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「動物たちの自然健康法」

2003 紀伊国屋書店刊 
著者 シンディ・エンジェル
訳者 羽田節子

野生動物が、医者も薬もない環境で、どのように健康を維持し、病気を治しているか。その知恵に学んで人間や家畜・ペットや動物園の動物に役立てようという趣旨だ。著者は野生動物の行動の研究で博士号を得て、英国サフォーク州の田舎で2人の子供と共に農業に従事、農家への助言者、ホリスティック・メディシン※の医者であり、BBCやナショナル・ジオグラフィックの番組にも協力している。

自身の研究調査に基づいた豊富な材料を、どさっとそのまま差し出しているだけで、構成に工夫がないように見えるのは惜しい。

始めに結論ありき(結論は※以下)なので、この本は厳密を旨とする学者の論文ではなく、農業・医療などの実践家のエッセイと思えばいいのでは。読み方次第であるいは雑学としても楽しめるし、あるいは自分の生活を見直す指針ともなるかも知れない。

中で印象的だったのは

★ヒトは1万年前に農業を始めたが、それ以前は狩猟採集民であった。

★ヒトの遺伝物質の99.99%は狩猟採集時代にすでに出来上がっていて、穀物や牛乳に適応するような体ではなかった。〈だから今でもそれがだめなヒトもいるわけだなあ)

★10万世代の間、狩猟採食民であり、農業を始めてからは500世代しか経っていない。産業革命からは10世代、調理済み食品(ファーストフード)が現れてからはわずかに2世代である。

★旧石器時代にはヒトはいろいろな植物を食べており、一年間に100-300種類にもなったが、今は多いヒトでも20-30種類位ではないだろうか。

★野生動物でも人間の影響で生活習慣病になる。あるヒヒは、近くにごみ集積所ができてから「カウチポテト」化し、ごみ運搬車が来るまで寝転んで待ち、以前のように食料を求めて歩かなくなり、健康を損ねたらしい。

などというところ。

※ホリスティック医学をひと言でいうならば、人間をまるごと全体的にみる医学といえます。健康や癒しとは本来、身体だけでなく目に見えない精神・ 霊性も含めた人間の全体性と深く関係があります。これは、病気だけに限定されるものではなく、人生の中の生老病死というステージを考え、病を癒 していくなかに関連する、あらゆる分野の「癒し」も大切に考えるということです。〈日本ホリスティック医学協会のHPより)

したがって「医食同源」、遠隔地・季節はずれの物を食べないとか、自然治癒力を重視するとか言う、東洋古来の養生法につながっている。  

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