V=4/3πr³

詩と物語を紡ぎます

無題(long version)

2022-03-30 15:19:15 | poem

無題

 櫻の花の満開の空の下の
 春爛漫の彌生の空の下で
 わたしは現在を生きている
 現在だけを生かされている

 過去は過ぎ去り未来は未だ来ず
 ただ現在だけの瞬間の連続する

 咲き誇る満開の謳歌する地表の上の
 彌生の春の爛漫の眩しい地表の上で
 現在を生きている櫻もまた
 現在だけを生かされている

 櫻とわたしと
 現在だけの瞬間の連続する

 ただそれだけの
 なんと愛おしい春なのだろう




   _written
   2022/03/28〜03/30
   _photograghed
   2022/03/28


ドルイド尼僧

2020-12-21 23:30:00 | poem
赤黒く錆び付いた
鉄階段の踊り場で
埃にまみれて
渇ききった牛乳瓶と
並んで見上げた
天球の日光に
生命の気配が
希薄だったのは

秋の夜の窓硝子に
モザイク模様を刻んでいた
蛾の葬儀が
ようやく開かれるからだろう




直進する時間
円環する時間
いう相容れない命題について形而上学的見解を論じなさい、Gabriel。

Gabriel?

教授、Gabrielは、二千年前の月曜日に、死にました。

ああそうだった、牛乳瓶に詰めたのだったね、ああ、可愛そうに、Gabriel。






淡い空色の匂いがする
女性《おんな》の乳房《むね》に
抱かれて観たのは
鮮烈かつ不条理な詩篇の羅列と
天球を巡る太陽と月の精神融合とを
伝承する《ものがたる》


ドルイド尼僧の止まない喘ぎ《うた》
だった


――地の時代の終末と
風の時代の始元の
はざまに寄せて



photograghed
2020/10/12 , 11/17 , 12/20
written
2020/12/21

龍の祈り

2020-07-10 03:10:00 | poem
龍の祈り


湿った風のキャタピラが
梅雨空から吹き下ろし

轟轟と轟轟と街を郷を蹂躙していく

もう何日青空を見ていないだろう?
それどころか太陽の輪郭すら臨めない

梅雨空は雨催いから雨模様に濡れて

その生温かい滴を辿り
頭上に目を凝らせば

日輪に額づく龍神の涙の

ほろほろとほろほろと
溢れて止まぬ祈りの歌が

木霊して人の魂に響き慰める





豪雨の被害に遭われた皆様へ、心からのお見舞い申し上げます。一日でも早く落ち着いた生活を取り戻せますように、毎日毎夜祈っております。
合掌祈願 つかさ 拝

written
2020/07/08,09,10

photographed
2020/07/08




紫陽花

2020-05-29 01:35:00 | poem
 昏い

 五月も半ばを過ぎてからmonotoneの雲に連日塗り潰された雨催いの空でもう来週は六月の短夜に弾けただけでなくやむを得ず弾けてしまった世界中の生と死が宇宙樹の果実にimaginationされるというのに

 否!

 だから昏い天上も地上も地下も深海のマリンスノウの藻屑もCOVID-19感染症禍の景気も世相も何もかもがどうでもいいCryに昏くて暗いのだから

あしたは、わたくしに、
ひかり、を、ください、

とそう祈っていた



 早朝の首都では十日振りに雲が切れてそれは十日という時間と空間の相対性に関わることもなくLEDの人造光ではない太陽が放つ日光を松果体に浴びるだけ浴びて
 虹を圧縮した日光は崇高な希望をも内包した『色彩《いのち》の源』であり光合成は生き物の必要充分だと知れたから自ら進んで悔い改めたのだった



 ニワトリとタマゴ問題(あるいは『事件』)に想いをはせるまでもなく初めは誰がそう構成したのか知らないはずなのにすべての色は白から始まり黒で終わる事を知っていた



 最初は淡く徐々に濃くそれでも恋に溺れるようなヘマは決してせず色彩にその身を委ねて躊躇いも矜持も無く何色でも産み出し染まるのが白
 ……そう識っていましたか?わたくしは識らなかったし恥ずかしいとも思わなかったその事実が痛恨の無知でしょう



 それぞれの肉体がそれぞれの色彩を生きることに何の衒いもないように雨の中でただあなたと揺れていたいだけのわたくしだからHomo sapiensにはそんな大した知恵はないのです


photographed
2020/05/12,17,19,26
written
2020/05/18〜29


花芽

2020-05-13 18:30:00 | poem
 精神科医院の三叉路を右に曲がり、大通りを越えて調剤薬局へ向かう道すがらの記念公園の手前。
 毎夏、午後の立ち飲み酒場に、くっきりとした木陰を刻む、街路樹の根本に、

今年も産声を聴いた。

 それはひと際濃い、深海水に揺蕩う瑠璃の色彩で、角膜と網膜のみならず、脳も、auraまでも一途に、深く清しく染めてしまう、預言だ。



五月雨に
濡れて滲みし
水彩画の色彩で
耀り咲みませ
紫陽花の幼子

さみだれに
ぬれてにじみし
ゑのいろで
ひかりゑみませ
はなのをさなご


written
2020/05/07,12,13