2010 No.8 4/5~5/5
作者:宮部みゆき(文春文庫)
評価・・・
★★★★ 4.0
久々の時代物以外での宮部さんの文庫新刊ということで買ったのに、読破するまでにだいぶかかっちゃいました。
あの『模倣犯』で重要な役どころだったライターの前畑滋子が登場する作品ですが、文庫解説にもあるように、続編ではなくスピンオフ的な作品です。
あの事件から9年後という時代設定ですが、あの事件の影が滋子にずっとつきまとっているという設定が興味深かった。あの事件から完全には立ち直っていなかった滋子ですが、この『楽園』で遭遇した事件の解決を経て、今後どうなるのだろう…と思わせるところがあり、また別の作品で再会しそうな予感がします。
さてさて、この作品のメインテーマは滋子の立ち直りではなく、“事故で亡くなった少年には母親が信じているように不思議な能力が本当にあったのか”というのと、“実の娘を手にかけてその遺体を自宅の床下に隠していた両親はなぜそうせざるを得なかったのか”というのと、この2つの関連性ということです。
丁寧にその謎の背景と真相が描かれており、それぞれに胸を打たれるエピソードが満載なのですが・・・「本当にそうするしかなかったの? もっと別の道をたどることができたんじゃないの?」とどうしても考えざるを得なくて、読後はモヤモヤ~としたものが残ってしまいました

まあ、みんなみんな正しい選択ができる人ばかりなら、こんな作品を描きようがないんですけど

人生で誤った選択をしたら本当に大変なんだな、気をつけなくちゃ!でも、気をつけたつもりでも、ずっと後になって間違っていたと気づくのも悲劇だな

と深く考えさせられたという点では、もっと評価すべきかもしれないです……
でも、ちょっと長すぎたかな~