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映画「キャタピラー」

  

2010年 日本 84分 監督 若松孝二 出演 寺島しのぶ 大西信満 島根県民会館にて

この映画はあまり食指が動かなかったけれど、気にかかるので見てしまった。寺島しのぶはベルリン映画祭で主演女優賞を受けている。

物語:戦争で四肢を失った少尉が故郷に帰ってくる。かれは軍神と讃えられ、三つの勲章も与えられ、美しく貞淑な妻は甲斐甲斐しく彼を世話する。

「キャタピラー」はもと「毛虫、芋虫」と言う意味である。それが米国のHolt Manufactuaring社の1904年製品(無限軌道利用トラクター)の商標となり、1925年にCaterpiller Inc.という会社名になる。(第一次大戦末期には、戦車にも利用される)

江戸川乱歩に「芋虫」という小説があることは知っていたが、初めから読む気がしなかった。この際だからと調べて見たら、筋が非常に良く似ており、映画の原作と言ってもいい位だが、どうしてか映画の紹介ではこのことに触れてない。

若松孝二監督はピンク映画の経歴が長いが「実録連合赤軍ーあさま山荘への道程」を作ってもいる。それと乱歩の怪奇趣味が一緒になって、これは不思議な色合の映画になっている。

米国の1971制作「ジョニーは戦場に行った」と主人公の身体状態が似ているが、そちらでは米当局は、反戦、厭戦の気分が広がることを怖れて、死ぬまで彼を人目に曝さず、その存在すら隠すことにする。「死なせてくれ、または皆に見せてくれ」と言う本人の希望は叶わない。だが、隠すと言うのは、まだ普通の感覚だろう。

勿論乱歩の創作だろうが、これが必ずしも絵空事ではないかも知れないと思わせるほど、日本人が「軍神」の美名のもとに、軍部も一般民衆も、いかに異常な精神状態にあったかをこの映画が表している。ただし、女性としては後半の妻の行動は納得が行かない。女性がそういう状態の男性にそんな気をおこすなんて考えられない。(「赤い天使」ではそれに似たこともあったが、合意の上だ)これこそ乱歩の想像の世界でしか起こりえない事であろう。

土曜午後の島根県民会館は満員に近い入りだ。でも2日目になる大地震が誰しも気懸りなのだろう、ロビーの義捐箱には、みな進んで応じていた。
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