奈良に高野嘉雄さんという弁護士がおられました。
偉大な刑事弁護人でした。
古くは甲山事件、最近では奈良市小一女児誘拐殺人事件や田原本放火殺人調書漏洩事件などの著名な事件の弁護もされていました。
大きな事件だけでなく、無銭飲食や常習窃盗、クレプトマニアや少年事件などの情状弁護でも一切手を抜くことなく、常に被告人の更生を追及する弁護活動をされていたそうです。
その高野先生が昨年9月13日にご逝去され、その追悼集が発表されました。
まだ全部は読めていませんが、収録されている高野先生の弁論の一説をご紹介します。
「私は被告人に対して、いろいろと言ってきたが、非難はしない。
私が言えるのは、こんな生活はやめようや、刑務所で死ぬか、野垂れ死にするか
なんてことは、あまりに惨めじゃないか、畳の上で死んでくれというだけである。」
無銭飲食や無賃乗車を繰り返して刑務所に出たり入ったりを繰り返し、今回も刑務所出所後に無一文となって無銭飲食をしてしまった被告人に対する弁論だそうです。
被告人に寄り添い、更生を信じる。そんな弁護人の姿勢が滲み出ています。
私は、何度か講演を拝聴したり、会議や宴席でご一緒したことがあるだけで、残念ながら一緒に事件をさせていただいたことも、ゆっくり話をさせていただく機会はありませんでした。
しかし、遠目に見ていても、颯爽として、エネルギッシュで、優しくて、
とても格好いい弁護士でした。
奈良には大勢の教え子がおられます。
高野先生が築かれた「更生に資する弁護」が引き継がれていきます。
まだ読み終わっていないのに、伝えてくてブログに書きました。
本はこちら。
http://218.42.146.84/genjin//search.cgi?mode=detail&bnum=20225