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「ガラス玉演戯」

   
   マウルブロンの3皿の水盤のある噴水

1982 (原作 1943) 新潮社 ヘルマンヘッセ全集第9巻 訳 高橋健二

3回目の挑戦ー中学生、40代、そして現在60代、今度こそ読み通してやろう、と、まるで登山家が高峰に挑むような気持で読み始めるのだが、またもや途中で下山してしまった。しかし、頂上の雲が切れて山頂が見える瞬間も。

ヘッセの作品は、「車輪の下」以来ほとんどすべて高橋健二の訳で読んでおり、たいていは詩的なリズムのある文章で読みやすいのだが、この本は読みづらい。

一つには最初の「序論」が難しい。ここを飛ばして読むと急に分りよくなるが……。わらをもつかむ思いで訳者の解説を読んだら、だいぶ助けになった。
このタイトルからイメージがつかみにくいが、ヘッセが神学校を中退して入った職場の主人が、針金とガラス玉で作った五線譜に似た遊戯道具をさしているとか。

中に出てくる不思議な人物の名前はニーチェやトーマス・マンや著者自身の名前をラテン語風にしたものだとか。

中退したものの、神学校の雰囲気や精神的なもの、教養への憧れは一生続き、さまざまに現れている。本作の中のカスターリエンはナチズムに対抗する理想の国だったとか。

平和主義者ヘッセへのナチスの迫害は激しく、出版社の社長ズールカンプが逮捕され強制収容所に入れられたりしたが、序文が難解なのもナチズムの反知性・反教養主義に対する批判でもあったのかも。

別の訳でも読んでみたい。タイトルを「ガラス玉遊戯」と訳したものなどは分りやすそうだ。

ちなみに彼の主だった作品を好きな順に並べると

「春の嵐」
「デミアン」
「知と愛」
「シッダールタ」
「荒野のおおかみ」
「車輪の下」

ヘッセを始めて読むなら構成と文体の素直さで「春の嵐」「知と愛」「シッダールタ」「デミアン」など読みやすいのではと思うが、こればかりは人によるだろうけれど……。

私は図書館派で、滅多に本を買わないが、これらは全部持っている。ただ、一番好きな「春の嵐」が手元に無いのだ、いつからか、そして何ゆえか。

→07-12-03【詩】霧の中 
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