映画の感想など・・・基本的にネタばれです。
しづのをだまき
映画「おかあさん」
1952 日本 98分 しまね映画祭 松江テルサ劇場にて10月18日鑑賞
監督 成瀬巳喜男 原作 全国児童綴方集 脚本 水木洋子
出演 香川京子 田中絹代 三島雅夫 加藤大介 片山明彦 中北千枝子 岡田英次 榎並啓子
「母をたたえる」作文が原作と聞けば応募と採用の段階ですでにフィルターが掛っている。
さらに、子供は大人の気に入ることしか書かないし書けない。(思いつかないから)
しかし水木洋子の脚本は、その制限の中でも
戦後日本のある時期をくっきりと浮かび上がらしている。
東京の下町に住む両親と三人の子の家族。
戦災で失ったクリーニング店を再興するため、
娘も父も母も一家総出で働く
が、療養所から逃げ帰った長男(片山明彦)は
亡くなり、過労で父親も死ぬ。
戦争未亡人の妹は美容師の資格を取るため勉強中で、その息子5歳?も預かっている。
おかあさんは、小柄だから、手ほうきを愛用している。
滅多に外出もせず、たまにしか乗らない車には弱い。
遊園地に遊びに行く日は、酔止めに、おへそに貼る梅干を用意する。
香川京子は16歳、同窓の友人は洋裁学校に行くが、彼女は親を助け、夏はアイスキャンデー、冬は今川焼を売る。
おばの美容実習にモデルで文金高島田になり、はにかんで微笑むシーンは永遠に忘れられない。
彼女の男友達、パン屋の岡田英次が、ピカソ風の創作パンを焼いたり、
2人きりのデートに弟妹についてこられてガッカリする表情がユーモラスだ。
のど自慢大会で「オオソレミオ」を歌う岡田と「花嫁人形」を歌う香川、振袖を着て踊る妹。
口減らしにもらわれてゆく日に、妹が自分の描いて壁にはった母の絵を取りに戻るシーン。
新しく小僧に入った16歳の少年が、書いている手紙「母上様」
中学を出たら働く、結核で夭折する、あの戦後の貧しい時代に、
男たちが元気のない中で、小さい体で身を粉にして働いていた母の素晴らしさ。
この映画を初めて見たのは小学2年の時で、日記に感想が残っている。
「お兄さんが死に、その次にお父さんが亡くなり、本当にかわいそうでした。そして、ひさ子ちゃんを木村さんにあずけなくてはいけないので、その時私は見ていられなくなって、声を出して泣きたいような気持でした。」
自分に年齢の近い、妹の久子(榎並啓子)に感情移入している。
久子は「私、お刺身になりたい」「お刺身になっておかあさんが食べたらおなかが大きくなって、私が生まれるでしょ。そしたら、てっちゃんのように、おかあさんに寝かせてもらえるでしょ」と弟がいた私には共感できるかわいいことを言う。「また何度も見たいです」と書いているが、その願いは、40代と70代になって叶ったわけだ。
榎並啓子は、溝口健二の「山椒大夫」にも、木下恵介の「日本の悲劇」にも出た劇団若草の子役。
「山椒大夫」には幼い安寿役で、田中絹代、香川京子と共に出演している。
田中絹代はこの作品の後、監督を志望する。
いかにも日本的な地味な風貌であるが、本当の彼女は大胆で行動的だったのでは。
「私のおかあさん」8-12-27
「山椒大夫」 9-10-31
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 自転車乗り | 映画「浮雲」 » |
コメント |
コメントはありません。 |
![]() |
コメントを投稿する |