弁護人:「あなたは、いつ被害者と知り合ったのですか?」
被告人:「5年前です。」
弁護人:「どこで知り合ったのですか?」
被告人:「そのころ、よく行っていた居酒屋です。」
弁護人:「どういう風にして知り合ったのですか。」
被告人:「居酒屋にテレビが付いていて、野球中継をしていたんです。それで、被害者も私も阪神ファンで、一緒に応援するようになって親しくなりました。」
弁護人:「あなたと被害者は、どれくらい居酒屋に行っていたのですか?」
被告人:「阪神の試合のある日は、ほとんど毎日行っていました。」
弁護人:「試合を見ながら、どのように過ごしていたのですか?」
被告人:「ひいきの選手を応援したり、やじったり。」
弁護人:「阪神が勝ったら、どうしてましたか?」
被告人:「二人で大声で六甲おろしを歌いました。」
弁護人:「阪神が負けたら、どうしてましたか?」
被告人:「監督の悪口を言ったりして、二人でなぐさめあってました。」
弁護人:「居酒屋以外には、被害者とどんなところで会いましたか?」
被告人:「甲子園に行ったり、サウナに行ったり、お互いの部屋に行って酒を飲んだことも何度もあります。二人で弁当を作って、花見に行ったこともあります。」
弁護人:「どんなお弁当を作ったのですか?」
被告人:「被害者がきんぴらゴボウが好きだというので、私が作って入れました。」
・・・・・ こうして事実を積み上げていけば、「仲が良かった」という結論を言わなくても、聞いて
いる人には、二人の仲が良さが伝わることでしょう。
結論や意見を押しつけるのではなく、事実を積み上げて、事実に語らせる。
グルメリポーターのみならず、人を説得するためにぜひ活用してみてください。
http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20120421_4.html