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【映画】歩いても歩いても ②

前項に続いて。

台所で母と姉が料理しつつ何かしゃべっている、それを別の部屋で聞く男。
是枝によると、実家で、母のまな板の音を聞いて目が覚めたという。
つまり、音だけで目には見ていないということだ。
道理で、冒頭のシーンが、冴えないと思った。
TVなどで見る包丁捌きからすると、速いだけで美しさ、鋭さが少ない。
もし監督が、自分も料理をする男性ならば、もう少しキレイに撮ったと思う。

「男子厨房に入るべからず」と言う昔ながらの言慣わしがある。
その反対側で、女性が台所に閉じ込められて来た。今でも集りがあると、
こういう慣わしが生きてくる。料理自慢の女ならまだしも、私のように
不器用で、作ることにも食べることにも興味のない女性だっている筈。

「ああ家でもそうだ」とか、「祖父母の家でそうだった」とか、
「料理がおいしそうだから作って見た」とか、そういう反応がある。
映画は単に日常を追認する記録映画でも料理番組でもない。

監督によると、最近母親をなくし、これまで放ったらかしだったことを悔やみ
その供養の意味で作ったということだ。
このコメント、多くの人々、特に男性の共感を呼びそうだ。

どれもこれも古いのだ。そして、正にこの古さこそが、大衆をひきつける。
無意識の策略だろうか。

題名から、西国巡礼の映画かと思うとさにあらず、老夫婦の馴れ初めの歌
「ブルーライトヨコハマ」の一節。これも選曲が泥臭い。と悪口果て無し。

是枝裕和が関わった作品

→「歩いても歩いても」8-12-14
→「空気人形」 10-6-19
→「奇跡」 11-9-14
→「エンディング・ノート」 12-9-8

コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
マジョリティーの無意識? (狗山椀太郎)
2008-12-18 00:20:14
こちらにもお邪魔します。
>このコメント、多くの人々、特に男性の共感を呼びそうだ。
そう言われてみると確かに、この映画は群像劇ながら、男性、とくに次男の視点で撮っている作品だと思います。
おそらく親から見れば「いい年して、不甲斐ない」と思われているであろう自分の存在を明らかにしていくというか、そうしたスタンスやポジションが現在の私と通じるような気がしました。

>映画は単に日常を追認する記録映画でも料理番組でもない。
厳しい見方ですね。私は、作り手・受け手ともに「あくまでパーソナルな」という意識があるのなら、日常追認型の記録映画もアリだと思います。
逆に、日本人なら誰もがこう感じるだろうとか、本作を最大公約数的な形で位置づけてしまうと「作品に描かれなかった」少数者を(それこそ無意識に)疎外することになるので、その点は注意すべきでしょうね、自戒を含めて。
 
 
 
狗山さま (Bianca)
2008-12-18 11:31:32
>日本人なら誰もがこう感じるだろうとか、本作を最大公約数的な形で位置づけてしまうと「作品に描かれなかった」少数者を(それこそ無意識に)疎外することになる

そうそう、それが言いたかったのです。

貴方は次男の立場から見られましたか?この次男は良く分るように描かれていましたね。そのほかの家族特に女性たちは、いい加減と言うか、大ざっぱな描き方。女優が役柄にあっているとも思えません。だって、希林もYOUも非常に独特な雰囲気をもっているのですから。

小津映画と似ていると言う声も聞かれましたが、決定的に違うのは、父親の存在感。あの頼りになる、気品のある父親がどこにも見えません。実に心もとなく淋しい思いがしました。
 
 
 
日本インターネット映画大賞募集中 (日本インターネット映画大賞)
2008-12-21 15:18:54
突然で申しわけありません。現在2008年の映画ベストテンを選ぶ企画「日本インターネット映画大賞」を開催中です。投票は1/15(木)締切です。ふるってご参加いただくようよろしくお願いいたします。
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