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吉原真理「ドット・コム・ラヴァーズ」

うちでは気が散って借りてきた本もなかなか読みきれない。そんな時は背水の陣で、図書館まで持って行き、返す前に一気に読むことがある。この本もそうやって読んだ。読みながら楽しもうと思っていたお汁粉が自販機から消えていたのはちょっと残念。季節の変り目で品物を入れ替えたのか。

2008年刊行 中公新書。
ハワイ大学教授の彼女は1968年生まれで私より2回り下の同じえとである。2003年、30代なかばの彼女はサバティカル休暇でニューヨークに滞在していた。match.com と言う出会い系サイトで知った男性たちとの顛末を書いている。そういうと「イエロー・キャブ」を思い出す人もいるかもしれない。自由奔放な性行動は、アジア女性の特徴であるらしいと彼女も言っている。宗教や習慣による規制が西欧や中東ほど無いからかも知れない。しかし、この本の面白い所は、その行動自体ではなく、彼女の鋭くこまかい自己省察と観察眼にある。知的エリートであることを自己紹介ではっきりと書き、それに相応しい相手を求めているのだが、また応じる人がいるのである。ニューヨークと言う町と、インターネット世代の特徴だろうか。

知的でユーモラスな「文章」はこの本の最大の魅力である。彼女が重視するのは、自分の書いたプロフィールをしっかりと読み取って、それに繊細に反応するだけの感受性と知性を持っているということだ。そんな相手と向き合うことには脳の襞をくすぐるような喜びがあるのだろう。それに引き換え彼女の「トニ・モリソンを知らないような人はお断り」と言う条件を見落としたり、無視したりして申し込む人が結構いると、驚いている。それはそうだろう。その名は知っている人にこそ訴えるが、知らない人には何の重要性も無いから、アンテナに引っ掛からないわけだ。

で、彼女自身はゲイの気は無いのに、ゲイの男友達が結構出来て、失恋の痛手を癒してもらったそうだ。そしてユダヤ人の知性と感受性と絶え間ない自己表現の意欲を褒めちぎっている。興味のある方は、本人のブログ 《Dot Com Lovers》 があり、顔写真も出ているので、ご覧のほどを。


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