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ケアテイカー

同居人Kは、典型駅な「ケアテイカー」=「世話役」である。

Kは生まれるとすぐ実母が病気で寝たきりになり、抱かれたり授乳されたりの経験もないが、母の枕もとで機嫌よく一人遊びをして、滅多に泣いたりしなかったそうだ。泣いてもきいてくれる人がいないのを敏感に感じたのだろうか。

5歳で実母が亡くなり継母が来た。

義母は初婚だったが、夫のほかに3人の男の子と舅、計5人の男所帯の面倒を見るのに疲れ果て、間もなく家出をしたそうである。その避難先の親戚の家へ、末っ子のKがバスに乗って会いに行き、それで彼女も思いとどまったというのだ。誰に言われたわけでもなく、わずか5歳でそういうことをするのがケアテイカー=世話役であるゆえんだ。その間、上の兄たちは何をしていたのか?本人の証言ではひたすら義母に反発していたようだ。

機能不全の家族に育ったアダルトチルドレンの典型だ。

今は認知症になったその義母95歳の世話をしながら、さらに義弟の配偶者の父84歳の面倒を見ている。義父は妻子もなくし、孫娘からも弟妹から見放されている。Kは老人施設の入居から病院への付添いまで引き受けている。このふたりの老人のほか首都圏に進学した姪の大学の課題まで見てやっている。

彼は会う人ごとにその人の持っている荷物を肩代わりしたくなるようだ。

その光景を見ると人は驚いてなぜそこまでやるのだ?としばしば尋ねる。自分でも異常でありやりすぎていることに気付いても、止まらない。

私は彼に「他人へのケアは必要最小限に抑え、もっと自分自身をケアするべきだ」と言うのだが、その程度の苦言では治らないのである。世話を焼くことにとどまらず相手を依存させ、共依存へと進んでゆくから「ケアテイカー」はこわい。

⇒壺井栄「秋蒔きの種」10-2-4
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