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早乙女勝元さんをしのぶ

5月10日に90歳で亡くなった同氏(1932~2022)の想い出ふたつ。

1.「負け抜き相撲」

これは勝った人から抜ける相撲である。小学校で負けてばかりのぼくは、先生に怒鳴られながら、勝つまで相撲を取らされ続ける。「子どもを鉄のように強くしなければ戦争には勝てない、と。そういう時代でした。私は臆病者で泣き虫で、先生から『かつもとじゃなくて、まけもとだ』と言われるような少年でしたから。学校は大嫌いでした」「ほっそりとした体」と弔辞で山田洋次氏も言っている。何の本で読んだか忘れたけれど、あまりにも悲惨なので憶えている。一人の例外も許さないというこういう教育は、戦後も続いている。単なる弱い者いじめではないか。

  →「暗黒日記」21-3-9 →「鍛える」18-2-20

2 映画「戦争と青春」

早乙女原作で今井正の遺作になった映画。(主演は工藤夕貴)1991年制作。私は10代のころから今井正監督の映画が大好きーとくに「また逢う日まで」「純愛物語」ーだったので、彼がメガホンをとると聞いて、喜んで株主に応募した。たまたま当時、母が、昭和天皇記念10万円金貨を買って子供に配っていた。(未亡人となり全然貯金も収入もない彼女がどこでそんな金を見つけたのか?私らが毎月やりくりして送っていたお金をそんなことに浪費?あるいは投資のつもり?)昭和の時代に悲惨な目にあった庶民を記録するために、責任者である昭和天皇在位記念の金貨を使うのはちょうどいいかと思い、その10万円を当てようと思った。(のちに母が返せと言ってきたので文句言いつつ返したがあれはどうなったか、今持っていたらいい値段になりそう)

試写会場のロビーで見た監督の姿は、ポツンと孤独そうだった。……偉い人はいつも孤独だ。

投資した資金の代わりに、現物のビデオテープをもらったが、引越しが続いて(当時から5回引越し)いつかどこかに消えてしまった。ただし私の名前は映画のタイトルロールのあと東京都の欄に小さく載っているはず。

 

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