プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◇ ウォルター・アイザックソン「レオナルド・ダ・ヴィンチ 上下」

2023年04月15日 | ◇読んだ本の感想。
まあけっこうなみっちりした評伝。単行本上下の各300ページ強。
……頭では、300程度では「分厚っ!」と思わない気がするけど、
実際のところは分厚さにひるんだ。この上下巻を、風邪を引いて寝ている5日間で
(この本だけなら正味10時間くらいで)読めたのはお得だった。
ここんところ読書スピードが上がらなくて読んでてもつまらなかったからなあ。

スピードが命というわけではないけど、ある程度さくさく読めないと
読書は面白くならない。例えるなら、ゴクゴク飲むビールは美味しいけど、
一口ずつ味わって飲むとそうでもない、みたいな。勢いが大事。
まあ本によりますけどね。

でも上巻の前半はだいぶ退屈。総論を読もうとしたんだから仕方ないんだけど、
そんなに目新しい内容もなくて。今まで読んで来たことが書いてあるだけで、
これをあと4分の3読むのはダルいなーと思っていた。

上巻の後半から面白くなりました。なぜかというと、内容が細部に入って来たから。
ダ・ヴィンチのタイムラインとしてはミラノ時代以降の話。

この本のいいところは、もういい加減にしろといいたくなるダ・ヴィンチの
質量膨大な手稿を丹念にひっくり返して、丹念に説明してくれたところだね。
これは労作。普通の人はここまでやらん。

著者はビル・ゲイツやアインシュタインの評伝を書いているらしいので、
そこに商業的なにおいを濃く嗅いでしまい、勝手にちょっとした反感を持っていた。
でもダ・ヴィンチの手稿の内容を相当にがんばって伝えてくれたので、
普段は読めないところまでダ・ヴィンチの範囲がわかって有難かった。
まあ覚えてられるとは思わないが。


しかし本当に――ダ・ヴィンチにもう少し完成作があればねえ。いろんな意味で。
近くに名プロデューサーがいれば、今の100倍くらい顕彰されていたろうに。
少なくとも10倍は金が稼げたと思うんだよなー。

まあそのためにはダ・ヴィンチがもう少しは他人に親切に時間を割いてやらなければ
ならなかっただろうけど。でもけっこう長生きしたんだから、1日の100分の1でも
割いていれば、自他の役に立ったこともあっただろう。

走り続けることを選んだ人生。だが時々立ち止まっても、
総距離はそこまで変わらなかったのではないだろうか。
そのバランスがね。いや、そのバランスを計算する時間さえ惜しかったかもしれない。


わたしは「モナリザ」はダ・ヴィンチの「女性なるもの」の追求だと思ってたんだけど、
この本を読むと、彼は本・当・に女性に興味がなかった気がしてきた。
一般的に言われる「女性に興味がない」ではなく、女性、男性という部分以外の
もっとジェネラルな部分にしか興味がなかった人なのではなかったかと。

たしかに胎児のデッサンは有名だけど、それは人間の生態の一部としてのもので、
男性、女性の区別は極端に低い。
ここまで物理、医学、数学、建築、力学、という物理分野に興味を示した人が、
「永遠の女性的なるもの」という心理分野にハマるか?という気もして来る。
まあそういうのもひっくるめてダ・ヴィンチの広範な興味かもしれないが。

ダ・ヴィンチの総論を抑えておきたいと思って今回数冊ピックアップして読んだのだが、
総論はこの本で満足。あとは最後の1冊として、各論というか、
定説から離れたものを読みたいな。


……あっ!だがチェーザレ・ボルジア付近は通り一遍の話で期待外れだったぞ!
わたしはこの辺を読みたかった。

欧米人のチェーザレ評価はこの数百年、否定的なままだと聞くが……
塩野七生でチェーザレを知ったわれわれ日本人は
(最近はマンガでも面白いらしいものが出ているんでしょ?)、
けっこう彼に好意的。
チェーザレとダ・ヴィンチについてはもう少し面白い内容を書いていた人も
いたような気がするけどな。ここまでマメに書いたんだったら、
チェーザレ部分ももう少し掘り下げて欲しかった。



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