この花は名前が分らないが、いかにも「疑惑」に相応しいと思うので見出しに採用
1942 米 モノクロ108分 監督 アルフレッド・ヒチコック 出演 ジョゼフ・コットン テレサ・ライト レンタルDVD
我が国との戦争中にこんな映画を作っていたアメリカはどれだけ余裕があったのだろう?!
日本公開は1946年。
舞台はカリフォルニア北部サンタローザ。当時は人口1万数千の小都市(現在は16万)。
列車が駅についてジョゼフ・コトンが降りてくる。
実は刑事に追われる殺人犯なのだが、彼の正体を知らない親戚は温かく受け入れる。地元の婦人クラブから講演を頼まれたりもする。
この俳優でこの展開、どこかで見たと思ったら「第三の男」ではないか。
ただしあの映画は製作が戦後だから、こちらの方が先である。
この映画ははじめから犯人が解っているが、それでも心理的な怖さはソクソクとして迫ってくる。
犯人にちなんでチャーリーという名前をつけられ、叔父を愛し、心が通じるだけに姪である長女(テレサ・ライト)はその怖さをひとりで何とか処理しようとする。
他の家族はのんきなもの。特に母親ときたら、溺愛する弟に目がくらんでいる……。
当事者の苦労に周りはどこ吹く風という設定はヒチコックの映画にはよくある。
この映画で特に面白かったのは細部の描写。
年の離れた次女と弟がそれぞれ個性的で愉快である。次女はメガネをかけていつも本に夢中だ。メガネの女の子はヒチコック映画によく登場する。「見知らぬ乗客」ではヒチコックの娘パトリシア・ヒチコック。この映画の女優もパトリシアだ。
未亡人に対する嫌悪感はよく登場するが、待てよ、ヒチコック自身の母親は未亡人ではなかったのかな。
未亡人が犯罪の被害者になったり、怨嗟の的になるのは、それだけ欧米の女性の地位が保障されているからではなかろうか。わが国ではそうでもないような気がする。
ヒチコックは映画の初めに出てくる。列車で中「きみ、顔色が青いよ」と言われる客だ。その理由はあまりにも幸運なトランプの札を見るとわかる。この映画もすべての持ち札を観客に明かしているようなものだ。
●資産家の米国の未亡人
→「情婦」12-4-7
●日本の未亡人
→「闇に咲く花」12-7-19
●戦争前後の米映画
1942「カサブランカ」 11-12-21
1940「チャプリンの独裁者」11-5-16
1940「レベッカ」 12-4-21
1939「風と共に去りぬ」7-7-2
●同じく邦画
1938「愛染かつら」10-5-21
1940「信子」 6-10-22
●ジョゼフ・コットン
「第三の男」11-12-22
●ヒチコック作品
「レベッカ」12-4-21
「第三逃亡者」8-12-18