さあ、いよいよ、真面目な視察のスタートです。
最初の訪問先は、台湾の立法院(日本の国会)です。
弁護士でもあり、人権問題に取り組んでいる尤美女立法委員(国会議員)を訪問しました。
議員会館です。
(1)女性進出は台湾の方がずっと進んでいる!
死刑問題に入る前に、台湾の女性進出について教えてもらいました。
現在の台湾総統は蔡英文氏です。そう、女性。
2012年に女性として初の副総統になり、2016年からは総統です。
アメリカでもヒラリー・クリントンは初の女性大統領にはなれず、日本では女性総理はいつのことやら、
台湾では国会議員も女性が38%を占めているということ、日本よりもずいぶんと進んでいます。
(ちなみに我々視察団の女性比率も約38%でした。)
尤美女議員も、弁護士としては、台北弁護士会で初の女性理事長となり、以後、台北弁護士会では男性と女性が交替で理事長を務めるようになったそうです。
そして、台湾では同性婚を認める法律が成立しました。
そこでも、尤美女議員が尽力されたそうです。
尤美女議員です!
(2)死刑廃止と世論
「台湾は、国際的には公式な国家として認められておらず、国連にも加盟できない。
それゆえに、国連の人権規約を国内にも率先して取り入れ、海外の学者を招聘して学んでいる。
その結果、台湾政府としては死刑廃止の方針にある。
他方で、台湾世論は死刑存置が多数で、凶悪事件が起これば死刑を支持する声は強まるし、飲酒運転や児童虐待による悲惨な事件が起こると重罰化、死刑導入という意見も出てくる。
そこで、死刑廃止という基本的な方針ながらも、社会的な対立を生まないようにステップバイステップで死刑廃止の方向に向かっている。」
ということだそうです。
政治においても、総統は直接選挙で選ばれ、国会議員選挙も2年ごとに実施されるので、どうしても世論は気にしなければならないとのこと。
死刑廃止を言っていると、凶悪事件が起こったときに、「そんな甘いことを言っているからこんな事件が起こったんだ」とプレッシャーがかかり、
尤美女議員のところにも夜中に、一般市民から死刑廃止を非難する電話がかかってきたそうです。
(3)死刑廃止に向けて
台湾では、そんな世論に配慮しつつ、段階的に死刑廃止に向けて動いているということです。
その一つとして、「私たちと悪の距離」というテレビドラマが作られ、被告人と家族、被害者と家族、マスコミの問題が取り上げられ、死刑の問題を考えるきっかけになっているということです。
こんなドラマのようです。「我們與悪的距離」
また、代替刑についても議論されていて、人権規約違反にならないように終身刑を導入するにはどうすればいいか、終身刑になった後も3~5年に見直す制度であれば人権規約違反にならないのではないかといった見当も進めているということです。
被害者支援についても、現状はお金を渡しているだけでしかない。被害者遺族は「なぜ、こんな事件が起きたのか?」を知ることを一番に望んでいる。
そのためには、刑事司法手続への被害者参加や修復的司法を考えるべきであるという議論がされているということでした。
最後に、10年後、台湾には死刑はあるだろうか?と尋ねたところ、
「難しい質問だが、同性婚も立法化できた、死刑も必ず廃止できると信じている。」と言ってくださいました。
さあ、ここから視察がスタートです。
さらに、視察は続きます。