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「モンテ・ヴェリタ」

「鳥 デュ・モーリア傑作集」創元推理文庫、2000
原題 Monte Verita (真実の山)
作 ダフネ・デュ・モーリア
訳 務台夏子

山と女性の神秘性をテーマにした男2人と女1人の純愛物語で、デュモーリアの作品中でも一番不思議な小説。
登山が好きな男性の親友同士の間に婚約者の女性が現れる。女性は相手に山に誘われるが行きたがらない。それは山への嫌悪や無知からではなく、山の本質をよく知っており、畏れているから。山は人間にすべてを捧げることを要求するからだという。

★物語の内容に触れています。

その言葉どおり、あるとき彼女は黙って山に登り、山頂の僧院に閉じこもって帰らなくなる。男性は彼女を愛し続け、一生彼女への呼びかけを続ける。その方法は年に一度、僧院の前に手紙を置いて姿を隠す、しばらくして返事が来るが石に刻んだ、とても短い返事である。まるで死者との交信のようだ。

★ここまで

ところでこのMonte Verita という山は実在で、検索したらつぎのようにあった。

20世紀初頭、自然回帰をめざした自由思想家やナチュラリストなどが集まり、理想郷のコロニーをつくり、ベジタリアンやヌーディズムや神智主義などの運動が新しい哲学として発展したことで知られるアスコーナの小高い山・・・・

ヘルマン・ヘッセやイサドラ・ダンカンも訪れたという。さしずめ、60-70年代ならこれがインド・チベットになるのではないか。

デュ・モーリアは男女両性を愛するバイ・セクシュアルだったので、女性への深く強烈な眼差しがある。彼女の小説に出てくるたとえば「レベッカ」と家政婦長デンヴァーズ夫人との関係の摩訶不思議さもその一例。「レイチェル」も女性の「不可解さと神秘」を皮肉混じりに描いている。

ダフネ・デュ・モーリア(1907-1989)

この小説の女主人公は、彼女が愛した女性かも知れないし、また彼女自身かも知れない。そして男たちもまた、彼女自身かも、彼女の愛した女性たちかも知れない。

作品の映画化
「鳥」 12-4-26
「レベッカ」12-4-21
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