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〔映画〕めぐみ 引き裂かれた家族の30年

2006年 米国(11月27日 鹿児島ミッテ10にて)
原題:Abduction  The Megumi Yokota Story
監督:Chris Sheridan & Patty Kim
製作総指揮:ジェーン・カンピオン
出演:横田滋&佐紀江 増元照明

2002年11月、横田夫妻が来阪した時、堺市民会館まで講演を聴きに行った私としては、見逃せない映画だった。

その2ヶ月前、金正日ー小泉会談の記事を、NY在住の韓国系カナダ女性 Patty Kim が新聞で読んで、はじめて拉致について知ったのが発端だったという。 PattyとChris 夫妻は、日本語もできずに来日し、私財をはたいて(最後には手元に500ドルしか残らなかったとか)このドキュメンタリーを作ったそうだ。
 
初めから、日本向けに制作してはいないので、日本人には周知の事柄が大半を占めているし、音楽とか四季の変化などに、外国向けの演出も見られる。しかし、字幕に「両親に」とあるように、横田夫妻への共感と敬愛といった、人間的な想いの結晶が、この映画だと思う。

また、「ピアノ・レッスン」「スウィーティ」の監督ジェーン・カンピオンが関わっていることが、この映画に独特な陰影と色調をもたらしている。めぐみさんの12歳当時の、子供らしくも大人びても聞こえる透明な声による「流浪の民」の、その歌詞の持つ意味が、彼女の運命を暗示しているのが切なさをそそる。

横田夫妻は、いつも仲良く見えるが、信仰を持つ妻と、それに懐疑的な夫、緻密で手堅い夫と、大胆で情熱的な妻などの資質の違いから来る、報道ではわからない齟齬もよくあるとのこと、その面を出したのは、見る者の共感を誘い、効果的だ。

何故、外国人が作って、日本人に作れなかったのかと言う声があるが、ことの真相は距離を置いた方が良く見えることもある。私が行った講演会も、地元選出のタカ派国会議員がついていて、ある種の宣伝に感じたりした。歴史や外交、政治的な複雑さが、近くにいる人間に、動きにくくさせているのも事実だ。アムネスティの運動が、自国ではなく、他国の問題を取り上げるのと同じ事情かも知れない。

以前「ミュンヘン」とか、「ユナイテッド93」とか言う映画に対してある人たちがそうだったのを覚えているが、これほど切実な問題に対して、映画の出来がいいとか悪いとか批評することにためらいがある。とはいえ、見るにあたいするという意味で、良い映画であると言える。遠くから見ると、私たちの国民性が、また、北朝鮮との関係が、どう見えるかが分る。それを知ることは無駄ではないと思う。

 「鹿児島ミッテ10」は鹿児島中央駅に隣接した清潔豪奢なシネコンで、歩みいってもひと気がないため、はじめは「美女と野獣」のお城かと想ってしまった。「デジタル」のマーク入りで音響効果の良い、一番広い部屋は定員401名、そこに50名ばかりの客が入っていたが、終っても場内はシーンとして、声もなく、立ち上がる人もいないという、私には珍しい経験をした。



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コメント
 
 
 
こんばんは (栗本 東樹)
2006-12-08 21:28:49
Biancaさん、こんばんは。
TBとコメント、ありがとうございました。
返信が遅くなってしまいどうもすみません。

自分もこの映画は、
外国人の視点で捉えたというところに、
大きな意義があったように思えます。
このいかにもドキュメンタリーっぽい作りが、
うまく国外向けにも国内向けにもなってますよね。
問題の大きさ、当事者たちの素顔、
それを伝えるのにいい距離感なんだと思います。
 
 
 
Unknown (Bianca)
2006-12-11 19:32:20
栗本さん、おいでいただき有難うございます。
熱のこもった貴台の記事には常日頃、感服しています。

ところで、栗本さんは、HNを拝借された?監督のことはお好きなんでしょうか?
 
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