映画の感想など・・・基本的にネタばれです。
しづのをだまき
映画「人生、ブラボー!」
2011 カナダ 110分 原題 STARBUCK レンタルDVDで鑑賞
監督 ケン・スコット 出演 パトリック・ユアール アントワーヌ・ベルトラン
ほのぼのとした人生讃歌か、それともブラックジョークか?
原題の「スターバック」とは、主人公が20歳前後で、お金欲しさに693回精子を提供した時に使った仮名だが、もともとはカナダの優良種牛の名前であり、その遺伝子を持つ牛は20万頭という。
この行為の結果533人の子どもが生まれ、そのうち142人が、父親の身元開示を求めて訴訟を起こした。
日本では東大生とか医学生とかに限定したバンクもあるというが、彼は全然エリートではない。
彼は、ポーランド移民の肉屋の末息子で、現在42歳独身でいかがわしい生活ぶり。周りには子供嫌いの言葉が飛び交っている。4人の子持ちの友人は「子供というのは、お金と時間と精力を無限に吸い込むブラックホールだ」という。恋人は「子供を見ていると蹴飛ばしたくなる」という。「絶対に子供を作るな」という兄は出産まじかの奥さんにてこずっている。恋人に妊娠を告げられた瞬間、固まってしまった彼自身も、親になる気はない。しかし弁護士から渡された相手方のプロフィールの束をでたらめに一枚見たところ、ひいきチームのスター選手の顔が載っていた。試合を見に行くとその彼が見事シュートを決めてチームは勝利。これで興味がわいて来て、他人を装いながら子どもたちを次々と訪問する。その時彼の善良さや親切さが爆発する。だらしないけれど、もともと「よい人」なのだ。
「生命の本質とは、自分で自分のコピーを作ること、つまり自己複製を作ることなのだ。」と「利己的な遺伝子」の著者は言う。現実的な条件を考え、人は適当な数におさえるがもし自分に負担がかからなければ、自分の複製である子供はいくらでもほしいという気持ちが、人の奥底にはあるのではなかろうか。
まあ、500人とは言わず、数人でも、ひとりでも、子供というのは、親が自分では自覚しない要素、自分ひとりの人生では実現できない、思いもよらぬ可能性を、生きて動く人間の形で目の前に繰り広げてくれる。どう仕様もない男でも、血を分けた子供を見ているうちに勤勉・善良な面を出せる。
これら良い点を並べて早く父親になりたまえという、少子化省の宣伝みたいでもある。
精子バンクを利用するのは、心の底から子供がほしい人々だろうから、彼らが望まれて生まれてきたという事は間違いないし、大切に育てられたであろうことも推測がつく。
子どもたちの外見能力は、俳優だから当然だが、まずまず良い線を行き、性格は、これは父親譲りで相当に良い。さすがに学者はいなかった。それに女の子の知能水準が低く、モンロータイプの肉体派と麻薬中毒の店員しかいない。(父親がポルノ雑誌を見ながら行った結果だろうか)
冒頭の「自己刺激による射精」のシーンはグロテスクでもあり滑稽でもあるが、人間が妊娠するのは多かれ少なかれ、ここが出発点なのでは?妊娠は愛とは関係ない。そのように偶然始まる人生に、そうたいした意味はないという事であろう。「人生ブラボー」という邦題は能天気な主人公にはあてはまるだろうが、はたして適訳だろうか。
牡牛と珈琲は関係ないが
→「スタバ風景」10-5-23
上のポスターにある上映館が
→「銀座」 10-6-2
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