映画の感想など・・・基本的にネタばれです。
しづのをだまき
映画「青春群像」
1953 伊仏 116分 レンタルDVDで鑑賞
原題 I Vittelloni(ノラクラ者たち、または乳離れのしない子牛)
監督 フェデリコ・フェリーニ 音楽 ニーノ・ロータ
出演 フランコ・ファブリーツィ アルベルト・ソルディ
似たような設定の「アメリカン・グラフィティ」と比べると、いっそう際立つのだが、今度見て、素晴らしい映画だと思った。若いころは、そう思わなかった。田舎町の若者たちのだらだらした生き方に、少しも共感を持てなかったからだろう。この年齢になると、自分自身にも、もうどうしようもないことが、あるからだろうか、彼らの環境とか素質の「どうしようもなさ」に同情が持てる。そして何よりも映像の美しさだ。不良たちの服装も、あの時代なのでなかなか大人びていて渋い。
フェリーニの映画らしいと思うのは、美人コンテストや謝肉祭など祭りの大賑わい、木登りする僧院長とか、盗品売りを手伝う一寸足りない男、同性愛の座長など、ハチャメチャな男性たち、そして清純・貞淑から妖艶・奔放までありとあらゆる年齢と職業の女性たちである。一方、大地にしっかり足をつけた少年鉄道マン、律儀な生活者の老父たちや雇い主、ただもう母性的で何か食べさせようとする主婦や女中たちは彼等ノラクラ者が存在するための不可欠な基盤をなしている。
この映画はその後、「お熱いのがお好き」のトニー・カーティスの女装、「処女の泉」の浮浪者、「どですかでん」の頭師佳孝、「シベールの日曜日」の風見鶏、フーテンの寅の「労働者諸君!」にまで影響しているように見える。
最初と最後に5人が腕を組んで元気よく歌いながら行くシーン、一見労働者のデモか軍隊の行進に見えるのだが、ノラクラ者といえどもこうなる所があの時代を思わせる。
おかしいのは、見る人によって、誰が主人公かが違って見えるらしいことだ。
ある人は作家志望のレオポルドが、ある人は美女のサンドラが、ある人は旅立つモラルドが、主人公だと思う。それだけ、各人が紋切り型でなく、愛情をこめて描写されているということだろう。私は、誰が主人公というのではなく、この5人はすべてが一つになって青春の混沌をあらわしているのだと思う。
しかし「青春群像」というこのタイトルは、誤解を招くかも。それにこめられている、未来への希望とか活発に生きる若者たちというイメージで見ると、失望する人もいるだろうから。かといって、原題どおり「ノラクラ者」としたのでは、見たくなる人がいるだろうか?
過去には、40代半ばに2回見たことがある。日記から引用すると
★1988年6月15日渋谷セゾン(1250円)
あるドーナツ盤のB面にあったので、音楽と2,3枚のスチルだけで長年知っていた。30年以上たって見ることになる。ジェラール・フィリップにちょっと似た若者(多分、これがフェリーニ?)が午前3時の街を歩き、駅に早朝の仕事に出勤する少年と知り合い、ベンチで話をする。やがてある朝早く、皆の眠りこけている間に、その少年に見送られながら、どこかへ旅立つ。
このエピソードのみ美しく、そのほか、女たらしのファウストと、お人よしのその妻、脚本家志望の男、歌のうまい肥った男、姉が出奔した女装好きの男、どれも哀しいまでにヒナめいている。(どこか「ラジオデイズ」やらOOグラフィティ的だ)
★1988年9月25日三鷹オスカー「フェリーニ特集」(700円)
盛大に雨が降り続け、井の頭池は岸まで10cm位に増水していて、公園を歩いているのは私丈。帰りつくとスニーカーに水が浸み透っている。
三鷹オスカーで、フェリーニ特集をやっている。2本見る。
「魂のジュリエッタ」は半分以上眠っている。「青春群像」は周囲の観客の品がおちるので、やはり前ほどよく見られず。
→12-03-29 「アメリカン・グラフィティ」
→11-04-07「お熱いのがお好き」
→10-10-03「トニー・カーティスとアーサー・ペン監督逝く」
→11-07-06「三鷹オスカー」
ついでに私のブログのイタリア映画
→07-09-13「マルチェロ・マストロヤンニ 甘い追憶」
→08-11-21「狂ったバカンス」
→09-01-30「太陽はひとりぼっち」
→10-02-20「炎の戦線 エル・アラメイン」
→10-06-28「ひまわり」
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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ある程度年齢を重ねると、こうした青春のぐだぐだ具合が理解できるのかもしれません。
>「魂のジュリエッタ」
本作と一緒に高田馬場パール座で観ました。面白かったですが、僕も少し眠った記憶があります(笑)
>「シベールの日曜日」
この作品の引用は面白いと思いましたが、奇遇にも記事内にある三鷹オスカーで観ています。
TBとコメント有難うございます。おっしゃるように三鷹、中野、池袋、大塚、高田馬場、飯田橋……、あのころは良く名画座めぐりをしたものだと、思い出します。青春と言う言葉に過剰な思い入れのある私ですが、映画とはまさに青春の芸術ですね。最近あまり映画を見たいとも思わなくなってきたのは、青春が過ぎたのでしょうか???