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〔詩〕少年の日

野ゆき山ゆき海辺ゆき
真ひるの丘べ花を敷き
つぶら瞳の君ゆゑに
うれひは青し空よりも

影おほき林をたどり
夢ふかきみ瞳を恋ひ
あたたかき真昼の丘べ
花を敷き、あはれ若き日  
      
君が瞳はつぶらにて
君が心は知りがたし。
君をはなれて唯ひとり
月夜の海に石を投ぐ。

 佐藤春夫  初出「殉情詩集」1921刊
    新潮文庫「現代名詩選」(中)1980刊  

佐藤春夫〔1892-1964)のふるさと、
和歌山県の新宮は山と海の自然に恵まれている。
若い鹿のようにさまよう少年の憧れをうたう。
「つぶら瞳」は、南国では、ぱっちりとした黒目がちの
大きな瞳が美しいとされるのを思い出させる。
ここに春夫がプラトニックにあこがれるのは、

大林宣彦監督「野ゆき山ゆき海べゆき」(1986)は佐藤春夫の
自伝的小説「わんぱく時代」の映画化だったと、この度はじめて知る。
戦前の尾道を舞台に元気な少年達の活躍を描いているこの作品の
印象はなぜかうすかった。ヒロイン鷲尾いさ子も私の中の「つぶら瞳」の
イメージとは違っていたし。そもそも尾道と新宮は一緒になりはしない。
熊野の山地と太平洋に面した黒潮の打ち寄せる浜辺、この自然の大きさ
深さは、穏やかな瀬戸内海沿いの町では置き換えがきかないはず。

→【旅】新宮 7-12-17
コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
読み方は? (フリージア)
2007-03-21 19:24:33
おっ、模様替えですか? いろいろ選択の余地がある設定なんですね。 当方のブログは、キタキリ雀です。 うらやましいな。

ところで、「詩」はかならず音読する~と主張する方がおられますよね。 やはり音読して楽しんでおられます? それとも、フツウは黙読?
 
 
 
自覚なし (Bianca)
2007-03-21 22:02:49
フリージアさん、
気づいてくださいました?帽子屋で試着するように、いくつもいくつも試しました。一瞬にして変わるのが面白いですよ。このときばかりは、PCの威力に感心します。
音読か黙読か、あれ、どっちでしょうか。普段どうしているか、考えると分らなくなります。父が短歌を作る時は、言葉には出さず、「スーススーススー」と歯の間から息を漏らしていました。私も大人しい方なので、音を立てずに読んでいるような気がします。
この回答は、後日に譲りますわ。
 
 
 
佳人 (ハコベの花)
2010-07-07 22:36:42
昭和33年「佳人」という映画を観ました。映画の始めにこの詩が流れます。小児麻痺で足が動かない可憐な少女と少年の淡い恋、芦川いづみが可憐な少女を演じています。山陰の旧家、父親はこの少女と妻を一家の恥だと言って蔑みます。私はこの詩が好きでしたので忘れられない映画になっています。細かい事はすっかり忘れていますが、良い映画だったと思います。
伊藤信吉の『現代詩の鑑賞』中学時代から私の宝物になっています。詩は短くていいですね。年を取ると長い小説を読むのは困難になってきます。目ではなく身体が疲れます。情けないですね。
 
 
 
ハコベの花さま (Bianca)
2010-07-09 08:30:57
芦川いづみは、今70代でしょうか、最近の若い人には、忘れ去られているらしいですが、私の大好きな清純派。彼女に「佳人」という映画があったとは知りませんでした。本をいろいろ見ても、この作品のことは触れてない(ネット検索でありました)それにしても「乳母車」でも足の悪い役、「風船」では少し頭の弱い役と、外見がそうなさびしげで繊細のでこうなるのでしょうが、素顔は運動万能のお転婆だったようですよ。女優はそうでなくてはね。しかし、同じ詩集を持っていらしたとは、嬉しいです。
 
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