50のひとり言~「りぷる」から~

言葉の刺激が欲しい方へ。亡き父が書きためた「りぷる」(さざ波)を中心に公開します。きっと日常とは違った世界へ。

「おつかい」

2015-02-20 21:27:11 | 小説
「おつかい」
「デートじゃないのかな」
とクモは軽口がいえた。
「かも知れないわね」
と美貌の顔がいった。軽い口調だったが、クモには罰を思いつかない親族の親しみばかりがきている。彼女を商店街で前にしている時、クモの目にはその背後に、よく見もしないテレビを見ているような錯覚が映っている。
「夥しい人のいきかいを背にしているといつもより、美しく見えるから不思議だな」
気取る彼女にそう皮肉の一つもいってやりたくて、クモはそう声を高めていってやった。デパートの巨きい柱を横にした立ち話だった。

(つづく)


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