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「武士道シックスティーン」

2007 文芸春秋社
誉田哲也(ホンダ・テツヤ)著

これは若い(30代後半)作家による、若者を主人公とした小説で、普段なら縁のない分野である。それをなぜ読んだかというと、この原作による映画を見たから。

 
2010 古厩智之監督・成海璃子&北乃きい

主な登場人物は私立高校の剣道部に所属する2人の対照的な16歳だ。

武蔵と小次郎に例えられる、磯山香織(1)と西荻早苗(2)。
1は幼いときから剣道一筋、勝負にこだわり、自分以外みな敵だと思っている。
2は日本舞踊を習っていたが、中学にないので、剣道部に入る。技を磨くことが第一で勝負は度外視。実力と闘志に勝る前者が、中学時代、試合で後者に負けたことから、前者の執念の猛追が始まる。

しかし、このふたり、剛の磯山と柔の西荻。男性的な磯山と女性的な西荻、一見カップルに見えるが、当人同士はまったくその意識はない。スポーツ少女のすがすがしい友情という感じだ。三島由紀夫の「剣」を思い出す。

映画と比べると、小説は二人の独白が交互に出てきて、その心情が分りやすい。しかし、磯山の見るものの心を貫き透すような眼差しは千言万語より魅力的。一枚のスチルは映画に勝るが、原作はより良い。リズミカルな文体で、若い作家だけれど鑑賞に耐える。

ついでに、私の武道エピソードを。

1.鹿児島で。1950年代後半、中学2年生、男子が柔道か剣道をする間、女子は家庭科〈私の一番の苦手!)をやらされた。
2.大阪で。大学入学の日、合気道部から誘われ、冗談だと思って笑って相手にしなかった。それから10年余、地域の合気道講習会に出た(一回でやめたけれど)のは、ずっと気にかかっていたのだろう。
3.東京で20代後半、職場に山形庄内で剣道をやっていた19歳女性がいたが、好感の持てる人だったなあ。
4.30代半ばNHKCCで太極拳を学ぶ。ルーツをたどればこれも武道じゃないかと。
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