映画の感想など・・・基本的にネタばれです。
しづのをだまき
【映画】蟹工船
1953年 監督・脚本 山村聡 出演 山村聡 森雅之 河野秋武 110分
松江スティックビルにて鑑賞
初めに最近驚いた発見を記しておこう。
年齢も近いし、顔つきもどことなく似ているしで、私は時々区別がつかなくなる二人の俳優だが、佐分利信と山村聡が、1950年代、40代半ばで、共に映画監督をやっていたのだ。おっとりした中流の知識人といった趣の山村聡が「蟹工船」を、佐分利は二二六事件を扱った「叛乱」を映画化している。左派と右派とは言えないかもしれないが、対照的な作品の選択だ。これでもう、今後二人を取り違えることはなくなるだろう。
全体として、戦後の労働運動が盛んだった時代に作られた映画らしく、活発で情熱的な空気に満ちている。細部では、乗員の荷物がムシロで包んである光景などで、ああ、こういう風だったなあと、思い出した。波止場に首を真っ白に塗った女たち(白首と呼ばれる娼婦)が押し寄せていたり、今なら中学生くらいの男の子が、船内で製缶作場に携わり、親父どもの好色の餌食になったりと言う事実には、驚いてしまった。少しロマンティックなシーンとしては、「戦艦ポチョムキン」を思わす海軍と労働者との対峙シーンもあった。その結果はソ連映画より悲惨なものに終り、やはり警察で殺された小林多喜二の実際の最後と重なるのだ。
原作にあるように、知識人の弱さははっきりとでていた。船医とか船長が、会社の手先である監督の浅川に武器で脅されてしぶしぶ従ってしまうとか、山村聡の役も、スネに傷もつ弱みを握られて手先になってしまう。
新たに「蟹工船」が映画化されているという。現代人が作るのと、半世紀前の人が作ったのでは、どういう違いが出るかに興味がある。原作の時代から遠ざかるほど、実感を出すのは困難だろう。封切が楽しみだ。
→「蟹工船と私」8-6-1
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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私は最近映画館を見つけたのでこのような話を聞くととても楽しみです。遅まきながらこれからは邦画ファンになろうかと思っています^^内容次第ですが。。。
私は貴女より年齢が上ですから佐分利信と山村聡の区別はつきます^^
二人は映画監督もしていたんですか。知りませんでした。