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渡来人

わたしの夫は、自分の先祖は朝鮮半島からわたって来たと、いつのころ
からか信じ込んでいる。何の証拠や根拠があるわけでもないのに。
そもそも、夫の一族には、家系図を作ったり、一族の歴史とか
自分史とかを書いたり、口癖に自慢したりするような人間は
ひとりもいないのだ。

確かにいえるのは、陶工だった先祖が、江戸時代に島根の海沿いの
町から招かれて松江城下に住みついたということだ。小八という
名のその玄祖父は、なかなかの腕前で、彼の作った茶碗は、
「土で作ったとも思えないほど、柔らかな線」を
出していたと、伝え聞いている。

地図で見ると島根は朝鮮半島に近く、日御碕の灯台から西方を
見はるかすと、目の前に見えてきそうな感じさえする。

夫の自慢は、先祖代々職人だということである。職人の血の
せいか、言葉より先に身体が動くほうだ。

それと反対に、大庄屋と教師を先祖に持つ私は、身体を
動かす前に、まず何かしゃべらないではいられない。
兄弟も、男女を問わず、必要以上に口数が多い。
そんな私からすれば、気がつくともう何かしら
始めているかれは、驚きである。

彼は外国とくに途上国が無性に好きで、差別に敏感に反応する。
彼が育った環境は、人も社会も、少数者への差別と偏見に
みちていたそうだ。彼の思い込みは、そんな環境への反発と共に、
自分にない強い個性や、優れた文化への憧れもあったかもしれない。

だが、このごろでは、私も、かれが海の向うから来た人である
ように思い込んでいる。
 
文章教室 課題「遺伝」2006年10月4日作成10月18日返還

【八木先生評】

これは存外あたっているかも知れません。ずっと古い時代と、秀吉の
時代にも陶器づくりの専門家が渡来しているのですから。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
Unknown (kazukokawamoto)
2008-12-02 22:28:57
2年前の課題見てみます。どんな文章書いたのか調べてみます。パスしたようです。
休んだようです。
 
 
 
Unknown (Bianca)
2008-12-03 18:07:56
わたしもノートを見てみました。この課題、貴女には珍しく、未提出ですね。その頃は旅行中でしたか?
 
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