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金美齢「日本再生への提言」

 清楚なイメージが彼女に合うかと思ったが、下を向いてるのが難かも。



東京に住んでいると、思いがけず有名人に出会うことは珍しく無い。松江にいると、有名人の無料講演会ははがきで申し込んで返答が来てからも1-2か月は待たねばならない。そうまでして見にゆく理由は言うまでもなく、田舎住まいの無聊を紛らすため。私と似たような人たちが集まって、お天気のよい土曜の午後だというのに定員1800強の大ホールが超満員になった。中ホールではしまね映画祭の「ニュー・シネマ・パラダイス」もやっていたが、こちらはすでに数回見たことだし、と。

自民党のタカ派の領袖を支持する彼女の思想に共鳴しているわけではない。彼女の母親としての経験から出た子育ての方法は、著書を読んだ私には特に目新しくなかった。

それよりも印象に残ったのは、78歳の彼女が、小柄だがパンツスーツで登場し、90分の講演の間中、一度も腰を掛けず、ハンドマイクを持って歩いたり立ったまま通したこと。そして会場までの2㎞近くを、歩いてくるつもりだったが結局バスで来たというその壮健さ、というよりも、安易に流れぬ心意気だ。

彼女は来日50年で今は日本人になっているが、台湾独立運動家だったので、自国政府に敵視され、パスポートを持てない状態が何十年もあった。彼女の身辺にただよう気迫の所以が分かった。外国に生きるのは、この「なめたらアカンぜよ」の強烈なオーラがただでさえ必要である。シリアにいたとき、私も彼らにつけこまれないように絶えず身構えていた。その上、彼女には、私と違い自国の保護を受けられない状態にあった。日本しか頼れず、体制の機嫌を損ねないように配慮しながらとどまっていた彼女がタカ派になるのも分るような気がする。

講演を聞くことは、演劇でもそうだが、生身の人間に触れること。ソウウツではなくソウソウだという鼻っ柱の強い発言の数々は美人の口から出るとユーモラスで、あたかも独り芝居のよう。久しぶりに笑って気分の良い90分だった。この後味は八木先生の時事漫談に大笑いした時のそれに似ている。そういえばふたりとも1934年生まれだ。

ただ県民会館は築何十年だろうか、高齢化社会を予想していなかったのか、構造上、高齢者にはつらい様々な条件があって、階段、段差、WCの古さ、少なさなどは、要注意。鑑賞するときはできれば1Fを選ぶべきだろう。

●満員の一因は当地の保守性にもあるのか→「山陰の底力」 9-8-31
●金美齢の名前が出てくる記事→「台湾本」 11-10-27
●彼女の著書で私が読んだもの(記事にはしていないが)
「私はなぜ日本国民になったのか」11-6-20
「凛とした生き方」 11-3-28
「おひとり様で幸せですか?」 12-8-21
  これは上野千鶴子「おひとり様の老後」を意識したものらしい。著者は小学生の子供2人と夫をおいて1975年から2年間ケンブリッジに滞在したが、その時、米女性から「most liberated つまりもっとも解放された女性」だと言われたそうだ。しかし彼女は「いいえ、私は解放された女性になるのなんかご免だ」と返事した。夫の周さんは「神か仏か周さんか」と言われるほど優しくて、送金を頼めば倍額を送ってくれるような人。家事育児も良くやってくれた。というと、おいおいちょっと、とツッコみたくなるが、すかさず「だから、家族は大事なものです」先手を打って笑いのネタにしている。

★★追記(12-10-18)
下のコメントNo4でほめちぎったが、人に簡単に眩惑されるのが私の欠点でもある。
→「だまされた話」8-8-3

金美齢が好きな風土
→「山陰の底力」9-8-31
コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
Unknown (桃すけ)
2012-10-15 11:34:45
金さん、このような公演もされているんですね。
大阪で日曜日の午後、彼女がレギュラーで出演している番組、そちらでも流れているんでしょうか?かなりタカ派の番組です。たしかに、きりっとして魅力的な女性です。度胸もある。私は度胸のある女性が好きです。「なめたらアカンぜよ」の気魄で生きてこられたのでしょう。けれど、弱い立場の人に厳しい。頑張れない人も、運の悪い人も、能力を持たない人も、世の中にはいる。それを、すべて自己責任と一刀両断してしまうのが怖い。でも、この写真きれいですね。
 
 
 
Unknown (Bianca)
2012-10-15 11:56:38
いやあ、電光石火ですね、私まだ本文を手直し中だったのに、20分も前にコメントが。そうそう、日曜の午後、こちらでも流れています。その一刀両断という点ですが、彼女はO型で、夫も子供も、子供の連合いも孫も、一族全員O型なんだそうです。夫の死後はその頂点に君臨するボスが彼女だとか。O型の特性は「力」重視なので、彼女の欠点はそこからくるのでしょうね。しかし、あまりにも万般に目配りしていると、切れ味が鈍るでしょう。彼女も貧乏や病気になったら、そういう事が解るのでしょうが。ただ、単純に同じことを長年主張し続けることも大事だとは思います。「ぶれない」と彼女は言っていました。
 
 
 
金美齢 (海道)
2012-10-17 16:26:12
今晩は
お邪魔します。
私はこの人を好きか嫌いかと言われれば信念のある
物言いには共感します。
 
 
 
Unknown (Bianca)
2012-10-17 18:16:03
海道さんへ
「二木謙三のうた物語」でやりとりしてますが、ここへは初めてですよね。ようこそいらっしゃいませ。お名前の感じから男性だと思い込んでいましたが、最近ちがうのではと思い始めました。男女で態度を使い分けるのもどうかと思いますが、やはり生きている状況にはっきりした違いがあるので、どちらかでコメントする心構えが違ってきます。一度性別を明かしてくださいませ。
金美齢さん、精一杯自分を鞭打って生きて来ているのですよね。こういう先輩が、昔の日本にはいたのにいまは殆ど見かけなくなりました。懐かしく慕わしい人です。
 
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